ねた

▼2017/09/13:賢王様のお惚気話

生前の賢王SS
王と妃がいちゃいちゃしているだけ


「あ、あのギル下ろして!私なら歩けるから…!!」
「我がしたくてしている事だ。貴様が気にすることはない」
「長い時間私を抱えて移動してるのだもの腕も痺れてきたでしょう?だから、ね?」
「お前の体はもう一人だけのものではないのだ。少しくらい甘えるがよい」
自身に宿った彼との愛の結晶を取り上げられては何も言い返せない。
うぐぐ…と呻き沈黙した妃にギルガメッシュ王は目を細め再び歩き始めた。

「妻を抱えて運ぶなど造作もないわ。…最盛期の我と比べれば些か筋肉が落ちたかもしれぬがな」
「あ、王様だ!」
「今日は妃様も一緒なんだね!」
「ギルガメッシュ様と妃様が来たぞー!!」
あっという間に人混みに呑まれた二人は顔を見合わせ仲睦まじく微笑みあう。
風が吹くたびに妃の金色の髪が宙に舞い上がり、その美しさに民衆は同時にほうと息を吐き出した。

「私は本当に大丈夫だから、子供たちのところに行ってあげて?」
「……何かあればすぐに我を呼べ。無理は許さんぞ、よいな」
彼女を土の上に下ろした賢王は甲高い声で王の名を呼ぶ子供らの群れに姿を消した。
目線を合わせひとりひとりから丁寧に話を聞くその姿は民が欲した理想の王そのものに違いない。

「(あの人の幸せそうな顔を見ているだけで私の顔も緩んでしまうのだから単純よね)」
「お妃さまもこっちにおいでよー!」
「そうだよ!僕達と一緒に話そう?」
小さな手に服の裾を引かれ数秒前に別れたギルガメッシュの前に再び姿を現すと、これまた柔らかな微笑と共に出迎えられた。

「今日は機嫌がいいからな、特別に我とこやつの馴れ初めを話してやろう!!」
「お願い止めてギル!恥ずかしいから!」
「あの日の事は鮮明に覚えているぞ。金色の髪を靡かせながらゆっくりと振り返った女、それが━━」
これはもう駄目だ。諦めの境地に入った妃は王の口から紡がれる馴れ初めに顔を真っ赤にし、俯いてしまった。
彼女の体を己の方に引き寄せ話を続ける王の瞳はキラキラと眩い光を放っていた。

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極夜