▼2020/03/28:貴方の唇を奪う
こちらも診断メーカー様より王様とお花見するSS
追記よりどうぞ
「わあ、見てみてギル!綺麗に桜が咲いてる!」
前日までの大雨に顔を曇らせていたのが嘘のように、満開の笑みを浮かべている少女の頭を軽く叩きながら優しい色合いをしている桜の木々を見つめる。
柔らかな日差しの中で彼女の金の髪が眩い光を放ち、穏やかなエメラルドグリーンの瞳がそれはそれは嬉しそうに細められているのを捉えたギルガメッシュの口角も上がる。
文句のつけ所がない快晴にも関わらずこの空間に存在するのは、はしゃぐ彼女とそんな彼女に満更でもなく付き合っている英雄王のみ。
「ねえ……っ?!」
振り返った少女の目と鼻の先には恐ろしいまでに端正な顔──否、ギルガメッシュ。
何事かと理解するより前にひとまず距離を取ろうとするも、いつの間にか逞しい腕が腰に回されぴったりと密着している。
「えぇっと……?」
「偶には貴様からしてみせよ。幾度も唇は重ねている。要領は得ていよう?」
そう言い切って目を閉じたギルガメッシュの長い睫毛を睨みつけること数秒。
ここで実行に移さず、機嫌を損ねてしまうのは本意ではないので両頬に手を伸ばし決意を固める。
少女の背中を照らす、暖かな太陽が二人の行為を見守っていた。