おはようからおやすみまで

「ふあぁ……もうこんな時間か」
木製の椅子に座してかれこれ二時間と少しばかりの時間が経過していた事に目を見張り、手にしていた本に銀色の栞を挟んだ梓は凝り固まった筋肉を解すように肩を回し大きく伸びをした。

机の上に置いてある時計の針はもう間もなく一の数字に差し掛かろうとしている。
「明日(既に日付けを跨いでいるので厳密には今日だが)は朝一番にレイシフトしてもらうつもりだから寝坊しないようにね〜」と釘を刺されていた事を思い出した梓は急いでベッドに滑りこみ、目覚ましをセットした。
それでも最悪の事態……寝坊をしてカルデアの皆に迷惑を掛けてしまうのではないかという不安は拭えない。
事前に告知をされていたにも関わらずこんな時間まで読書に耽っていた自分に非があるのは重々承知ではあるのだけれど。
マスターが読書に没頭していた間、ベッドに腰掛けていた"彼"は寝転がった梓を見下ろしている。
彼の瞳は梓の考えを見抜いているようで、更には次に紡がれるであろう言葉をも想定出来ているようにも見えた。

「目覚ましが鳴っているのに布団の中でぐずってたら起こして欲しいな。良く言うとモーニングコールみたいなの……」
彼は静かに頷くと時間も惜しいと言わんばかりに梓の目の上に掌を置いて半ば強引に視界を奪った。
真っ暗闇の中で「おやすみ」と零せば優しい声色で同じ言葉が返ってくる。

睡魔に身を委ねた梓の胸が規則正しく上下しているのを確認した彼女のサーヴァントは唯一の明かりを消すと梓の部屋から退去した。

以下分岐
ご要望の声があればルートが増える…かも
→ギルガメッシュ
→マーリン

極夜