「ボクにお任せ下さい」

幕間バレを含みます

頬を膨らませ、誰から見ても不機嫌ですオーラを垂れ流している梓に一体何人の英霊が声を掛けようとして断念したのか分からない。

ー普段温厚な彼女の機嫌をここまで損ねたのは誰だー
慇懃無礼な英雄王の名が真っ先に上がったが王の問題発言を梓が笑顔で受け流す姿を今日まで目撃している者は多く、彼ではないだろうと満場一致で話は続く。
他に誰が居ただろうか…?皆が頭を抱えて考え込んでいると場違いな少年の声が木霊した。

「…そろそろ機嫌を直してくださいよ梓さん」
切望するように捻り出された子ギルの声に驚愕するしかなかった。
金ぴかのアレと真逆で礼儀正しく謙虚な少年が彼女を怒らせる要因を作ったと誰が予想しただろう。
いつもなら子ギルが声を掛けてくるなりしゃがんで受け答えをする梓が今日に限って目線を合わせることもなければ、子ギルの声など聞こえていないと言わんばかりにそっぽを向いてしまう。

「私なんかよりマシュちゃんを気にかけてあげた方が良いんじゃないかな。彼女に着てもらいたい水着も沢山あるんでしょ」
依然として第三者である我々には詳細が見えてこないがレイシフト先で何かあったのではないか、という結論に至るまで時間は掛からなかった。
近寄り難い空気を纏い、刺々しい言葉を連ね相手を拒絶する様子から梓が相当立腹であることは火を見るより明らかだ。

「ギル君がしたいようにすればいいと思うよ。私がそれに口出しする権限なんてないんだし」
「ボクが梓さん以外の女性に対してあんな事を言ったから嫉妬したんですよね?素直にそう言えば良いのに」
「妬いてない!誰の目から見てもマシュちゃんの方が胸大きいし…別に気にしてなんか、ないもん」
異空間から出現した天の鎖で強制的にその場に座り込まされた梓の耳に左手を添えた子ギルが言葉を囁く。
途端に顔を赤らめ絶句した梓に満面の笑みを浮かべた小さな王は鎖を解くなりそうと決まれば話は早いですね!と彼女の背を押して移動を始める。

「日が高いうちからそんなこと…!」
「先日その一件があってからボクの事を避けてましたし、お互いそろそろ限界だと思うんです。梓さんだって大きくしたいんでしょ?」
「……大きい方が好きっていうなら頑張る」
「(結局はこんなオチか、惚気か!!)」
マスターとサーヴァントが不仲より仲睦まじい方が我々としても嬉しい。……例えそれが砂を吐くほどの糖度と睦まじさだとしても。

私室の方角に消えた2人を見守る私たちの心はずっしりと重く、顔を見合わせても漏れるのは溜息のみであった。

極夜