ねた

▼2019/08/20:チップの代償

マーリンの霊衣が嬉しくて勢いで書いてしまったSS
運営様々ありがとう…
(追記からどうぞ)


カジノの片隅で少女は白銀の青年に背を向け、項垂れていた。
彼女の勝利に全てのチップを賭けた青年……マーリンの期待に応えるどころか大敗を喫し一文無しになってしまったのだ。

「また次がある。一から始めたらいいじゃないか」
「マーリンさんの期待を裏切ってしまったのが、申し訳なくて……本当にごめんなさい」
視界がじわじわと涙で歪んでいく。
いつもの白衣を脱ぎ捨て、漆黒の服に紫紺のストールを纏っているマーリンは一見すると靡く銀髪が麗しい、美青年にしか見えないだろう。

──その実、マスターである少女をマイロードと呼び腹に一物以上の何かを秘めているグランドキャスター。
花の魔術師は逡巡するような"フリ"をして深紫の瞳を彷徨わせると少女の腕を引き、立ち上がらせた。

「僕は本当に気にしていないんだけれど……君がそこまで気になるのなら、部屋で一緒に反省会を開くとしよう」
マスターがこくりと頷いたのを見た男は、少女を抱えあげるとそのまま一室の扉の中に消えた。
その際見せたマーリンの妖艶な微笑を彼女が見るのは、数分後のこと。

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極夜