王は人の心が理解出来ない

*賢王と子ギルが弓ギルとマスターのやり取りを傍観する
*子ギル召喚後に賢王が召喚された設定です

「幼き我よ、奴と梓は一体何をしているのだ?」
「キャスタークラスのボクはここに来てまだ日が浅いんでしたっけ」
目の前で繰り広げられている梓と黄金鎧に身を包んでいるギルガメッシュのやり取りを見ながら苦笑いを浮かべた子ギルは頭の後ろに手を回し、傍観の体制に入る。

「貴方も金色のあの人と確か身長が同じでしたよね」
「確かそうであったな」
「それを踏まえた上であの人の性格、そして梓さんの身長差など諸々を考えてみて下さい」
賢王の中で即座に答えは弾き出された。
梓の身長は平均的な日本人女性の範疇。
対してアーチャークラスのギルガメッシュの身長は優に180を越えている。
そうなると必然的にコンパスの定理的なもの……歩幅が一番の問題に挙げられるだろう。

加えて最盛期のギルガメッシュは傍若無人と称され良くも悪くも我がルールな人物であり、とても他人を慮るとは思えない。

「足のトロい梓に痺れを切らせた若き我がああして梓を小脇に挟んで移動しているということか。しかしあれでは梓自身が騒いでいるようにいつ"中"が見えてしまってもおかしくないぞ」
「実際のところあの移動の仕方のせいで今まで何度も男性サーヴァントの視線が梓さんのそこに釘付けになって、後々金色のあの人が梓さんの下着を見たと疑わしき人に裁きと称して色々手を回してるとかいないとか。……ちなみに以前ボクが見た時はビビッドレッドの派手目な下着でした」
己がマスターの痴態を晒していると分かっていながらそれを止めようとせず、運悪く梓の下着を見てしまった者に制裁を加えるとは何と身勝手な英霊であろうかと賢王は眉間の皺を深くしながら溜息を吐いた。

「ほ、ほんとこの抱え方だけは止めよう?せめて横抱き、とか……」
「たわけ。それでは我が武器を振るえぬではないか」
「それなら私を抱えて移動するのを止──きゃあ!」
梓が悲鳴を上げた直後、彼女のセーラー服のスカートが盛大に捲り上がった。

『(黒の布地に白のフリル……)』
ほんの僅かな間だったが彼らがそれを見逃すはずも無かった。
ギルのばかっ!と叫ぶ梓の顔は茹でたタコのように真っ赤になっているのだろう。
己の事ながら何とも言えない気持ちに陥った賢王と子ギルの、ある日の出来事である。

極夜