ねた

▼2018/01/06:抱きしめる

抱きしめる と月見酒を題材に書いていたはずなのですが、オチを失念して完成する未来が見えないので供養にそっと掲載

名前表記があります


「黄金色に輝く月を肴に酒を飲み交わすのも悪くなかろう」
「いきなりやって来て何かと思えば……まあそれ位ならいいかな」
突然人の部屋に足を踏み入れて何をするつもりだと身構えていた名前の肩から力が抜けた。
宝物庫から絢爛豪華な椅子を取り出しどっかりと腰掛けた王──ギルガメッシュは共に取り出した黄金の杯にワインを注ぐと一人月見酒を始める。

「杯が空になったぞ、早く酌をせぬか」
「はあ……分かりましたっと」
「素直な女は嫌いではない。名前にはこれをやろう」
再び宝物庫に手を突っ込んだギルガメッシュの手に握られた紙パックとグラス。
グラスに並々と注がれていく琥珀色の液体に目を輝かせる名前を鼻で笑ったギルガメッシュの表情はいつになく柔らかい。

「りんごジュースが好きだって覚えてくれたんだね、ありがとう!!」
早速喉を鳴らしりんごジュースを飲み始める名前の極上の笑顔に目を細めたギルガメッシュもまた杯の中の液体を飲み干す。
黙して名前の姿を見守るギルガメッシュに僅かばかり疑問を抱いた名前はグラスをテーブルの上に置いて深い紅玉の瞳を覗き込んだ。

「不思議な顔をしてるけど何かあった?私でいいなら話聞くよ」
「貴様に心配される日が来ようとはな……明日は槍の雨が降るか」
「長い付き合いをしてるけどギルのそういうところ良くないと思うな。人の好意は素直に……わ、っ!」
少女の腕を引き、刹那にその身体を自身の腕に閉じ込める。
胸板に鼻先を強くぶつけた名前は痛みに涙を潤ませながらギルガメッシュを見上げる。

「私を抱き込むのは構わないけどせめて一言欲しかったなぁ……ギルの気が落ち着いたならそれでいいけど」

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極夜