世話焼き性分
「……君は、僕を一人にしたりしない?」
鈍色を帯びた虚ろな瞳でこちらを見据えながら青年は感情の伴わない声で話し続ける。
「萩原朔太郎。好きに呼んでくれて構わないよ、これから宜しくね司書さん」
僅かに口角を緩め小首を傾げる朔太郎に紫月も瞳を三日月に形作り、真一文字に結んでいた唇に孤を描く。
「紫月と申します。こちらこそよろしくお願い致しますね萩原さん」
緊張でガチガチに固まっている事を悟られまいと笑顔を取り繕う。
これから関係を築いていく目の前の青年は人であって人間ならざる者なのだから必要以上に関わってはいけないと考えていた……はずだったのに。
「帯がまたこんな風になっちゃった」
「ま、またですか?それに本日は頑固そうな寝癖までついていますね。今お直しを……」
「紫月、おはよう」
「島崎さん離れて下さい〜!萩原さんの帯などを直し終えましたら話を伺いますので」
「僕より彼を優先させるんだ?ふぅん」
「どちらに行かれるのですか!朝ご飯をきちんと食べないと活力がつきませんよ〜!」
2人の文豪に懐かれている(正しくは甲斐甲斐しく世話を焼く)紫月の姿を遠目から眺めていた男は白い歯を覗かせ大笑いながら紫月達のやり取りを見守る。
「おっしょはんやのぅて保母さんみたいやなぁ……あ、島崎さんを追いかけて走ってった紫月ちゃんがすっ転んどる」
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極夜