十一人の会議
完璧超人始祖達の使命はとても大きく重要なものばかりだった
カピラリア7光線から生き延びた超人達の成長や今後の超人界についてまで地上にいる以上考えねばならぬ、まさに地上の天使たちなのだった
そんな彼らは近頃完璧の塔に設置してあるリングの傍の会議用の机を囲んでは難しい表情をしていた
指し棒を片手に今日のテーマについて改めてサイコマンは気難しい顔をする彼らに向けて告げる
「はい、皆さんその表情の意味は分かりますがちゃんと考えてください」
"完璧超人始祖の遺伝子を残す・また伴侶について"
と記載されたそれに思わず全員がうっ…と顔を顰めてしまうのは仕方の無い話である、優秀な力と頭脳を持つ彼らはザ・マンの力により不老不死となった身ではあるもののその個人の力は残すべきなのではないかと話が出た
それには彼らも深い同意をしており、その為について考えることとなったが神の力を持ち得ない彼らが残すとなればそれ即ち伴侶となるパートナーをみつけ愛し合うことであった
その考えを彼らは理解しているもあいわかった。と行動に出来ないのは自身にそれ相応のパートナーを見つけられないからだ
「ここにいる全員が優秀な雄なのに、何故誰一人パートナーを見つけられないのですか!可笑しいじゃありませんか、やる気はあるんですか」
「その発言はお前にも帰ってくるがいいのかよ」
「ニャガッ!!アビスマンさん痛いところを突きますね」
進行役を務めるサイコマンは本来人付き合いは得意なものでは無い、彼は選り好みが激しく自分が認めた存在には入れ込むタイプだが基本的に他者を毛嫌い傾向がある
アビスマンは人付き合いが得意なもののそもそも女性にはやし立てられることを嫌っていた、男同士汗水流して過ごす事に友情と喜びを感じるのだ
ここにいる十人の弟子達は確かに女には好かれる要素があるとザ・マンは彼らを見て感じた、それこそメスは本能的に力を持つオスに惹かれるのか本能なのだから。
しかしながらあまりにも彼らは拘りなどが強くさらに他人に興味が無かった、一件友好的に見えるペインマンでも「テハハ…あぁいう女達は苦手だ」という始末であり、それなりの知性や力を求める程であった
誰か一人でもパートナーを連れてきてくれるのならば進歩だと思うザ・マンの思考はもはや結婚を待つ父親のようである
「そもそも嘘ばかりの下等生物共が気に入らんのだ」
「下心ばかりでまっすぐとした目の女人が居ない」
ガンマンやシングマンの言葉に大して生物は等しくそういうものなのだと言いたいものの理想が高い彼らにはもはや希望も見いだせないのかとジャスティスマンとカラスマンをみつめるも彼らはもはや他人に興味など微塵も感じさせない態度であり、ザ・マンは頭を痛めつつ左右にいるゴールドマンとシルバーマンをみつめて発言を求めた
「そもそも私はそういうものに興味は無い、適任者なら弟だろう」
「兄さん僕に委ねないでよ…確かに悪い人達では無いのは事実ですが私とてそれなりに相手を選びますよ」
「ほぉ…シルバーよ、その相手になりうる相手はいるのか?」
希望を僅かに見いだした彼の発言にザ・マンが問いかければ彼は困ったような表情をした後に「すみません」と返事をした為小さく肩を窄めた
そんな時であった、長考する会議の中にふと食欲をそそる香りを感じ彼らは顔を上げれば見慣れた女がやってきた
「もうみんな難しい顔してどうしたの?そんなに今日の会議は難しいんだったら少しお茶でもして休憩しましょうよ、昨日ミラージュマンとフルーツ狩りしたお陰で今日のケーキは豪華なんだから」
そういって彼女はその場で新鮮なフルーツが溢れんばかりに乗せられたケーキを切り分けては一人ずつの席にお茶と共においては自分用の小さな椅子に腰かけて笑みを浮かべた
先程までの拮抗しつつも答えの出ない会議に全員が溜息を零したものの現れた彼女に胸が軽くなりそれぞれが目の前のものに疑いもなく口に含んだ
「モガッ、ティアこれ美味いな!」
「本当?状態がいいフルーツばっかりだったからよかった、あっネバーとモアも食べられるようにしてるからあげてね」
「カララいつも悪いな」
一人ずつしっかりと観察しては話しかけるティアという女は突如ここにやってきた人間の女だった、見知らぬ世界や場所で孤独になった彼女を保護したことはとても大きく今では手放せないほど始祖達の仲間の一人であり、誰もがみな彼女を信頼し互いを尊敬していた
「難しい顔をしてたけど…悪いお話だったの?」
「あぁいやそんなことは無いんだ、以前話してたパートナーについてのことだよ」
「それってもしかしていよいよ誰かパートナーを見つけたの!?」
