ねた

▼2019/09/23:約束、したもんな?

幼馴染み(AOT纏め夢主ぽいの)
27巻 脱獄するあたり
彼女だけには付いてきて欲しくて、色々手回ししてたエレンさん(19)


「(気まずい。この上なく気まずい……!!)」
彼と同期で幼馴染みなのにも関わらず逃走しないよう、見張り番に命じられたことを疑問に思いながらそこに入ってきたのが数刻前。
長くなった髪を無造作に束ね、射抜くような視線でこちらを見てくるエレンに久しぶりと言ってみたものの、彼は何も発さず沈黙を守り続けている。

巨人の正体、外の世界の存在、それと私達壁の中に住まう人類が置かれた立場……ここ数年の出来事で随分と寿命が持っていかれた気がする。
ふーと長い溜め息をついて扉に背中を向けた瞬間、ここにまで響き渡るような爆音に目を白黒させた。

「エレン大丈夫!?怪我は……」
上から視線を移し、彼に声を掛ける私と対照的にエレンは先と変わらず鷹揚自若な態度で、こちらを見下している。

「……お前は約束、覚えるか?」
喧騒を聞き、不安心が掻き立てられている私の事などお構いなく彼が初めて口にした言葉はそんな抽象的なものだった。
約束?と問い返すと殊更険しい顔になったので、彼の言う約束が何なのかこんな非常事態にも関わらず懸命に働かせる。

「…………私は、何があってもエレンの味方」
再度、轟音に見舞われる。
それは間違いなく目の前のエレンが引き起こしているもので、早く誰か呼ばなくてはと背中を向けた少女の細い首筋に鋭い手刀が見舞われる。

「お前なら覚えてくれてるって、信じてた」
だからこそ、今日まで様々な小細工をして彼女を見張り番にしたのだ。
上の騒動でかかり切りの今、誰ひとりとてこいつを気にかけている者は居ない。

謝罪の言葉を飲み込んだエレンはそっと少女の顔を覆っている髪を払いのけ、額に口付ける。
がらんとした空間を一瞥した青年は彼女を抱え、暗闇の奥に消えた。

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極夜