ねた

▼2018/04/05:何十枚も上手

上げたその日が(以下略)という訳でエイプリルフールねた
騙し合いの駆け引きが出来ず唇を噛み締めるマスターとそんな彼女が可愛くて仕方がない英雄王


四月一日。
気持ち新たに何かにチャレンジするに相応しい日でありながら巷では"エイプリルフール"とも呼ばれている本日。
ぱらぱらとさも興味無さげに分厚い本の頁を捲っている金色の王様を横目に映しながら、少女は心の中で一人葛藤していた。

彼女も花の十代、叶うのであれば四月一日のイベント──もといエイプリルフールに便乗したいお年頃である。
(先程、同じマスターである藤丸立香が親しい英霊から嘘をつかれて飛び上がっていたのを見た……というところも大きい)
嘘をつくのであれば必然的に目の前の眉目秀麗な男性になるのだが……。

「(ギルが私のつく嘘に引っかかってる姿をまず想像出来ないんだよね……)」
片や人類最古の英雄。そしてどこにでも居る年相応の知識を有する少女。
勝敗など挑む前から分かりきってしまっている。
ましてやこのギルガメッシュという英霊は些か気難しい。……古代王と称される英霊達は皆気難しい性質かもしれないともう一人の王の姿を浮かべる。
自身の何気のない発言が黒ひげ危機一発になり、彼に瞬殺される────有り得なくもない未来に彼女は両腕を摩った。

危ない橋は渡らぬが得策。
嘘をついても寛大そうな英霊とエイプリルフールを満喫すべきではないだろうか。
少女の思考がそこに行き着くときっかりのタイミングで今まで沈黙を守っていたギルガメッシュが口を開く。

「置いていた洋菓子は我の胃に収めておいた」
「は?!え……嘘っ!!」
目を皿にしてソファー(ギルガメッシュ王の私物の一つ)から飛び降りた彼女は備え付けの小さな冷蔵庫の取っ手を掴む。
レイシフトから帰還して時間が出来た時に食べようと大切に置いていた物だったのに……!なんて憤りながら開いたこぢんまりとした冷蔵庫の中には彼女が楽しみにしていた洋菓子が鎮座している。

「ちゃんとある……?」
「今日は何の日であったかな」
意味深な微笑を浮かべるギルガメッシュに唇をぎりぎりと噛みながら彼の真紅の瞳から視線を外し、ふわふわのソファー(彼の私物その二)に身を沈める。

「ギルなんて嫌い」
「分かった分かった」
「本当に大嫌いなんだから……」
喉を鳴らすギルガメッシュを完全に視野から除外してやると決めてソファーに身を委ねた少女の隣がぎしりと軋む。

「貴様のような凡俗な魔術師風情に対して好意など微塵も抱いておらぬわ」

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極夜