指1本渡さない
カムイ≠主人公(暗夜の記憶有)
※執着タクミ
「ど……し…あんたも僕から離……だ!」
悲痛な面持ちで弓を番える少年の慟哭が胸を劈く。何と言葉を返せばこの人は満足してくれるんだろう。どうすれば貴方を失わなくて済むの?
「ああ良かった。目覚めたんだね」
「タクミ…さ、ん?」
「酷く魘されていたから起こそうとしてたところなんだ。大丈夫?」
色素の薄い美髪を持つ彼は気遣うようにわたしの髪を撫でた。
彼はまだ熱を失っていない。わたしの傍で呼吸をし、心音を刻んでいる。
大丈夫だと自分に言い聞かせながらタクミの問いかけに相槌を打ち、体を起こす。
「ひとつ聞きたいのですがよろしいですか」
「何?」
「もし、万が一わたしが居なくなったらタクミさんは、っ」
器官が詰まる感覚に襲われ、わたしはそこで自身の体が再びベッドに沈んでいることに気付いた。
起き上がろうにもタクミが覆いかぶさっていて微動だに出来ない。
「やっと掴めた幸せなんだ。僕を理解したうえで愛していると囁いてくれてはにかんでくれる…あいつにはこれ以上何も奪わせない」
ゆらゆら揺らめく双眸に灯る憎悪の炎に体が震えた。
大切なものを失う事を何より恐れるタクミにはもっと考えて発言しなくてはいけなかったと心のうちで漏らし、彼を見つめる。
「ルネッタは絶対に渡さない。僕は、僕達は十二分に苦しんだ。次はあいつが苦しむ番だ」
そうだろうルネッタ?と同意を求めながら愛する男はルネッタの白い喉元に噛み付いた。
prev next
[back]
極夜