半端者が求めたもの

ありがちネタ 短め

アーチャーが持てうる力を発揮出来ないのは私の力が伴っていないから──。
悪態をつきながら私を守る剣として双剣を振るう彼の背中をぼーっと見つめながら改めて突きつけられた紛れもない事実に奥歯を噛む。
…もっと強くならなくては。アーチャーが存分に力を奮って戦えるよう、一日でも早く一人の魔術師と認めてもらえるように。
新たな決意を胸に顔を上げる。…赤い外套を纏った皮肉屋のサーヴァントの頼もしい背はなく代わりに目の前に居たのは、

「うそ…エネミー…?」
少し離れた所でアーチャーと対峙しているエネミーと同じ個体がじりじり距離を詰めて迫ってくる。

「このエネミーは複数体で行動し、一体が引き付けている間に獲物を狩るタイプのよう、だな!」
いくら斬っても減ることのないエネミーの山にアーチャーも堪らず舌打ちを漏らす。

「一時撤退だ!走れマスター!」
「無理だよアーチャー……」
今更背を向けて走ったところで100%逃げ切れないと私でも判断出来るまでにエネミーは距離を詰めてきていた。
回避不可能な死を前に心臓は痛いくらいに脈打ち、体は小刻みに震え浅い呼吸を繰り返す私の瞳からは涙が溢れていた。
右も左も分からない、基礎知識すら持ち合わせていない新米マスターの為に死力を尽くして戦うアーチャーの為に強くあろうと決意を固めたばかりなのに…。
世界の無情さに絶望し、膝を折った私に飛びかかってくるエネミーの姿が光を無くしたガラスの瞳に映る。
いよいよ死を覚悟し静かに瞳を閉ざそうとしたその時私が見たものは。

「梓!!」
血気迫った表情で私の名前を叫ぶアーチャーの姿だった。

極夜