マルバが連れて来た少女――それが三日月達が、まず初めに彼女に抱いた認識だ。
どうやら出かけた先で戦闘に巻き込まれ、その際にMWにて活躍したらしい。聞けば阿頼耶識は埋め込まれていないとのこと。
金を貰えればどこでも良いそうで、これ幸いにと早速スカウトして今に至る、らしい。
三日月と競わせて見れば、彼と同等以上の動きを見せた。
少女は一軍に配属されたが、勤務時間以外は(勤務中でも自由が利けば)一人でいるか、もしくは年の近い参番組といることが多かった。
そのため、参番組は一軍をクソな大人の集まりだと思っていたが、少女に対しては違った。基地に唯一いる異性に興味があったことも一因だ。
彼女もまた、彼らに親しみを感じていた。その筆頭は三日月だ。
「…三日月を見ていると、誰かを思い出せそうな気がする」
天井の配管を利用してトレーニングを行う三日月を見ながら、シエルは言った。
「あぁ、記憶喪失だっけ。俺はなったことがないから、どんな感じかは分からないけど」
「いや、私みたいに記憶喪失になるほうが稀だから」
くすくすと、微かな笑い声が三日月の耳に届く。
「…うん。でも、三日月の傍は落ち着く。なんでだろう?」
「さあ?俺に聞かれても」
「だよね」
分かってた!と、両頬に手をついたまま、シエルはにこにこと答えた。
マルバに連れられてきたばかりの頃は始終無表情で、三日月以上に感情が読めないと忌避されていたが、今ではだいぶ表情が豊かになった。
もともと、今の状態が彼女の本来の姿なのだろう。三日月達が信頼された証でもある。もちろん彼らにとっても。
幼年組がハエダなど大人達に理不尽に暴力を振るわれそうになった時、さり気なく庇うこともある。そうして信頼関係を築いていった。お互いに。
それに加え、三日月並みにMWの操縦が上手い彼女は、幼年組や年少組にとっては憧れの存在だ。
「俺もあんたの髪、好きだよ。オルガと同じ色」
ああでも、オルガよりあんたの方が白っぽいよね。
三日月はシエルの白に近い銀の、背中まである髪を見ていった。
「好きなのは髪だけ?もう、デリカシーないなぁ」
「知らないよそんなの。知ってたからって腹膨れないし」
「間違いない」
シエルは今度こそ声を立てて笑った。