終局のネタバレガッツリ入ります
空気に溶けゆく体に自分に残された時間の少なさを改めて痛感する。
ボクに背を向け戦闘態勢を取っている彼とは対照的に梓ちゃんはきゅっと唇を噛んでボクを見据えていた。
「人理焼却の根本になってるソロモンを討ち倒したらみんなで盛大に祝賀会をしましょうね、ロマン!」
眩しい笑顔を浮かべてボクを見る彼女に一拍を置いてそうだね。と返す。
そんな未来は100%訪れないと分かっていながら、真実を彼女達に隠し笑顔を貼り付けて沢山飲むぞー!と意気込んだ。
「……君にも最期まで黙っていてよかった」
「な、なんで…なんでですか!わたしは、わたしは…」
口から飛び出た本音に梓ちゃんは掴みかからん勢いで距離を詰める。
誰より優しい君。マシュの事を聞いた時だってどんな些細な事でも構わない、マシュを延命させる方法はないのかと貴重な自由時間をあまつさえ睡眠時間まで削って調べていたのをボクは知っている。
そんな梓ちゃんにボクの正体を、そして宝具を使えばどうなってしまうかなんて言えるわけないだろ?
「……みんなで、祝賀会しようって。ロマンが居なくちゃ約束果たせないじゃないですか…お酒を沢山飲むんでしょ?」
「うん、ごめんね梓ちゃん」
「謝って欲しいわけではないんです。わたしたちには…わたしにはこれからもロマニ・アーキマンが必要なんです!貴方が、貴方の事が愛しくて堪らない…だから、だから……!」
とうとう涙を零し始めた梓ちゃんの体を抱き込んだ(彼女の体温を一切感じられないのは残念なことだ)
「ロマニ・アーキマンという一人の人間を必要としてくれて、それ以上に愛しんでくれてありがとう。ボクには充分すぎる言葉だよ」
いつもならポケットの奥に仕舞われてしわくちゃになったハンカチで彼女の涙を拭ってあげられるのに、今はそんな事すらしてあげる事が出来ない。
……嗚呼、もう時間だ。
「ボクも紅月梓という一人の女性のことを誰より、何より愛していました」
意識が、霧散する。君とのお別れはあの時見せてくれたような笑顔でしたかったんだけどなぁ。最後の最後で梓ちゃんを泣かせてしまうなんて最低な男だ。
言葉を詰まらせ溢れ出る涙を袖口で強く拭い彼の背中を追う梓ちゃんを瞳に映しながらボクは消失した。
願わくは彼女の未来に幸多からんことを。
(ロマニ・アーキマンに哀悼の意を表して
11年間お疲れ様でした。心からの感謝を貴方に)