▼2016/09/05:子ギルSS
追記から重厚な扉の前に立ち鍵口に金色の鍵を差し込めば音もなく扉が開いた。
ただっぴろいシンプル過ぎる部屋の真ん中に座するこれまた馬鹿ほど大きいベッドに座り込んで膝に顔を埋めたまま、微動だにしない人物の肩が靴音に反応して跳ねる。
「お姉さんただいま」
言葉が返ってくることも彼女の瞳が自分を映すこともない。静まり返った薄暗い室内にしゃくり上げる声だけが響くのが気に食わなくて、ベッドに片膝を乗り上げ彼女の顎を掴んだ。
泣き腫らし真っ赤になった瞳がボクとお揃いだなと心の一部分が色めく。…一方で彼女から笑顔を奪い延々と泣かせる要因を作っているのもまた自分である事に相違なくて、罪悪感から思わず謝罪の言葉を口走ってしまいそうになる。
「申し訳ないと思うなら私をあの人のところに帰して」
赤い目でじっとりと睨みつけながら彼女の口がそう言葉を連ねるのが嫌で、聞きたくないから絶対謝ってはやらない。何があろうとあのお兄さんの元に帰してやるものか。
子どもじみた稚拙な考えの数々に思わず溜め息を漏らすと蚊の鳴くような声が聞こえてきた。
「……気に食わない事をしてしまったなら謝ります。だから乱暴なことは…しないで下さい」
あの人の隣で綺麗に笑う君が欲しかっただけだった。……ボクは一体どこで選択を誤ってしまったのかな。
(無数に広がる首元の花は今日も鮮やかに咲き誇っている)