※一期、平和

 あったかいミルクティーの缶を、開けないまま鼻先にくっつける。寒い。コートにマフラーを巻いても寒い。あまり着込んでもこもこになっても、きっと事件捜査の時に厄介だ。これ以上の防寒方法が見当たらない。
 あぁ、いやになっちゃうなあ。冬は嫌いだ。寒いからとやたらあったかいものを買ってしまうし、身体がどんどん鈍るし、あったかければあったかいで眠くなる。人肌も恋しくなるし、やっぱり冬は嫌いだ。

「えっ、わ」
「甘いもんばっかだと太るぞ」
「狡噛さん、それセクハラですよ」

 後ろから、ほっぺたにあったかい缶を当てられてびくりとする。振り向けば狡噛さんで、缶はコーヒーが苦手な私に配慮してか緑茶だった。
 ふたつも飲み物があっても仕方ない。ミルクティーの缶は開けないままに残して、お茶の缶を開けた。狡噛さんは例の如くブラックコーヒーだ。

「いい歳してコーヒーが飲めないなんてな」
「頭使うから糖分が必要なの、苦いのは必要ないの」
「なまえは頭使わないだろ」
「使うし!」
「声震えてるぞ」

 狡噛さんの冷ややかな目にうぐっと口ごもる。確かにどちらかといえば体を動かす方専門ではあるが、ただそれだけの理由で執行官適性が出るはずもない。少なからず、捜査に必要な推理力というか、野生の勘はあったはずだ。あったと思いたい。

「少なくとも常守さんよりは大人だもん……」
「そりゃあ少し前まで学生だった人間と比べればな」

 うぐ、またも口ごもる。狡噛さんがやたらコーヒーを飲むだけで、やたらタバコを吸うだけであって、けして狡噛さんの好みが一般的なわけではない。私のように甘党な人だっているはずだ。

「人をそうやって子供扱いしちゃいけないんですよ!」
「……お前の好みだけで判断してるわけじゃないんだがな」

 狡噛さんは苦笑して、私の頭を撫でた。また子供扱いしてる! と手を振り払ったけど、その手があったかくて嬉しかったのは、まだないしょだ。

2014.12.06
2025.10.21 移動、加筆修正

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