Chapter9 〜流転〜
一番隊隊主室。
「思ったよりも早かったの。修行は、終えた様じゃな」
元柳斎は、霊圧も雰囲気もがらりと変わった隊長達を見回して頷いた。
「さてと。バウントに侵入を許した事は知っておろう。朽木隊長。前に頼んだ文献はあったかの?」
「すまぬ。忘…「在ったよ?」
ぽふっと白哉の手に、文献が手渡される。
渡したのは少しの間姿を消していた玲だった。
その書物は間違いなく朽木家の文献で。
勝手に書庫に入ったのかと思ったが、一先ず咎めはしなかった。
無言で総隊長にそれを渡すと、目を通した彼がうむと頷く。
「成る程の。バウントは、技術開発局ができる更に昔、今では禁忌とされている実験が失敗し、輪廻に影響を与えた事で産まれた異端の者。
現世に悪影響を及ぼす可能性がある故、過去殲滅戦を行った。今回のバウント達はその際の生き残りと言ったところじゃの」
さらりと説明を終えた総隊長の言葉に、隊長達が苦い顔をする。
「なら、バウント達の目的は復讐って事か」
冬獅郎が呟くと総隊長は目を閉じる。
「目的は分からんが、奴等はドールと呼ばれる力を操るとの報告が入って居る。気を引き締めて討伐に当たれ」
「おや、殲滅戦かい?」
「無論。異分子を放っては置けぬ」
そこで各隊長達が玲を見遣る。
既に殆どの情報を持っているであろう彼女に。
「私は今回何もしないよ?」
ふわりと笑みを浮かべる少女に、この件は彼女の目的とは関係ないのだと悟る。
「まぁ良い。各隊、流魂街の捜索に当たれ」
元柳斎が指示を出した時、
「失礼します!流魂街第四十八地区にて、朽木ルキアとバウントが戦闘中との情報が…」
伝達係の死神がの言葉で白哉の目付きが鋭くなる。
あっという間に瞬歩で消えた彼を見て、浮竹も慌てて部下に指示を出すため隊主室を飛び出した。
「…玲は?」
「朽木隊長に付いて行ったよ?」
「…何もしねぇんじゃ無かったのかよ」
隊主室には、冬獅郎の呆れ混じりの溜息と、京楽の呑気な笑い声が残った。
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