シエルの生まれは地球で、育ったのは宇宙だ。
どういう経緯かは不明だが、赤子といってもよいくらいの頃に両親を無くし、紆余曲折を経て物心つく頃には博士と呼ばれる一人の壮年の男と暮らしていた。
博士、と呼ばれる男はシエルを親代わりとして育てる反面、ナイフや銃器の取り扱い、バイクや車、ヘリコプターからはてはモビルスーツの操縦技術、情報機器の操作、諜報技術など、優秀な工作員として、感情を持たない戦闘マシンとしても彼女を育てた。否、作り上げたといってもいい。
そして、彼女は6機めのガンダムとして地球に降下した。他の5機と同じように流星に偽装して。
その任務の名は『オペレーション・メテオ』。
全ての宇宙コロニーを軍事制圧し、武力でもって支配する地球圏統一連合への反抗作戦。
彼女を育てた博士には、彼女が思いのほか優秀であったため、この作戦の要でもある任務を与えたのと他に、別の思惑があった。
地球生まれの少女が、我々宇宙コロニーに住む人々のために地球圏統一連合やOZと戦うなど、痛快ではないか。これ以上の皮肉はない。
アフターコロニー――A.C.195年に、オペレーション・メテオは発動した。
6機のガンダムとそのパイロット達は地上に降り立ち、地球圏統一連合の中にその存在を隠す特務機関OZ、この組織が傘下に置く施設を集中的に破壊し、ガンダムの威力を彼らに見せ付けた。その後、戦火は拡大し、やがて一つの結末を迎えた。終戦という結末を。
しかし、真の平和とは難しいものなのだ。
バートン財団による真のオペレーション・メテオ発動の画策、再びのガンダムの始動。そして、パイロット同士の戦い。
ガンダムパイロット達は己が進む道を見つけ、平和への実現に助力した。シエルもまた、そんな一人である。
同年代のガンダムパイロットとの出会いや、完全平和主義を唱えた唯一の国サンクキングダムの意志を継ぐ人々との出会い、敵対組織の要人との戦場での語らい、身を潜めるため街で出会った戦場とは無縁の人々。それらの出会いがシエルに心を与えた。人並みの感情を。彼女は機械から人間になることができたのだ。
真のオペレーション・メテオ――宇宙コロニーを質量兵器として地球に落下させるという作戦を未然に防いだ後、シエルは平和維持機関『プリベンター』の一員として、世界の平和のために助力していた。彼女の相棒であるガンダムは、他のパイロットと同じように破壊して。もう、これからの世界には必要ないのだ。