来年もご愛顧賜りたく存じます

昨日掲載した夢主(CCCからFGOに飛ばされたマスター)と王様

「ギルもベッドの上でゴロゴロしてないで一緒に部屋の掃除しよう?」
この世界に飛ばされて何度目かの新年を迎えるにあたって年度末に行っている私室の大掃除……と言えば聞こえは良いが、大体は目の前の人が宝物庫から取り出した宝物の数々を再び宝物庫にしまうだけの作業だったりする。
(元々部屋に備え付けられていた質素なベッドを部屋の主に断りも入れず、キングサイズのふかふかベッドに差し替えていた時は驚愕を通り越してギルならそうするよね。と納得してしまったのが悔しい)

ベッドから上体を起こしたのを好機と思った梓はギルガメッシュの腕を両腕で拘束して立ち上がらせると室内に散らばる、豪華絢爛な家具の数々を指さした。

「自室なのに私の私物よりギルの私物が圧倒的に多くて、それに埋め尽くされてるっておかしいよね!?」
「今更妙な事を口走るな梓。貴様の部屋は我の部屋、一蓮托生の関係だとあちらで何度も明言してきたはずだが?」
「それとこれとは話が別!最近使ってないギルの私財は直ちに宝物庫にしまって!そうしたらあとは好きなだけベッドでごろごろしてくれて構わな──」
パチンとギルガメッシュの指が鳴ったのと同時に目に痛い……黄金色の私財の大半が忽然と姿を消した。

「これで文句はなかろう。思う存分年末の大掃除とやらに勤しむがよい」
「今までギルの私財みっちりで気が付かなかったけど、この部屋思っていたより広かったんだね……宝物庫から掃除機よろしくお願いします」
「よかろう」
宝物庫から取り出された掃除機を部屋の隅々にかけながら梓は王に問いかける。

「ギルが良ければ何だけど来年も……」
「姫始め、とやらの話か?」
「ち、違うっ!ギルのバカッ!!」
梓が一々いじらしい反応をする姿が愛らしくて、彼もまたわざとらしくそんな言葉を並べているのだと良くも悪くも本心が顔に出てしまう彼女が気付くことは来ないと王は確信めいた何かを得ている。

「我と契約して長いのに相も変わらず貴様は頭が固いな。今のは英雄王ジョークよ」
「……来年ギルが良ければまた一緒に初詣に行きたいな、と思ってたの」
「それはマスターとしての命令かそれとも……一人の女として誘っているのか?」
「(分かってるくせに……!)」
咳払いをして冷静さを取り戻したと思えば王の言葉ひとつで再び顔を赤らめた梓に羽交い締めするように抱きしめ──拘束し、返答を求める。

「貴様が行きたいと言うのであれば行ってやらんことも無い。装いも我の方で用意しておこう」
「本当に!?来年もギルと振袖を着て初詣に行けるなんて嬉しい。早く掃除を終わらせるね!」
こやつの表情がコロコロと変わるのを傍で眺めるのはどれだけ時が経過しても愉快よなと考え喉を鳴らすギルガメッシュに梓も目を丸くする。

「何かおかしな事を口走ってた?ギルとはそれなりに長い付き合いになるけど、まだ笑いのツボを把握出来てないや……」
「よい、梓が気にする必要性は皆無だからな。それより掃除を早く終わらせ我に構え」
「我が王がそれをご所望とあらば」
目に見えて速度を上げて掃除機掛けを再開した梓の単純さと純粋さに目を細めながら、ギルガメッシュは鼻歌まじりに掃除機を操る梓の背中を眺めていた。

極夜