▼2020/03/28:手を伸ばしても、届かない
FE覚醒クロムと嫁と小さいルキナのSS
※至極当然のように捏造あり
追記から
「今日もルキナは剣の稽古に打ち込んでいるのね」
「おかあさまっ!」
勢いよく吹き飛ばされた木刀が回転しながら、父クロムの後ろに落ちる。
第三者の声を聞き、反射的にその人物の名を呼び駆け寄った幼き王女はすかさず母の元に飛び付いた。
「今日は体調が良いんだな」
「うん。ずっと部屋に籠っていたら気が滅入ってしまうし、この子も偶には外の空気を吸いたいだろうから」
ルキナが頬を寄せている母のお腹は大きくせり出ており、誰の目から見ても臨月が近いのは察するに易い。
あまり無理はするなよ。とやんわり制する聖王にクロムは心配性なのよと女性ははんなり笑う。
「これは毎日頑張っている可愛いルキナへの贈り物。気に入ってもらえると嬉しいのだけれど……」
太陽の光を反射する、金色のそれに父譲りの深い藍色の瞳がきらきらと輝く。
「ありがとうございます、おかあさま!にあって、ますか?」
「ええ。ルキナにとっても似合ってる。クロムもそう思うでしょう?」
「ああ。良かったな、ルキナ」
大きな手がルキナの艶やかな青髪を撫でる。
あまりに乱雑に撫でるので直後に彼女が咎めるのだが、まあまあと夫に上手く流された女性はふう、と形だけの溜息をつきながら夫と幼い我が子の姿を見守っていた。
* * *
暖かで、とても優しい夢を見た。
目を開いたルキナ──マルスは目尻に溜まっていた涙を拭うと、そっとティアラに触れる。
必ず戻ってくると約束した父は永遠に帰らず、夫の身を案じ後を追った母も消息を絶った。
広い城内に残された幼い王女は母恋しと泣き続ける小さな家族を宥め、二人の帰りを待ち続けた。
その後暫くして城に雪崩込んできた無数の屍兵により両親は忌まわしい邪竜を討てず、死んだのだと悲しむ暇すらなく唯一の肉親と愛する二人の意志を継いで、あの瞬間まで手に残されたファルシオンとティアラを手に膝を屈する事なく戦ってきた。
邪竜の咆哮に怯える弟を背に隠し禍々しい赤の瞳を懸命に見据えるルキナの膝が笑っていたのを、あれは気付いていたのだろう。
雲一つない清々しい青空の下で再び仮面をつけた少女は剣とティアラに触れ、静かに父と母を想う。
この世界の両親が幸せに、仲睦まじくしていますようにと願いながら。