インスペクション-ここで生きる-
ゲイであることから16歳で母に捨てられたフレンチ、25歳で海軍に入隊を決めるがゲイであることがバレた彼は仲間達からいじめを受ける
A-24の贈る作品はこうした生きづらさ、そして独特のホラー、人の繋がりを描いたものが多いだろう
今作は監督の実体験であり、その話は痛くもリアリティに溢れていた
特に母親の眼差しや言動は他人から受けるもの以上にとても辛いもので
彼が出生届を取りに来た時、久方ぶりに来た家でソファに座らせる前に新聞紙を敷いたり、彼が触れた写真をわざわざ拭いたり、信心深いキリスト教徒である母親にとって受け入れられない現実であることは最初と最後で描かれている
自分に従軍経験は無いものの、知り合いや本を読んでいても現実にそうした環境の同性愛者は少なからずいるし、そうじゃなくてもホモソーシャルの一環からそうしたものになる場合もあるらしい
入軍後のシャワールームでゲイがバレてしまったフレンチは仲間から酷い暴行を受けたり嫌がらせを受ける、けれどフレンチは同性愛者なだけで犯罪者ではなく優しい青年だ
物語冒頭で暮らしていた場所で彼は老人のゲイに優しくしていたり、髭剃りの時に横に来た薬物中毒者に対して少しギョッとした態度をしたり、バスで嫌がらせで食事を取られた仲間に自分のものを差し出したり
実際彼は根気もあるし負けないように必死に戦っていた、3ヶ月の末に彼は仲間にも立派に認められた海兵隊員となり、修了式にきた母は誇らしいと笑顔を向けて触れてくれる
しかしフレンチは「海兵隊員になったからってストレートにはならない」と告げると母は激昂する、周りはそんな彼に仲間だと告げる
受け入れられない母親は彼を「愛せない」と告げるもそれを悲しいながら理解するフレンチはただその言葉を聞くだけ
この物語における母親が本当に難しくて、愛してやりたいのにどうしても息子が異物の存在にみえるのだろうというのも描かれていて悲しかった
けれどそれは現実で仕方の無いことである、本当に複雑で寂しいけれど強さも与えてくれる作品で胸がじんわりと熱くなる寂しさを感じさせる作品なのだった。