「僕は人間と歩むと決めた。だからどうか遠慮なく僕を使ってほしい」
野に咲くように可憐な清廉な青年は穏やかな顔で大層無慈悲な言葉を言い放った。
何て悲しい事をいうのかとその言葉の返事に言い淀んでいるとエルキドゥは幾分か表情を和らげ、その手で私の髪を撫でた。
「困らせてしまってごめんね。梓が扱い易いようにしてくれたらそれで構わないから……改めてよろしくねマスター」
それが私と、エルキドゥの初対面だった。
***
「エルキドゥの髪も大分伸びてきたね。風に靡く度に太陽の光を浴びてキラキラ輝くのを見る度に神様みたいだなって思うよ」
「神様だなんて大袈裟だな。それを言うなら梓もだろう?金色の髪が陽の光を浴びながら微笑む梓は美しいと知っているかい?」
彼の長い髪を櫛で梳いていた私の手をごつくもない、かと言って柔らかくもないエルキドゥの手が掴んだ。
そのまま腕を引かれて彼の腕の中に収まる。どくどくと早鐘を打つ心音に気付かれないように顔を俯かせて、視線を逸らしていると耳元でくすくすと笑う声が聞こえる。
「僕の膝上に座ってしまっただけでこんなに照れてしまうなんてマスターは可愛いね」
「エ、エルキドゥだっていつもより顔が赤いし心臓の音も早いしお互い様でしょ……!」
「はいはい」
「離してよー!!」
「はいはい」
「はいはいじゃなくて……はぁ」
後ろから肩口に顔を埋めて黙り込んだエルキドゥに名前はお腹に回されていた彼の手に自身の手を重ねる。
一瞬だけ動いたエルキドゥはお腹に回した腕に力を強めるとぽつりと蚊の鳴くような声で言葉を吐き出した。
「君の事が好きだよ、梓」