ねた

▼2019/03/17:春到来通告

GE2 ソーマSS(夢主:ブラッド隊長)
追記からどうぞ


「お前さん、気になる奴は居ないのか?」
最後のアラガミを沈黙させ一息ついていると、同行者のリンドウから肩を叩かれ話があると声を掛けられた。
他愛ない談笑をしていた最中いきなりこちらの顔を覗き込むようにしてそんな事を口走ったと思えば、顎に指を這わせ何度も頷いている。

「今はゴッドイーターとして、ブラッドの隊長として忙しい日々を送っているので、まだそういうことまで考える余裕がないですね」
「美人でゴッドイーターとして技量もあって性格も文句なし!引く手数多だと思うんだけどな。うちのソーマなんてどうだ?」
「ぶっ!」
リンドウから差し入れられていたジュースを危うく吹き出すところだった。
唇を袖口で拭いながら眦を決してリンドウを見つめると、まあまあと言いながら彼は何本目かのビールのプルタブに手を掛けるところだった。
(奥さんから雷が落ちなければ良いのだけれど)

「私なんかじゃ分不相応ですよ」
「何だかんだいってあいつもお前の事気に入ってるみたいだし、脈が全くないわけでもないだろ」
「初めて会った時に友人と似ていると仰っていたので、それで気にかけているだけなのでは……」
先日にキュウビの特殊なコアから作ったお守りを渡してくれたり「無理はするなよ」など度々声を掛けてくれはするがそこに男女の感情はない……はず。
返答を聞いてケラケラ笑っていたリンドウがおもむろに、少女の後ろに向かって手を挙げた。

「おお、ソーマ!丁度いい所に来たな」
「ん?リンドウ……とお前か。お前に話があってさっきから探していたから、そういう意味では俺も丁度良かったが……ぼーっとしてるが大丈夫か?」
「全く何も問題ございませんですよ!」
「フリーの隊長さんにソーマっていう優良物件があるぞーって話してたとこでな」
「リンドウさん!!」
分厚い本を小脇に挟んだソーマの、透明感のある水色の瞳がレンズ越しに向けられる。
リンドウの言葉に瞬きを数回繰り返した後、彼は予想外の爆弾を投下した。

「研究に没頭しすぎて私生活が疎かになってしまう事も少なくないからな。お前みたいに細かい所にまで気を配れる奴ならいつでも大歓迎……なんてな」
眼鏡を中指で押し上げたソーマは唇を吊り上げ、笑っている。
馬鹿馬鹿しいと笑って話を流すと決めつけていた彼女の顔が青年の一言でカッと色付いていく。
それを隠すように残っていたジュースを一気に嚥下したブラッドの隊長は二人に会釈をし、脱兎の勢いでその場から逃げていった。


「少しからかいすぎなんじゃないか?」
「暖かいご飯拵えて出迎えてくれる人が居るっていうのは良いぞ〜お前も満更でもないみたいだし、アタックするのも考えてみたらどうだ」
「そうだな……と、逃げたあいつを追わねぇと」
じゃあなと手をひらつかせ踵を返した青年を見送ってから、端末を取り出したリンドウは嬉しそうに電話口の相手に言葉を投げる。
漸くソーマにも春が到来したぞ、と。

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極夜