「じゃあなまえ、俺たちも初詣行こ」

 新春、あけましておめでとうございます。
 年越しを終えて、深夜に眠り元旦の昼。大きな神社へ初詣に向かう大河くんと誓くんをお見送りしたあと、扉の閉まった玄関で春日くんが呟いた。

「え? 行くの?」
「ん。少しね」

 人混みは嫌だって言ってたのに。コートを羽織ってマフラーを巻いて、春日くんの手を取る。
 てっきり車でどこかに向かうのかと思ったら、春日くんはただ歩き出した。それも駅とは反対の方向に。あれ、どこに行くんだろう。週末や長期休みの時にしかハウスには来ないから、私の知らない神社でもあるんだろうか。

「人、いないね」
「みんなこたつの中なんでしょ」

 三が日はスーパーも閉まっていて、人通りが少ない。澄み切った冬の空気に私たちの吐息が混じる。
 なんだか神聖な気分だ。新たな始まり、混じりけのない晴天。世界で私たち二人きりみたいに。

「ここ。……猫、今日はいないな」

 春日くんが立ち止まった。住宅街の角、鬱蒼と木々の茂る広い敷地の、無人の鳥居と祠。
 社務所もないような、本当に小さな地域の神様。誰もいないのにどこも綺麗に整えられていて、祠にはお酒が置いてある。

「誰もいないね」
「人いるとこ見たことないかも。猫好きがいたりはするけど」

 まっすぐ続く石畳を踏む。鳥居をくぐって、鮮やかな椿の前を通った。りん、と小さく鈴の音が通り過ぎる。

「……今の、って」
「ん? なんかあった?」
「ううん、なんでもない」

 祠には鈴も鈴緒もない。ただそこに鎮座しているだけで。
 今年は、良い一年になる気がする。祠の前、二人で並んで、静かに手を合わせた。

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