シルバーマンに対して興奮したようなティアは以前からその根本の理由は隠されていたもののパートナーについての話を聞いていた為に喜んだ、自分以外にも彼らを支える同性が増えるかもしれない
それも彼らが認めた優秀なヒトなのだと。
しかしながら彼らは「いや…反対だ」と返事をした為彼女は残念だと言わんばかりに座り直してはケーキを口に運んだ
「こんなに素敵なみんなだから引く手数多なのになぁ、ちょっと口下手なところがあるからそのせいだったりして」
「ふむ、ティアからみてもやはり原因はあると?」
「原因というか恋愛ってお互いに合う合わないでしょう、だから見つけようって意気込むと見つからないのは当然かも、案外近くにあるから見えなかったりするかもだし」
「成程、参考になる言葉だがティアは恋愛経験があるのか」
ザ・マンの言葉に十人の弟子達は思わず固まり耳を傾けた、今この世界に来た以上彼女には恋人は当然居ないのは知っているものの以前の生活では普通の人間の暮らしであるのならば居てもおかしくは無いからだ
結婚の話を出てくるような年齢である彼女なのだから何かしら参考になるだろうかと考えたものの彼女は気恥しそうに俯いて
「えぇ、その…過去には居ましたね。」
と言った、その表情は普段見るものとは違う女の表情であり彼らは思わず身体を強ばらせた
「でもいい歳して恋愛も知らない方が珍しいし、私も上手くいかなかったから結婚とかはなかったよ、そういうのは本当に運命なんだと思う私や皆がザ・マンに出逢えた時のように」
その言葉に全員がザ・マンとの出会いを思い出しては納得した、まるで彼の傍で成長することがあの日の運命のようだったと感じられたからだ。
そんな話もそこそこにティアは空になった食器類をカートに入れてはあまり長くならないように。と告げて塔の中に戻ってしまい彼らは先程よりも柔らかくなった頭で先程の会議の話を続けようとした
しかしその会話はミラージュマンの一言により変わってしまうのだった
ガンマンとサイコマンがいつも通りにじゃれ合う中、それまで黙っていたミラージュマンは先程のティアを思い浮かべては手を挙げた
真面目な彼の挙手に静まった彼らは発言に耳を傾けた
「私はティアとなら、パートナーになりたいと思えるのだが、それも子を持ちたいと」
愛しているという言葉をするにあまりにも軽く感じたもののミラージュマンは自分の隣に自分の血を受け継いだ子を抱くティアを思い出しては妙にスッキリとした
彼もまた他の女性と接触を図ったものの自分の中の理想には当て嵌らず悩んでいたものの、それら全ての条件に一致する存在と考えた時にティア以外はいなかった
「自分の中の条件には彼女しか当てはまらないのだ」
「グロロ…なるほど、ティアか…確かに盲点だが納得は出来る、ティアとお前なら受け入れるやもしれぬな」
ザ・マンは自身の顎を撫でては思わず笑みがこぼれた、ティアという女は彼からしても始祖の伴侶となるにはこれ程充分な素質のある女はいなかった
しかしながらその発言を聞いて手を挙げたのは全員であり、その眼差しは何処か鋭いものであった
そして全員が口を揃えて言ったのである
ティアが許されるのならば自分も彼女を伴侶にしたい。
ティアは優秀な女だった、この世界で生き残るために自分の持ち知識能力を彼らのために使い、そして人間であり女であることを理解していた
普段はおおらかに意見を受け止める彼女でもいざという時は真っ向から違うと否定出来る強さも持ち合わせており弱いだけの女ではなかった
仲間となった彼女にも不老不死の能力を与えている以上は確かに彼らには最適なパートナーとなり得るだろうがあの娘はそれについてどう考えているのかと思えた
「まさかお前たちの意見が揃うことがあるとは」
「それ程ティアが優秀なのだろう」
「彼女が基本となっていたので他の女性だと満足しなかった、というのが僕らなのかもしれませんね」
両隣りの二人にそういわれては一度ティアに相談でもするかと考え会議をやめて稽古にしようと手を叩けば彼らは固まった身体をようやく解せると笑いながらリングに向かった
「サイコマン、まさかお前までとは」
「…案外嫌いじゃありませんからね、彼女のこと」
「グロロ…今晩話をしてみよう」
一番彼女を目の敵にしていると思っていたサイコマンさえ同じ意見だったのだと知ったザ・マンは笑みを浮かべつつリングに上がる弟子たちを眺めるのだった。
◇◆◇
「今日の会議は本当に難しい顔だったけど答えが出たみたいでよかった」
湯汲を終えて部屋に戻ったザ・マンはいつも通りベッドを整えるティアをみては苦笑した、こうして彼ら一人ずつの寝る場所まで整える彼女は完璧な女中であり非の打ち所もなかった
