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静かな夜の闇に響く声が聞こえた。

悲しくも力強いそれに惹かれるがままに歩き、そこにいたのはまだ産まれて一年もたっていないだろう赤ん坊だった。
道に転がりベビー服に身を包んだだけのその子を抱き上げ、揺すってあやしてあげれば泣き声が少し小さくなった。

周りを見渡すもこの子を心配する親のような姿はなく、ただ声に引き寄せられただけの物見の人しかいなかった。

「君も、捨てられちゃったの?」

幼いときに両親に捨てられ一人で生きている私。
周囲を囲むだけで誰にも助けられないこの子。

私が守らなきゃ。
そう思った。

「今日から私があなたの家族だよ」

よろしくね、と言えば答えるようにふにゃりと笑ってくれた。

来た道を戻る私たちを見こそはすれど追ってくる人は誰もいなかった。