ねた

▼2017/11/04:臥龍の妹

諸葛亮を兄と慕う夢主と徐庶の話になる予定だった
書いてるうちにあれれ〜?な感じになってきたのでボツ
名前表記あり
毎度の如く突然終わります


人が訪れる事など滅多にない庵の前で倒れ込んでいる物体を目視した諸葛亮は目を細め、それに近付いた。
煤焼けた灰色の衣と痩せこけた体から聞こえるか細い呼吸音……目の前に伏した小さき人から漂う濃厚な死の臭いに臥龍は思わず顔を顰めた。
諸葛亮が顔を顰めたのを感じとったのか或いは間が合っただけか、童は薄汚れた顔を上げて深い蒼の瞳の中に諸葛亮を捉えた。
生きる気力をすっかり失ったその瞳は濁り、澱んでとても直視出来るものではない。
童の体が宙を舞う。
己のような小汚い生物を玄関先に置いておけぬと男に放り捨てられたのだろうと考え次に訪れる衝撃に備えるも、その瞬間はいつになっても来なかった。

「汚れを落としてから朝餉にしましょう。貴方を死なせはしません」
━━わたしは今、男の腕に抱かれているのかとようやっと理解するのと同時に名前は深い眠りに落ちた。

***

机の上に置いた腕に顔を乗せた諸葛亮はいつになく深刻な表情を浮かべ深い溜め息をついた。
自宅前に行き倒れていた名前に手を伸ばしてから早いことで数年が経つ。
時間の経過とは大層恐ろしいもので貧相な体つきであった名前も女性特有の丸みを帯び始め、街中を出歩けば異性の視線を惹き付けるような美少女へと変貌していた。

……しかし年月だけではどうしようもない問題というものも存在する。
例えば彼女の生い立ち。
両親と死別した名前は悪心に満ちた人間の波に呑まれ、生物の本性を目の当たりにしながら自身が生き抜く為にそれらの血で手を汚してきたと語った。

「ころさないとわたしがしんでた」
年不相応に表情筋をピクリとも動かさず、幼い名前は淡々と諸葛亮に語った。
今までの"日常"が名前の心に黒い影を落とすのではないか━━。
その予感は見事に的中してしまい名前は他人の好意の裏を考え素直に喜べない、性根のひん曲がった娘へとなってしまった。

「誰知らぬ男の血で汚れ、加えて可愛げもない女を娶ろうなんて物好きが居るかどうか……臥龍と呼ばれるご聡明な兄上なら既に答えは出ていらっしゃるでしょう?」
「貴女は何故いつもそうやって自分を卑下するのですか」
「……少しばかり頭を冷やして参ります」
頭を深々と下げ名前は姿を消した。
名前に女としての幸せを掴んで欲しいという気持ちは日に日に強くなるものの、彼女の言い分にも一理ある。
ほんの少しだけで構わない、彼女の心に掛かった黒いモヤをどうにか除去出来ないものか……。
目尻に悲愴を漂わせ背中を向ける名前の姿を思い出し、殊更大きな溜め息を吐き出すのと同時に扉が音を発した。

「えぇと……お取り込み中だったかな?」
眉尻を下げ頭を掻きながら退出しようとする長身の顔見知りに首を振った諸葛亮は何となしに青年……徐庶に内に秘めていた悩みを打ち明けた。

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極夜