テーブルの上にはフルーツとドリンクが置いてあり「残り物だけどみんなにおすそ分けしてるから」と言われデザートとはありがたいと思いソファに腰掛け、ひと仕事を終えて帰ろうとする彼女を呼び止めた
「向かいに座ってくれるだろうか」
「?はい」
ローテーブルを挟んだ向かいの椅子に座ったティアは珍しいことに一体何事なのだろうかと不安を感じた
もしや彼らにパートナーができた以上自分は不要となり解雇通知なのだろうかと悪い考えが過ぎってしまうほどで、それは目の前の彼が難しい表情をしていたからだった、長い沈黙の末にティアは耐えきれずに声をあげようとしたその刹那
「ごめんなさい私ここを追い出されたら「彼奴らの中で誰か一人いいと思う者はいるか?」……はい?」
予想だにしなかった言葉に目を丸くして理解が出来ないと思っている間にザ・マンは一人ずつの長所を述べていく、パートナーにするならば全員優秀だがティアの好みや思考もある、またもしかしたら今始祖以外にいい相手がいる可能性も
口数多く話をする彼に目を丸くしたティアは「ちょっちょっちょっと待って?話の意図が全く読めない」と声を荒げれば彼は動きを止めてティアをみつめた
「ふむ、今日の会議についての内容は知っていたな?」
「えぇパートナーを見つけるって話でしょ、それに私となんの関係が」
「全員がティア、お前を迎えたいと」
その言葉にティアは鳩が豆鉄砲を食らったような表情をみせた、あの十人が?と考えてはそんなにも相手がいなくて追い込まれていたのかと感じては「私に…ってなるくらい追い詰められてるなら一旦考えるのやめたら?」と告げた、悠久の時を生きるのだからそのうち自然といいパートナーが出来るだろうと告げるも彼は納得しなかった
「私も彼らも真剣だ、その上でティアを迎えたいと思っているが誰かあの中に良い奴はいないか」
真剣な眼差しにこれは冗談でも追い詰められたから出た発言でもないのかとティアは感じては顔を俯かせた、十人それぞれを頭の中に思い浮かべては彼らはあまりにも魅力的であった
異性として意識はしないようにしていたものの、意識してみろと言われればそれは両手両足の指では足りないほど彼らに魅力があり、万が一にも自分が彼らのパートナー…と考えてしまえば熱にうかされてしまいそうな程だ。
「…みんな魅力的な人だから、私には分からない」
「そうか」
「力になれなくてごめんなさい、異性として見ないように努力してたけどそう言われると私はみんな素敵だから選べないし、優柔不断だと笑ってください」
深い謝罪をする彼女にザ・マンはこうした真面目なところがまた魅力であり、それ故に彼らにティアを娶らせたいものだった
肉体年齢としてもしっかりと条件に当てはまる彼女以上はもう居ないだろうと考え、これから先の超人界の未来を考えては席を立とうとするティアを止めた
「それだけ私の目に狂いはなかったということだ、一人を選ばなくていい、彼らのパートナーとなってくれないか」
「それはみんなに失礼じゃ」
「ない、彼らは納得するだろう、それ程お前は魅力的な存在だ…美しく気高く人間という未完成でありながらも完璧な存在だ」
「嬉しいけど、そんな…えっと」
「彼奴らが納得しなければそれまでのこと、納得した者はお前に顔を合わせに日毎夜に現れるだろう、そうさせよう」
それならいいだろう?という彼の言葉にそれ以上の反論も出来ずにいればティアは仕方なく頷いた、ほっと胸を撫で下ろしては答えは見えているのだと安心したザ・マンは彼女を見送ろうと肩に手を添えてこの話に同意してくれたことに感謝した
彼女もまたとんだ話だと思いながらも彼らならば…と思えた為笑みを浮かべた
「これで安心だ、是非彼らの優秀な遺伝子を受けて丈夫な赤子を産んでくれ」
「はい………はい?」
「ん?どうした驚いた顔をして」
「いや、あの…赤子って?」
知らないのか?と驚くザ・マンに存在もその生命がどう誕生するのかも知っているティアはそれも含めて告げれば彼は愉しそうに笑って彼女の背中を優しく叩いた
「伴侶なのだから当然だ、此度の会議は私達の子孫を残す為なのだからな、頼むぞティア」
「そ、それはその…彼らは」
「安心しなさい、週一にしておこう」
そういう話しじゃありませんよ!と叫ぶティアに安心して笑うザ・マンは彼女の背中を押して部屋から追い出した
ティアはこれはあのお方は分かっていたのだ、その上でハメてきたのだと気付いては思わずドアを叩き叫んだ後その場に蹲った
「そんな…そんなみんなとだなんて……」
絶対無理だよ…と呟いた泣き言は広い塔の中に溶け込むのだった。