傍若無人

構ってくれないマスターにちょっかいをかける王様
後半ややピンクなので閲覧注意

沈黙を守っていたギルガメッシュの鮮やかなルビーの瞳が梓へと向かう。
次から次へと書類に目を通し、時折小さく言葉を漏らす梓にギルガメッシュはわざとらしく大きな嘆息を吐き捨てた。

「まだ終わらぬのか」
「うーん……ごめんねギル、もうちょっとだけ待って。なるべく早く終わらせるから」
数十分前と全く同じ返答にギルガメッシュは再度息を漏らした。
サーヴァントに対して冷静かつ的確に指示を飛ばせるよう知識を培いたい━━という梓の言葉に手渡された山積みの書類。
彼女がそれに目を通し始めてどれほどの時間が経過しただろうか。

いつも喧しい雑種が静かになるのは良い事ではないかと最初は考えていた英雄王であったが、数時間にも渡って放置されていることに対し些か腹が立ってきたようで。
長い脚を揺らしたり指先でしきりにテーブルを叩いているが、書類を読む事に集中している梓の耳には全く入ってきていないのかギルガメッシュが声を掛けなければ紙を捲る音以外何も響かない、空虚な空間と化していた。

「貴様の待っても聞き飽きた」
「ひゃっ!?」
突然の浮遊感に梓の唇から小さな悲鳴が漏れ、手にしていた書類がはらはらと宙を舞う。
眦を決した梓の気持ちなど知ったものかと問答無用で自身の膝上に少女を乗せたギルガメッシュの口角が吊り上がる。
床に散った書類をかき集めようと膝上から降りようとする梓の腹部に腕を回し、腰を撫であげる。
途端に漏れた短い吐息と震える体にギルガメッシュはいよいよ笑い声を漏らした。

「や、っ……本当にあと少しだから、ぁっ」
耳元に熱い吐息を吹きかけられた梓は薄い涙の膜を張りながらギルガメッシュを睨み上げる。
梓をベッドに沈め、片手で彼女の両手を纏め上げたギルガメッシュは微弱な抵抗を続ける梓の耳に再び唇を寄せた。

「楽しい時間になりそうだな梓よ」

極夜