ねた

▼2017/11/22:いい夫婦の日3

子ギルver
クオリティ(以下略)


「ギル君、貴方は一体何をしようとしているのかな?」
「マスターがボク以外の男性に目移りしないように首輪……ごほん!印を残しておこうかと」
「今確かに首輪って不穏な言葉が聞こえたね!?」
愛らしい顔を崩し漏らした舌打ちもちゃんと聞こえているからね、と思いながら少年の行動を見守る。
少年の姿を形取っているとはいえ彼もまた王だ。その権威を振りかざし、無理矢理にでも彼の手の内にある首輪を嵌めようとしてくるのであればこちらにもそれなりの対応をしなければならない。
右手の令呪を左手で撫で上げていると初めて彼の表情に翳りが差した。

「貴女がボク以外に目移りするはずがないと分かっている、はずなのに時折どうしようもなく不安になるんです」
「私の特別はギル君だけだよ?」
「ココには男性の英霊が数多く存在しているでしょう?貴女の心だけでなく身体まで奪われてしまうんじゃないか……考えるだけで吐き気がします」
麗しい顔を顰め、唇を噛む小さな王の柔らかな髪を撫でようとした右手が行き場を失って宙を漂う。

「大人のボクならこんな焦燥感を抱くこともないんでしょうね」
「不安になるのはそんなに悪い事?」
「だってみっともないじゃないですか」
「……それじゃあギル君が不安にならないよう今日、この日に誓いを立てようか」
綺麗な目をまぁるく見開いたギル君から赤い首輪を取り上げながら目線を合わせて柔和な微笑を浮かべる。

「流石にこれは着けられないけど、ギル君の物だって分かるアクセサリーなら喜んで受け取るよ」
「……いいんですか?」
「それでギル君の不安が拭えるのなら」
ぱあぁと途端に顔を明るくさせて私に飛びついてくるギル君の髪に手を乗せる。
肩越しの彼の顔が悪鬼も逃げ出してしまうような、それはそれは恐ろしいものであると知らない私の心は少年への愛おしさで満ちていた。

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極夜