勘違いです!

※73巻

悪魔将軍ことゴールドマンに随分と荒らされてしまったモンサンパルフェの復興に勤しむ完璧始祖や墓守鬼達を横目にティアは今日も変わらず慌ただしく仕事をこなしていた
超人墓場の零式のドアをノックし入室すればその部屋には檻の中に閉じ込められた男が一人険しい表情で頭上のモニターを見つめていた

「あら?立て込み中でしたか?」
「いや、キン肉マン達に新たな敵がな…」

そういった彼にティアは食事をテーブルの上に置いては彼らの視線の先にあるモニターを見つめたそこには見覚えのある男がフェニックスと対峙していたことに思わず目を丸くし口元に手を当てて「あらオメガマンさん?」と呟いたもののネメシスが「いやアレの兄だ」と答えた

「兄弟とか親戚って似ますよねぇ」

本当そっくりと感心する彼女にそこでは無いだろうとネメシスは感じながらも口にすることは無かった、この人の子は相変わらず何処かしらズレているのだ。
まるで普段通りの試合を観戦するようにザ・マンの横に立つ彼女はフェニックスとオメガマン・アリステラとの試合を眺めていた、先程キン肉マンとパイレートマンの試合を終えたと説明を受けた彼女はもう少し早くにこれば良かったと残念がりつつ食事に手をつけないザ・マンに小言を告げて自身も彼のために用意したお茶を飲みつつ今回の対戦もまた大変そうだと感じていた時であった

『オレ達はザ・マンを倒し…そして我がオメガの女神であるティア様を花嫁に迎えるのだ!それこそが我がオメガの悲願よッ!!』

ザ・マンの打倒、そしてさらなる上の存在神の打倒まではティアもまるで御伽噺を聞くかのごとく頷いていたものの突如あげられた自分の名に思わず彼女は口に含んだお茶を吹き出してしまい慌てて雑巾で汚した床を拭いたあと椅子に腰かけ何も変わらぬ自身の主をみつめた

「え?え?どういうこと?」
『ティア?超人墓場の女中か…そんな女を欲しがるとはどういうことだ』

フェニックスの問いにティアも深く頷きアリステラの回答を待ってみれば彼は自分達の過去を話した、それはティアもよく覚えていることであり思わず顔色を暗くさせた

「近頃とある超人の一族が素晴らしい進化をしているそうだ」

喜ばしそうにそういったザ・マンはその言葉とは裏腹に僅かに哀しそうでもあった、二人きりの空間でティアは彼ら以外にも助かった超人達が生活を送っていることを喜ばしく感じていたもののオメガの一族についての彼らの意見に表情を曇らせた。
神も人も自分に抑えられない力を恐れるのだろう
天界からの罰が彼らに下れば容赦ないものになるのは目に見えておりどうした物かとザ・マンは悩み、彼らの手で粛清をすることをティアに告げた。
過去にも行き過ぎた超人達を罰することはあったもののティアはそれを事前に告げられることも無く、突如帰ってきた彼らの身体が普段の鍛錬とは違う真っ赤に染った姿だったことに驚きその日が粛清をしたのだと感じるようなものだった

「ティアにも協力して欲しいのだが」
「協力…ですか?生憎私は人の身ですのでお力添えなど」
「それは理解っている、初めに説明するがオメガの民を粛清するというのは建前なのだ」

ティアは自身の服の裾を握り覚悟を決めて彼の話を聞いた。
そして今現在アリステラ達オメガの民が酷い勘違いを自分達にしていることに顔色を青くしてはふと自身の女中仕事を手伝ってくれる仲間の顔を思い浮かべてはますます顔色を悪くさせるものだった。

◇◆◇

ジャスティスマンが帰ってきたぞ。という入口で門番をするミラージュマンからの連絡にティアは大慌てで客人を持て成すための用意をしていた
オメガ・ケンタウリの六鎗客に大魔王サタンと度重なる戦闘を終えたと思った途端に突如モン=サン=パルフェにやって来ると言い出したジャスティスマンのお陰で忙しいものだと慌てるも優秀な仲間のお陰でスムーズに事は進んでいた

