それから、昔の太宰さんと色んな所を回った。彼は、始終繋いだ手は離さなかった。まあ、治さんと云うようにと言われたが。
「楽しかったかい?敦くん」
僕は、頷くと太宰さんは嬉しそうに微笑んだ。今頃、僕の時代の太宰さんはどうなっているだろうか。そう思ってしまう。
「私が目の前に居るのに他の誰かのこと考えているのかい?」
そう言われ、次の瞬間僕は手摺へと押し付けられた。僕は困惑した儘太宰さんを見上げる形となった。
「私と初めてあった時も、君は他の誰かのことを思っていただろう?そんなに私が視界に入らないかい?」
腕が痛い。僕は、流石太宰さんだと思いながら痛む腕に顔を歪めた。
「やめ、て下さい…」
目尻に、涙が浮かぶ。次の瞬間、太宰さんの顔が目の前にあった。唇を奪われたのだ。
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