ねた

▼2017/11/22:いい夫婦の日2

術ギルver
クオリティは相変わらずです


「何だか今日はいつも以上に甘えて来ますね、王様」
「いつもと何ら変わらぬであろう」
「(私を膝の上に座らせて、頭の上に顎を置いて脱力してるところのどこがいつもと変わらないんだろう……)」
「不服か?」
「ううん。素直に嬉しい」
お腹に回っていた腕の力が強くなるのを感じながら目を伏せる。

しかし今日に限ってやたらめったら甘えてくるのは何故だろう?
レイシフトの予定もないし、日頃懇意にしている王様と時間を共有出来るのは嬉しい限りなのだけれど。
そんな事を考えていると王様──ギルガメッシュの唇が耳元に寄せられる。
擽ったさに身じろぐ私の姿に彼の唇が吊り上がったのを何となく感じながら振り返ってルビー色の瞳を見つめる。

「先程すれ違った職員が今日はいい夫婦の日なのだと言っていたのを聞いてな」
「生前の奥方様たちが恋しく……嘘です。憶測で発言を遮り、申し訳ございませんでした。なので腕の力を弱めて下さい……」
「単刀直入に言う、我の物になれ」
「前からずっと私は王様の物じゃないですか」
何を今更と目で訴えかけると深い溜息を返しながら、哀れむような、阿呆かと言いたげな目を向けられてしまった。

「我の妃となれと言っているのだ」
「ムードも何もあったものじゃないですね」
「貴様はただ首を縦に振るだけでよい。返事は」
「私に選択肢はないんですね……王様が私をご所望とあらば喜んで」
壊れ物を扱う様に、それこそ振り払えてしまうような力で私を抱きしめてくる王様に少しでも私の気持ちが伝わればいいなと願いながら整った横顔に唇を寄せる。

「莫迦者。そこではなかろう」
向き直った王様の瞳の奥に宿る優しさを感じながらどちらともなく口付けた。

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極夜