「お茶良し、お菓子良し、医療キットも良し…」

最終チェックを済ませたティアは背後にいる超人に顔合わせをしては大丈夫だと彼に優しく声をかけて零式の扉を開けた
そこには正義超人やオメガ六槍客などが立ち並んでおりティアをみるなり顔見知りであったキン肉マンは「ティアちゃ〜ん、久しぶりじゃ〜」と笑顔で両手を振るため相変わらずの元気さに安心しつつも彼はすぐ様手で口元を覆い驚いた、それは彼だけではなくその場にいた客人全員でありオメガマン・アリステラとパイレートマンは思わず目を丸くした

「女神様と……どうしてそこに居るんだディクシア!!」

その言葉にティアは当然の事だと眉を下げ自分の後から入室した背後の超人を見た、それはまさにアリステラが死んだと思っていた双子の弟ディクシアであった。

「アリステラ…パイレートマンも久し振りだな」

申し訳なさそうな彼の言葉にティアは兎に角話の続きをするにあたって一度腰を掛けてお茶でも飲んで話をしようと告げた、時間が無いとしても対話をするには少しの休息も必要だと論せば彼ら全員口を噤み仕方ないと彼女とディクシアの手からそれぞれティーカップを受け取った
改めてティアは話をしなくてはならない。と小さな溜め息を誰にもバレぬ様に零してザ・マンの隣に経ち彼らに説明をした

「まず初めにアリステラ様は私に対して勘違いをしています」
「勘違い?それはどういうことなのですか女神様」
「女神様なんてやめてください、私は超人墓場の女中です、敬称も畏まった言葉遣いも結構です」
「しかし…いや、わかった」

ティアが入室する直前、ザ・マンが何故彼らを地球から追いやったのか話をしているのが聞こえていたティアはその途中の説明が抜けておりオメガの民は勘違いをしていることを告げた。

まずオメガの民がティアに対して"女神様"と呼び、彼ら一族の王であるアリステラが"花嫁"に迎える。という話はザ・マンへの悲願を成すことと同じであった
オメガの民にはザ・マンの話同様に紡がれてきた歴史があった、それはティアという女のことであった、かつて彼らは完璧始祖達の手で粛清をされた際に宗家である一部のものたちは突如現れた女に救われ導かれ地球から脱することが出来たのだという
彼女は彼らに地球から去ることを申し訳なく何度も謝罪をしつつ彼らがそれを許さないことを説明した、先祖であるオメガの王は彼女に何故自分たちを助けてくれるのかと問いかけた

『あなた方は本当に素晴らしい超人です、だからこそ脅威から逃れて生きて欲しいのです』
『ならばあなたも共に!!あなたは私たちの恩人ではないか』
『ダメなんです…私はあの方々の世話人です…彼らから離れることは出来ないのです』

悲しそうに呟いた彼女にオメガの王は彼女をあの脅威の元から奪い去ることは出来ず名だけを聞き宇宙に飛び立ったのだと
力のある存在に飼われる哀れな慈悲深き女神のような彼女を必ずやオメガが救い出し、そして花嫁に迎えることこそが彼ら一族の繁栄かつ宿願なのだという

「…というのは違いまして」

それら全てもザ・マンの計画であるのだと彼女は語った。
彼らはオメガの民から恨みを買われて仕方がなく、そして信頼を得ることは出来ないことを理解していた為無害のティアを利用し彼らの宗家だけでも逃したのだという、船や食料など彼らに必要なもの全てを用意してティアに案内させただけの事だと
まさかそのような事柄が間違ったように捉えられてるとは…とティアは思わず横にいる自身の主人を見ては苦笑した

「そう、なのか…分かった、だがディクシアは何故ここに?死んだはずでは」
「それについてはティア様が」

その言葉にティアはまたもや苦い表情を見せたのはザ・マン自身二人に苦労をかけてしまったからだと感じていた
ディクシアがオメガケンタウルス星団からの使者であることを理解した上でかの五王子戦に投じた結果彼は瀕死の重症を負った、完璧超人の考えには敗北は死であることを人間の身であるティアはよく思っておらず死んだと思われた彼を連れ帰り生きていることを確認した後に超人墓場にて彼にオーバーボディを着せ自身の一番の部下と称して傍に置いていたのだ

