▼2016/10/28:P3 有里湊
衝動書き「はいこれ」
言葉少な、という言葉すら不適切に思えてしまうほど短かすぎる言葉を並べて、有里くんは綺麗にラッピングされた細長い箱を押し付けてきた。
(比喩でもなんでもなく本当に私の頬に押し付けている)
「えっと…これを受け取る前にいくつか質問をしてもいいかな」
「構わないよ」
「まずひとつめ、コレの中身は何?」
「開けてからのお楽しみ」
「……ふたつめどうして私にあげようと思ったの?」
「さあ?なんでだろ」
「…………みっつめ受け取らないって選択肢は?」
「ないよねだから受け取って。そしてあわよくばこの場で感想がほしい」
「はぁ…じゃあ開けます」
ビリビリと紙袋を破きながら中身がびっくり箱とかそういう類の品だったらどうしよう…でもこんな形のびっくり箱なんてある訳はずないし、と良くないことを思い描いてはそれは(多分)ないだろうと打ち消すこと数秒。
薄く細長い箱から顔を出した美しい藍色を滲ませた蝶の髪飾りに今まで感じていた不満など遥か彼方へ消し飛び、感嘆の声まで上げてしまう。
「気に入ってくれたみたいで安心した。後ろ向いて」
有無を言わさず後ろを向かせられたと思えば下ろしっぱなしの髪に有里くんの手が伸びる。
それから待つこと早数分、パシャッというシャッターの切れる音で刹那の沈黙は打ち破られた。
「……うん。よく似合ってる」
「今さりげなく撮ってたよね!?絶対変な顔してたから消そう?ねっ?」
「分かった。はいチーズ」
肩に回された色白の細い指。真横に感じる彼の体温と呼吸音。今日二度目のシャッター音。
「さっきの無防備さ全開な顔も捨て難いし消去せずに置いとこ…(綺麗に撮れたよ)」
「本音と建前が逆!有里くんなら消してくれるって私信じてるから!」
「やだ。絶対消さない」
可愛いじゃんと小さく口角を上げてさっきの画像を見せてくる有里くんから携帯を奪い取ろうと飛び跳ねる度髪飾りが高らかな音を奏でる。
頬を撫でる風はどこか冷ややかで間も無く訪れるであろう冬<終焉>を静かに、そして確実に告げていた。
*自分が死んだ後何かしらの形を残したくて彼女に自分が好きだった(よく身につけていた)色の品を贈る有里くんとまだ何も知らず来年の誕生日にお返ししなきゃ!と考えている夢主の儚い青春