Chapter3 〜特別〜

一番隊隊主室。
そこで私は両側に並ぶ隊長達の間に挟まれて山本元柳斎と向き合っていた。
大丈夫。
もう不安は無い。
迷いも晴れた。
後は、どう交渉するか。
それだけ。
「此度虚の出現の折、十番隊隊長と共に現場におったと聞き及んだ。大方其方の入れ知恵じゃろう?どのように察知した?」
まずそこからか、と私は息を吐いて、総隊長を見つめる。
「私が調停者だと言うことはご存知のはずですよね?」
「それは知っておる」
重々しく頷く元柳斎に、私は言葉を続けた。
「私は魂魄ではありません。世界が型作った、意志のカケラ。世界の異変は、その一部である私にも伝わります」
「成る程の。それで空間の歪みを、出現前に探知できるという訳か」
頷いて肯定を示す私に、総隊長は目を細める。
「抑制装置は付けておらぬようじゃの」
やっぱり、気付かれるよね。
しょうがない、素直になろう。
「…付けた途端、砕けてしまいました」
「ほう?其方抑えておる霊圧は八割と言っておったはずじゃが?」
実際はそんな数値じゃない。
九割九分九厘抑えてる。
けど流石にそれは口に出来る筈もなく。
「…自分でも良く把握出来ていませんから」
そんな言い訳をするしかなかった。
総隊長はしばらく黙っていたけれど、まぁ良いと呟いた。
「今の所、抑えている霊圧が暴走する様子も無さそうじゃ。が…日番谷隊長と朽木隊長の霊圧の質が変わっている事については説明して貰おうかの」
成る程ね、と私は苦笑した。
霊圧の大きさは抑制装置で抑えたけれど、上がりきって変化した質まではこの人には誤魔化せなかったみたいだ。
「知って、どうするの?」
少し威圧的に目を細めると、総隊長は閉じていた目をゆるりと開いた。
鋭い瞳と視線がぶつかって、それでも怯まずに見返すと。
「成る程の」
再び目を閉じた元柳斎が何か納得したように呟いた。
首を傾げると、お爺ちゃんの顔から厳しさが消え、ふっと口元に笑みが浮かぶ。
「いや何、規律や立場を重んじる筈の朽木や、砕蜂、冷静で客観的な立場を守るはずの日番谷等の心を開かせたものが何なのか少し気になっての」
総隊長の言葉に数日の記憶を思い返す。
冬獅郎は半ば脅し。
白哉は挑発。
砕蜂に至っては何をした記憶もない。
あれ、私凄く悪い子だ。
けれど元柳斎が言いたかったのはそういう事ではないらしく。
「其方の瞳。そんなにも濁りの無い澄んだ目を見るのは儂も久しい。疑えぬわけじゃの」
一つ納得するように頷いた総隊長の纏う空気が柔らかくなった。
確かに私に謀る気なんて欠片もない。
けれど。
「…それで良いの?総隊長さんなのに」
嘘だってついてる。
潔白なわけじゃない。
それでも、元柳斎は優しく笑う。
「目は口ほどに物を言うとはよく言ったものよの。疑心を抱くこちらの方が、悪であるかと錯覚させる。其方の瞳の意志の強さ故にの」
意志。
それは私の存在意義で。
世界の一部でありながら、世界のカケラとして生まれ出でたきっかけであり、総て。
その力は、世界だけでなく、人をも魅了する何かなのか。
少しの思考の後、私はゆるりと目を開く。
彼は私を認めたのだろう。
疑う事を、やめたのだろう。
なら、話すべき事は話さなきゃならない。
「…わかりました。お話しします」
言葉を正して、真っ直ぐに総隊長を見据えて。
後ろに、九つの隊長達の気配を感じながら。
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