ここ最近、クロウに構って貰ってない。
長期の依頼がクロウに入った。割りのいい仕事だったそうだが、やはりそんなに上手くいく話はない。意気揚々としてた癖に、二日目には騙されたと嘆いていたそうだ。だから、俺もクロウに会うのは凄く久しぶりで、心なしかうきうきと数時間前に戻ってきた隣の部屋の主のもとへ向かった。
ガチャッと音を立ててクロウの部屋のドアを開ける。久しぶりに見る部屋着姿に思わずにこにこしてしまった。
初めて身体を繋げた日からだいたい二、三日に一度は必ず襲われていたのに、この一週間は当然だが何もなし。
だからどうも俺は、欲求不満になっていたようだ。どうせクロウは今日手を出してくるに違いないから、俺は大人しく待っておくつもりだった。
「クロウ、お疲れさま」
「おう、ただいま」
いつものようにラフな部屋着姿で抱き付いた。クロウは嬉しそうに俺を抱きとめて膝の上に座らせる。優しく髪を梳かれて目を細めた。すぐにキスが降って来る。額から瞼、鼻、上唇を啄んでクロウの唇が俺のそれに重ねられた。
ちゅ、と軽く吸い付くようなキスを何度もされる。聞こえて来る導力ラジオがこの甘い雰囲気にはそぐわない。そんなことをぼんやり考えながらキスを受けていたら、顔が離された。
「久しぶりなのに何考えてんだよ」
「何も考えてないけど」
「ホントか〜?」
「ホントだって、……ひゃっ、くすぐったい!」
クロウは俺の脇腹に手を差し入れてくすぐり始めた。俺は笑い転げてクロウに抱き付く。いつもならこのまま事になだれ込む筈だ。
でも、今日はそんなことは無かった。クロウは俺の身体を抱き上げて、ひょいとベッドの下の大きなクッションの上に座らせた。
「……クロウ?」
「明日久々にデートに行く約束してただろ?リィンはどこ行きたいんだ?」
「あ、んー……取りあえず紅茶が無くなるから買っておきたいかな。それに、そろそろ暑くなるし夏服も買いたいかな」
「俺も俺も」
クロウもベッドから降りて俺と同じクッションに座った。後ろから覆い被さるようにして俺の肩越しに先ほどまでクロウがベッドで寝転びながら読んでいた雑誌を一緒に覗く。
「これこれ、俺こーゆージーパン欲しいんだけどよ」
「クロウがこんなズボンなんて穿いたら不良みたいだから嫌だ」
「じゃあこっちは?」
クロウは普通通りに会話をしてくる。俺も何も考えていないのを装って普通に返した。クロウが何も変なこと考えて無いのに、俺だけいやらしいことを考えてるなんて恥ずかしい。
でもクロウ、俺と……その、したくはないのだろうか。一週間もずっと触って無いのに、欲求不満じゃないのだろうか。
考えないように、すればするほど考えてしまう。
クロウから香ってくるボディソープの匂い、腹に回された腕の感触、背中にぴったりとくっついている身体、体温。床の上の雑誌をめくる指。いつもはこの指が、俺をおかしくしてしまうのだ。ごつごつした骨張った指が俺の身体を這うと、電気が痺れたようになって勝手に唇から甘い声が漏れてくる。自分でも見たことないような場所を探られて、暴かれて、侵されてしまえば頭は真っ白になって俺はベッドで身体を悶えさせる以外に無くなってしまうのだ。
「……リィン、どうした?」
ぼんやりとあのことを思い出していると不意に後ろから声がした。
「あ、えっと、何でもないさ」
「さっきからお前ボーッとしてるぞ?」
「そんなこと無いって」
「なんかあったか?」
クロウは誤魔化されてくれない。顔に熱が集まるのを感じた。
俺は今、完璧にクロウに欲情してる。どうしようもなく、どうしよう。
「く、クロウっ」
「わ、どうした急に」
自分の腹に回る腕をぎゅうっと握り締めた。
「クロウ……俺、なんか変だ……」
「変?お前体調悪いのか?そんな風には見えねぇけど」
「違う、違う……」
クロウは全然分かってくれない。嘘だ、絶対に分かってる。俯いた顔はきっと赤くなってしまっているから、俺は顔が上げられない。
「リィン、どうしたんだよ。ちゃんと言わなきゃわかんねぇだろ?」
「……なんで」
「ん?」
「……なんで……してこないんだ」
蚊の鳴くような声で訴えた。クロウの腕の中でくるっと体勢を変えて胸に顔を押しつける。シャツ越しにクロウの匂いがして、俺は益々切羽詰まってしまった。
「クロウの馬鹿……。久しぶりにこんなふうに会うのに」
顔を見られないようにクロウの首筋に抱き付いて膝の上に乗る。クロウは俺の積極的な行動に驚いているのか、何も抵抗しないでされるがままだ。
「この一週間浮気とかしてないよな。俺がこんないっぱいいっぱいなのに、なんでクロウは余裕なんだよ」
我慢出来なくなってしまって、俺は腰をクロウに押しつけるようにゆっくり動かした。布越しに擦れる感覚が気持ち良い。
一度快感を見つけ出すともう止まらなくなって、クロウのことなんて忘れて夢中で腰を押し付けた。
「あ……ぁん、ぁ……」
下から上へ擦り合わせるようにすると、俺のもクロウのも段々大きくなってくる。いつもみたいに胸を弄って欲しいけどそんなお願いなんて出来るわけも無い。クロウに頼む代わりに、自分の胸をクロウの身体に擦り合わせた。
「あ、ぁ、……んっ、」