「今はもう話をしたからこうしてオーバーボディも脱いで、彼女と共に生活をしている…手紙を数日前に送ったんだがまさか入れ違いになってるとは思わず、悪かった」

ディクシアの謝罪にアリステラは彼を抱きしめただ生きているだけで良かった。と痛感した
此度の戦いでオメガの仲間たちに戦死者は出なかったものの一命を取り留めた程度の者も多く、弟を失い強く傷ついていたアリステラにとってそれがどのような結果であれど生きていてくれるだけで諸手を挙げて喜べるものでありその姿にティアとキン肉マンは思わず瞳を潤ませては互いに気恥しそうに笑みを浮かべた

「というわけで勘違いですから、私は何もしていません、ディクシアもこれでようやく本来の任務の事を出来ますしずっと手伝わせてごめんね」
「いやそれはいいんだ、ティアのお陰でオレは助かった」
「アリステラも騙していたようでごめんなさい、私はしがない普通の人間ですから使命とかそんな物で自分の大切な人生を降らないでください」

飲み干した彼らのティーカップを一つずつ受け取りティアはカートの中に乗せて片付けていく姿はこの場ではただの使用人でしかなかった
アリステラからカップを受け取り片そうとしたもののアリステラは突如としてティアの両手を優しく強く抱き締めみつめた、突然の行動にティアはなにか不躾な事をしてしまったかと驚いたのもつかの間、彼は弟のことやかつて自分たちの先祖を助けてくれたことを改めて感謝したあと告げた

「本当に感謝する、しかし言い伝えなどではなくオレは貴女に恋をした、是非オレの妻に来て欲しい!!」
「へ?」

ズイッ!と身を寄せて告げるアリステラに目を丸くしたティアは情けない声を上げた、今の話を聞いた上でもまだそういうのか?と驚くもののアリステラの考えには自分の立場やその人生で刻まれた使命ではなく一人の女性として彼女を特別にみていた。
弟を救い、自分たちの祖先を救い、そしてあまつも自分にまで気遣いをしてくれる慈悲深い彼女にアリステラが恋をしないわけが無いと思ったのはディクシアであった。

「貴女のような寛大で慈悲深く思慮的な女性を見た事は無い、オレはまだ未熟な男だが貴女を幸せにしたいんだティア」
「あの…えっと、ええっと、その…」
「勿論いきなり答えを出せとは言うつもりはない、星の再建が出来たあとじっくりと時間を重ね互いを知りたいと思っている」

あの…あの…そのぉ……とティアは突然大体的にアピールをする彼に対し顔に熱がこもるのが分かってしまう、普段超人といった筋骨隆々とした男達に囲まれているものの彼のように紳士的に異性としてのアプローチをする者などいないのだから当然だろう。
しかしながらアリステラにはそれ以上に強い殺気が複数箇所から刺さってきたことに気付き思わず見渡せばそれはザ・マンはおろかソルジャーも…ジャスティスマンも…さらにはキン肉マンまでもだった

「ええ〜い!!突然ティアちゃんを嫁になどやるものかい!彼女は私たち一族の母なんだ!」
「なに?結婚をしているのか」
「いっいえ、未婚です!」
「なら問題ないな」
「アリステラ…それ以上はザ・マンの視線が痛すぎる」

全くとんだ人を助けたかもしれないとティアが思う頃、またひとつ聞きなれない声がそこに響いた…

「我が運命を下等な超人共に渡せるわけがあるか」

その声は突如として現れた映像からであり、顔も見えぬその存在に彼らは驚いていたのもつかの間ザ・マンは彼の名を告げた

「ふむ、調和の神…お前もか」

その言葉にティアは真横に立つディクシアとキン肉マンの顔を見たあと、調和の神…と呟いては声を荒らげるのだった。
また大変そうな問題がやってきたと感じながら

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