ねた

▼2017/12/15:大切なトモダチ

少々捏造あり
7章バレほんのりあります


聖杯を手中に収め、カルデアに帰投してしまえばそこで生活している人間達から私達の記憶は綺麗さっぱり失われてしまう。
仮にその人物をカルデア内のシステムによって召喚し、契約を結べたとしてもその人の記憶の中に"私"は存在していないのだ。


「突然強い力に引き寄せられたと思ったら……貴女は本当に厄介事に巻き込まれやすい体質なのね」
「エレシュキガル……!!」
高く結い上げた金の髪を靡かせ紅玉色の瞳を有する女性──冥界の女主人エレシュキガルは私が名前を呼ぶと目尻を下げた。
そんなエレシュキガルの仕草と声が懐かしくて堪らず、他にも何か言葉を紡ごうとしているのを遮って赤紫色の上着ごと抱きしめた。

「な、ななな……っ!」
「バビロニアで助けてもらったお礼を言えなかったのが辛くて、心苦しくて……あの時私を友達だと呼んで力を貸してくれてありがとう」
あまりにも強大な敵を前に何度も敗北と死を覚悟した。
必死の思いで捻り出した上策は瞬く間に飲み込まれ逃れようのない絶望を、私はあの世界で何度も経験した。
そんな暗闇の中でもがき続ける私に彼女エレシュキガルは全身全霊の、自ら命を削るほどの援護をしてくれた。

貴女ともだちを助けるのに理由なんて要らないのだわ。だけど、その……貴女のその気持ちは受け取っておくわ」
頬をほんのちょっぴり赤らめ視線を外し気味に。囁くような声と共に背中に回された腕の温もりに目の奥が熱くなるのを感じながらそっと目を伏せた。

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極夜