独占欲は寧ろ強い

「日頃そのような衣服を纏わぬ貴様がそれを着ている理由などおおよその目星はついてはいたが……奴らは童か。幼き我は仮にも童ではあるが」
組み伏せた梓のハイネック部分を強引にずり下げた先に広がる光景──普段着から見えるか見えないかのぎりぎりの位置に存在する鬱血痕と反対側の一切の配慮もなく、無数残された鬱血痕に賢王は頭を抱えた。

「幼き我がもう一人の我に対する当てつけにコレを残し、それに乗る形で奴も同様に……といったところか」
「流石は賢王。大正解です」
「雑種といえどマスターである梓に迷惑を掛けるなど嘆かわしい……張り合うのは自由だが雑種を巻き込むなと我から言っておこう」
首筋に残るグロテスクさすら感じる鬱血痕に指を這わせながら静かにギルガメッシュは言った。
ギルガメッシュの言葉に何度も頷き感謝を述べながら体を起こそうとした梓はギルガメッシュの視線がじっとりと首元そこに注がれている事に小首を傾げながら胸板を押す。
お互い妙な気を起こす前に、と考えて押した両の手にはいつのまにか金の鎖が絡まっている。

「ちょっと王様離して!」
押し倒された際に捲れ上がったスカートを更にたくし上げ、柔らかい内腿を撫でながら脚の間に頭部を侵入させたギルガメッシュは何も答えようとしない。
サラサラとした髪が太股に擦れて擽ったいやら変な気を起こしそうやらで梓は拘束された手で口元を覆った。

「体を暴いた者にしか分からぬ場所に痕跡を残す方が良いと我は思うが。あくまで個人的見解だな」
「脚の間で喋らないで!……ん、ぅッ」
脚の付け根辺りに走るチリチリとした痛みとぬるりとした舌の感触に塞いでいた口から変な声が漏れてしまう。
鎖から開放された梓は直ぐにギルガメッシュを退かして背中を向けた。
先程痛みが走った部位に視線をやると先まで何も無かった内腿に鮮やかな赤い所有印が点在している。

はぁと嘆息を漏らしながら注がれる梓のじっとりとした視線をギルガメッシュは鼻で笑ってあしらう。

「ギルガメッシュと名のつく英霊はもう信用しない……王様の馬鹿」
「我であれば大丈夫だという認識は改めるが良い。男を容易に私室に上げるなという戒めよ」
赤い目で梓を見下しながらギルガメッシュは姿を消した。
1人きりになった部屋ではしたないと思いながら再度スカートを捲し上げる。
残された鬱血痕の多さから彼の独占欲の深さが伺い知れて、梓はズキズキと痛む頭を抱え二度目の嘆息をついた。

極夜