Chapter5 〜遊戯〜





「隊長〜。幾ら何でもこんなのでおびき出せるんですか?」


乱菊は外に設置された机と椅子と、その上に置かれた羊羹やお茶を眺め、不満を孕んだ声をあげた。


「良いんだよ、来なくても。ピクニックだとでも思ってろ」


「あら、珍しい。隊長、サボりですか?」


「お前と一緒にするなよ。表向きは罠だが…まぁ、流石に俺もこんなのに掛かるほどあいつが馬鹿だと思っちゃいない」


完全に寛ぎモードでお茶を啜る冬獅郎と、


「うん、そうだよねぇ」


ぱくりと羊羹を口に運ぶ…玲。

一瞬ぴしっと固まった冬獅郎だったが、


「…発」


すっと指を玲に向けて一言放つ。

途端、発動直前で待機していた六杖光牢と鎖条鎖縛が玲に襲いかかった。


「ん、甘い」


二つの六十番代の縛道を羊羹を死守しながら避け切った玲に冬獅郎は溜息を吐いた。


「あ、乱菊。お茶も頂戴?」


一応距離は取っているものの、どう考えても敵として認知されていないその台詞に、二人の隊長格が肩を落とす。


「あんた、良いの?それで」


呆れながらもお茶を淹れる乱菊は、やはり玲に甘い。


「大丈夫だよ。私本体じゃ無いもん」


さらりと爆弾を投下した彼女は、しかしどこからどう見ても玲にしか見えず。


「食っても良いが、情報寄越せ」


大きな溜息を吐いた冬獅郎に、自称偽物の玲はあっさりと口を割った。

時折羊羹を口にして幸せそうに笑いながら。


「…成る程な。肉体は創造物だが、記憶も能力も霊力も思考も同じ、か」


「見分けつく筈ありませんねぇ…」


「外見でも内面でも判断出来ねぇなら、片っ端から捕まえるしかねぇって事か」


こくりとお茶を飲んで一息吐く玲を眺めていると溜息しか出て来ない。

偽物である筈の玲が、全く警戒しない処を見ると、確かに記憶も同一なのだろう。

あっさり喋ったことには驚いたが、どうやっても見分けが付かないのなら、話してしまっても支障は無い。


「え、隊長、この子捕まえるんですか?!私無理ですよ、罪悪感で死んじゃいます!」


刀を向ける事を拒否した彼女に、冬獅郎は溜息を吐くが


「ふぁ、乱菊〜!大好きっ」


涙目で乱菊に飛び付いた玲に、更にがくりと肩を落とす。


「松本、そのまま離すなよ」


「あ、やっちゃった。ごめん、本体」


そのままあっさり捕まった偽物玲。

その後乱菊に好きなだけ抱き締められてから、粒子に戻った。


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