▼2022/08/22:妹論争
今年の夏イベ内でプーリンもとい"妹"について追及があったのでそれは派生のSSマーリンをありがとう運営
「ねえマーリン。聞きたい事があるんだけど」
「うん? 何かなマスター」
千里眼で何を聞かれるか分かっていながら、こうして綺麗な目を向けて問いかけてくれるマーリンにふ、と口元を綻ばせながら私は言葉を続ける。
「レディ・アヴァロンがマーリンの事をお兄ちゃんと呼んでる事についてなんだけど」
マーリンはどうなのかなと思ってと言い終え、花の魔術師の顔を見るとそれはそれは渋い顔をしていた。
「マスターであるキミの前でこういう言い方は良くないとは思うのだけれど」
そこまで言って言葉を切ったマーリンは頭を振った。
「『妹』は無いかな。彼女とは考え方が真逆すぎる」
(可愛い妹が出来てラッキーとか思ってるものかと思ってたけど……)
私も頭を振りながらそう思っていた事を否定する。
「
肩をすくめながら苦笑いするマーリンを見て、一見に似通っているようで二人の根底は全く異なっているのだと改めて実感した。
「話はそれだけかい?マイロード」
「うん……あ、待って。最後にもう一つだけ」
咄嗟に脳裏に浮かび上がった質問を躊躇う事もなく、私は口に出した。
「もしも私がマーリンの妹だったら、どうしてた?」
その問いを聞いたマーリンは一瞬驚いたように目を見開いた後、柔和に微笑んだ。
「そんな事を聞くなんて珍しいね。まあ答えは決まっているよ」
改めて向き直ったマーリンは白い歯を覗かせながらこう言った。
「キミが妹ならとても楽しい日々になっただろうと思うし、きっと何よりも愛しい存在になっていただろうね」
そうして、いつものように私に向けてウィンクをしてみせる。
「あ、でも待てよ……やっぱりNGだ」
「えっ!ど、どうして?」
さっきまであんなに良い笑顔をしていたというのに突然掌を返したような発言に思わず狼惑の声を上げてしまう。
「だってキミは僕にとって大切な人だからね。兄と妹ではこんな事は出来ないだろう?」
いつの間にか両手で頬を包まれていて、私の唇に触れる寸前にまで近付いた彼の顔を見た瞬間、頭の中が沸騰するように熱くなった。だけどそれを自覚した時には既に遅く、マーリンは満足そうな笑みを浮かべるとそのまま私の唇にキスを落とした。
「贔屓目が過ぎるんじゃないかな……」
ようやくマーリンの手から抜け出すと、自分の胸を抑えながら息を整えた。
「当たり前だろう?! 伊達にキミの事を見守ってきてないさ!」
得意げな表情をしたマーリンは私の髪を一房掬い上げると、そこに口付けを落とす。何をしても様になる男だと思うと同時に、少しだけ腹立たしさを覚える。
「……恥ずかしいからもうやめて」
「なんて可愛らしい仕草をするんだろうかマイロード! 今すぐ食べてしまいたいくらいだよ!」
この人は本当に変わらないなと思いつつ、その温もりを払う事が出来ない自分に私は小さくため息をつく。
「部屋に戻ってからなら……わっ!?」
突然の浮遊感に驚いている間に、気がつけばマーリンの腕の中に抱き抱えられていた。
「今の言葉に嘘はないね?」
至近距離にあるマーリンの顔を見上げながらこくりと首を縦に振る。すると彼は満面の笑みで抱き締めたまま私の部屋に向かって歩き始めた。
「降ろして欲しいな」
いくらなんでもこのままの状態で部屋に連れて行かれるのは勘弁願いたかったので慌てて抗議するが、当の本人は意にも介していない様子で鼻歌交じりに歩みを進めている。
「おや? 私の腕の中は嫌かい?」
悲しげな顔をされても困るんだけど……と思いつつも、ここで否定すればまた同じやり取りを繰り返す羽目になってしまうので素直に答える事にした。
「ちょっとだけ照れ臭くて」
「嫌じゃないなら良かった!それじゃあこのまま連れて行っても何ら問題は無いね」
マーリンはそう言うなり更に強く私を抱き抱えると、足取り軽く部屋の扉へと向かって行った。
それ以上何も言えなかったのはきっと、惚れた弱味というものに違いない。