▼2017/09/24:あまりにも暖かく残酷な幻想
生前の弓ギルがほんのり出ますちょっとセクハラ発言もしてる
これは夢だ、誰かの生前の姿を見ていると私は瞬時に理解した。
細部の細部にまで拘りが感じられる装飾の成された豪華な玉座に足を組み、腰を掛ける王の視線は一人の女性に注がれている。
王の視線を受け止め柔らかな微笑を浮かべる女性は彼と同色の長い髪を揺らしながら彼と距離を詰めると、腕に抱いた赤子を手渡した。
「日に日にギルに似てきたと思うのだけれど、どう?」
「静かに寝息を立てる姿は貴様そっくりではないか」
「そうかしら?将来貴方みたいに傍若無人な人にならなければいいのだけれど」
ギルガメッシュに抱かれ眠る赤子に幾許かの不安を抱く女性にギルガメッシュは激怒するわけでもなく、紅玉の瞳に彼女を映しながら唇を動かす。
「外貌は我とよく似ているが我と貴様の子だからな……中身は貴様に似て人を疑わぬ間抜けに違いなかろう」
「酷い言いようね……健康に育ってくれるだけでいい、この子を守る為なら自分の命なんて安いものよ」
両親から慈愛に満ちた瞳を向けられた赤子の口角が僅かに上がる。
甲高い声を上げた妻とそれを窘める夫の姿はどこにでもある至って普通の、だけれど何物にも変え難い幸せな時間だと私は思った。
「ギルの子供かぁ」
「寝覚め一番にどうした雑種、我と子を設けたくなったか」
「私の言い方が悪かったのもあるけど別にそういう意味じゃなくてですね…!!」
顔を真っ赤にして顔の前で両手を振るマスターの姿を喉を鳴らし笑う英雄王は子供…な、と小さく漏らした。
「生前のギルは何十人も美女を侍らせていたんじゃない?」
「確かに側室はそれなりに居たが……嫉妬か」
「してない!ギルとその人の間に出来た子供はさぞ可愛かったんだろうなと思っただけ」
「そうさな……あやつと我の子は確かに愛らしかった」
酷く懐かしむように、奥深くにしまい込んだ記憶を手繰り寄せるようにして絞り出された王の声はあまりにも優しい色を帯びていた。
彼が思い浮かべる女性が先程見た夢の彼女と同一人物であろうと即座に理解した私の胸中には一言では言い表す事が叶わない感情が渦巻いている。
僅かに開いた窓から入り込んだ風が二人の金糸の髪を揺らした。
(前世でギルガメッシュの愛妻だった少女が現世で彼のマスターになっていたらいいなぁという妄想から)