薄い部屋着の布越しに乳首が弄られる。小さな乳首は摩擦する感覚に素直に大きくなって、胸を押し付けて上下に揺れるたびに粒が転がる。気持ちいいのにどこか足りなくて俺は首を振った。
「リィン、」
不意に俺の上からクロウの声が聞こえて、顔を上げる。
「リィンお前すげぇエロい顔してんの分かってんのか?」
言われた言葉に耳が一気に熱くなった。クロウの身体で、俺は一人で乱れていたのだ。
「あ、だって……クロウが、俺に」
「うん」
「触ってくれないから、……」
「悪い悪い。俺に触って欲しかったんだな?」
「……ん」
恥ずかしくて俯いたままコクリと首を縦に振った。
「俺に触られるの待ってたのか?」
「……、」
「やらしいとこ触って欲しかったんだろ」
何も言えなくなってしまう。クロウの顔は見れないけれど、声が笑っているのが分かる。今更ながらに湧き上がってきた羞恥心に涙が滲んで来た。
「リィン、触って欲しいならちゃんとおねだりしろよ」
「……え?」
「リィンが何して欲しいのか、ちゃんと俺に言えるよな」
意地悪。そんな気持ちを込めてクロウを睨んでも、ヤツは俺の顔を見ながらにやにやしているだけだった。さっきまで自分で煽っていた身体は未だにうずうずしている。クロウに触ってもらうまで、溶けそうなほどの火照りは消えそうに無かった。
「……クロウ、触って……」
「どこを」
「ッ、…………胸……」
「胸?」
「……ち、乳首」
恥を忍んでやっとのことでお願いをする。クロウの手が俺の部屋着に掛かって、上に捲り上げた。
「リィン、乳首もう真っ赤だ。ツンツンに張っちゃってエロいな、お前」
「も、見るなよ……」
「いっぱい舐めてやるからちょっと持っとけ」
わざわざ実況するようなことを言われておれは頭がくらくらしてしまった。部屋着の裾を持たされる。素直に従うとクロウの顔が俺の胸に埋められた。
「ひっ、ぁっ、あ……、」
すぐに俺を襲って来たのは、快感の波だった。クロウの肉厚な舌は胸の突起を避けるように、薄く色づいた乳輪の部分だけを円を描くように舐めていた。
「あ、やだっ、クロウっ」
クロウは答えずに俺の胸に顔をはりつけてぴちゃぴちゃと卑猥な音を立てている。俺は決定的な快感が欲しくてもっと、とせがむように必死で背中を反らせた。胸を押し付けるようにするとクロウはチラッと俺の顔を見てからむしゃぶりつくように突起を口に含んだ。
「ひゃぁ、……んぅ、」
俺はクロウに体重を掛けられてクッションの上に倒れこんだ。ちゅうちゅうと赤ん坊が母親の乳を吸うように突起を吸い上げられて必死で首を振る。眉を寄せ目をぎゅっと瞑ってクロウがくれる快感に溺れた。
「あ、……ぁっ、」
乳首だけを嬲られて貪られて堪らない。早く、下も触って欲しいのに。
「クロウ、あっ、も、胸は…いいからっ、」
「……次はどこ触って欲しい?」
信じられない。コイツは俺に何を言わせようというのか。怒りというよりは驚きと羞恥で顔が赤く染まる。
言えない、と伝えるように首を横に振った。クロウは俺のことを笑ってみている。
大きな骨ばった手のひらが俺の肌をゆっくり這った。
無意識に、腰がくねる。我慢できなくなってしまって、俺は小さく口を開いた。
「……クロウ、下も、お願い」
「下ってどこ?」
「も……う、クロウっ」
部屋着のズボンを押し上げる下半身を懸命にクロウに擦りつけた。身体を揺すって快感を得ようとする。それすらも刺激になって俺の身体はどんどん追い詰められていく。
「下じゃわかんねぇし。下ってどこだよ」
「……あ、もう、……触って」
小さくなってしまったが、クロウにはしっかり聞こえたようだ。くすりと笑う気配がして俺はさらに居たたまれなくなる。
クロウは俺の顎や首筋にキスをしながら部屋着の中に手を突っ込んだ。身体を竦める前に柔らかく握りこまれて小さく声を漏らす。
既に膨らみを見せていたそれはそれでもクロウの手には簡単に握ることが出来るようで、根元から先端に向かって親指と人差し指、中指で作った輪に扱くように上下されると、唇からは堰を切ったように喘ぎ声が流れ出ていった。
「あっ…あっ、……ん、あぁっ」
顎から徐々に降りていった唇は再び乳首にたどり着いて、細かく何度も上下に舐められる。俺はもう言葉を発することが出来ずに、無意味な声を途切れなく上げていた。
クロウの指は繊細に、それでいて大胆に俺の身体を追い詰める。先端の尿道口に人差し指の腹を当てられて、くにゅくにゅと小刻みにえぐるように揺らされる。先端から滲み出た先走りでそこは既にぬるぬるになっていて、その感触に俺は堪らず悲鳴を上げた。
「ふぅっ、……あ、…ゃ……だめっ」
「でも、めちゃめちゃ濡れてる……」
「ぁん、…いやっ、喋る…な」
クロウが乳首を咥えたまま言葉を発すると、ずっと舐められ続けて敏感に起ち上がった俺の乳首に歯が当たる。
僅かな痛みと、それを圧倒するほどの快感にビクンと腰が浮き上がった。
「あっ、あっ、………ぁあああ!」
一瞬のうちにせり上がってきた射精感を、堪える事も出来ずに俺はクロウの手の中に精液を弾けさせていた。
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