ミラージュマン
目は口ほどに物を言う、そして目は心の窓ともいう
彼ら始祖からしてみれば殆どの生物は醜く未完成である、実際のところ始祖でさえもきっと未完成で、それ故にあの男はこの世に失望していることも理解していた
超人にも劣る人間という種族にそれを求める事はおかしな事ではあると理解している中でも彼らは"彼女"は完璧に等しいものだと自分たち同様に受け入れた、それはまたミラージュマンも同様だろう。
「また新しい鏡を購入したの?」
「あぁ拾式から教えられて気に入ったんだ」
また迷惑を掛けたか?とやってきた彼女に問いかけては「他の方に手伝ってもらったから大丈夫」と返事が来ることに多少の申し訳なさを感じつつも感謝した、超人墓場から出られないミラージュマンは毎度地上に買い出しに行く彼女に買い物を頼むが彼が頼んだ品は彼女が持ち帰るには遥かに厳しいものだと理解していた為他の者にも迷惑をかけたと告げる
「いいじゃない、貴方の唯一の趣味なんだから」
趣味…といわれてしまえば、そうなのかどうなのかと考えつつ返事をせずに彼はこの聖なる完璧の山-モン・サン・パルフェ-の入口の部屋となる場所に設置した鏡を見つめる
どれもこれもがただの鏡ではなく、美術館などに寄贈出来るほどのアンティーク品や高価なものばかりだ、ミラージュマンはいつからかその鏡を気に入っていた
人が作りあげたとされるモノを映すその道具に魅了されたのはいつからなのか彼は分からなかったが鏡に映る彼女を見つめては口にせずとも美しいと感じるのだ。
「こんな時間に出ていくのか」
「おはようございますミラージュマンさん、ええ皆さんの朝食の用意をしなくちゃなりませんから」
それはまだ遥か昔、完璧始祖も彼女も超人墓場に移る前であり、突如現れた彼女を慈悲深きあの男が受け入れ女中として迎えた頃、その頃からミラージュマンは門番としての生活をしておりまだ夜中とも言えそうな暗い朝に出てきた彼女に声をかけたのだ
「顔を洗いに行くんです」
行きますか?という彼女に水ならここにもあると告げたかったものの彼女はそれ以外のこともするために行くことを察して、女性一人では危険だからと彼は同行した
まだ出会ったばかりで互いに手探りに話をしている中で彼女は悪い人間ではないと感じ、比較的ミラージュマンは彼女を簡単に受け入れることが出来た、気難しい始祖達との生活にも負けじと過ごす彼女を見ていれば強い女であり男女の好意を抜きにミラージュマンは少なからず彼女に敬意を称していたのだ。
「この時間の川はとても冷たいから顔を洗うのにはとってもいいんです」
「私はずっと門番をしていたつもりだがいつの間に」
「抜け出すのは得意ですから」
よく父に怒られましたと笑う彼女に案外お転婆なのだと告げると気恥しそうな表情が浮かび、見た事のないその顔にミラージュマンは新鮮さを感じた
月明かりがまだ明るい中、獣の気配はすれどミラージュマンを感じてか本能的にその生き物たちは近付くことはなく、安心した道をいけると思ういう彼女にそれなら尚のこと声をかければよかったのにと彼は伝えた
「迷惑をあまりかけたくないんです、居候の身ですから」
「それは全員がそうだろう、彼に拾われ救われた身だ、だからこそ遠慮しなくていい」
少なくとも私たちは対等だと考えている。という想いをさらけ出けば彼女は安心したように微笑んだ、その時からきっとミラージュマンは彼女になにか惹かれるところを見出していたのだ
辿り着いた川は月明かりに反射してキラキラと輝いており彼はその自然を愛していた、小さな鳥の囀りも獣の強い殺気も全てが生だと感じ美しさを見出した
そんな中で彼女は川の傍に膝を着いて持っていたカゴを置いては川の中を見つめた、それは一瞬の出来事であったがミラージュマンはかつてない美しさをそこに感じたのだ、水面に反射した彼女、まるで生きているのか死んでいるのか分からないが動く生身の彼女の向かいの彼女、そこに彼は不思議な魅力を感じ惹かれた
水面は彼女が手を触れたことにより揺れてその形を乱したことからその幻想消えてしまう、それが少しだけ恋しいと感じてしまったのだ
「大丈夫?」
「あぁ平気だ、この時間の川は綺麗なんだと感じて」
「ええ空気も気持ちよくていいですよね」
あぁそうだな…とミラージュマンは返事をした、それ以来二人はいつもその時間に二人きりの川に行った、そして彼は水面に映る彼女に心を奪われた
「この間見つけて買っちゃったよ綺麗でしょう」
超人墓場に移り変わり全員が変わっていないようで変わった今の中でも彼女は何一つ変わらなかった、いや実の所は変わらないように必死に取り繕っているだけなのかもしれなかった
ろくに自分の買い物をしない彼女が珍しく上機嫌で自分のために買ったというその手鏡はシンプルであるがその煌びやかな見た目に彼女が惹かれることは理解出来ても、ミラージュマンはその鏡に映る彼女に惹かれた
「綺麗だ」
「ミラージュマン?」
「ナマエ、きみは綺麗だな」
きっとこの世の誰よりも心も体も美しいとミラージュマンは感じれば二人きりのその場所で静かに彼女の唇が触れた、照れくさそうに笑う彼女を愛おしいと思うのにそれでも彼女の手の中の鏡に映る彼女の方がもっとずっと美しいと感じられてしまったのだ。
そうして月日を重ねたミラージュマンはいつしか自分の部屋を鏡張りにでもするのかと言わんばかりに鏡を揃えては彼女を招いた、部屋に来る度に鏡に映される彼女は何も言わずに彼の愛を受け入れた
「いつの間にあそこに鏡を置いたの?」
「少し前に目覚めた時にあるといいと思った」
ベッドの中で互いに身を寄せ合う中で彼女は天井を見つめてそういった、いつの間にか設置されていた天井に貼り付けられた鏡は二人の全てを映すようであった
ナマエはベッドの左右前後そして上にも鏡があることに違和感を感じつつも自分を撫でる彼が愛してくれるのならばと思えた、ベッドから抜け出して衣類を着る彼女はミラージュマンに「あなたは鏡の中の私が好き?」と問いかければ彼は言葉を詰まらせた、嘘をつかないところは魅力的ではあるが多少なりとも傷ついてしまうと苦笑いをしては「もうこの部屋には来ない」と告げた
「結局みんな私のことを傀儡にしたがる」
その言葉はミラージュマンも理解出来ていた、彼女に求めるのは自分の理想であると始祖全員に言えることだったから
部屋を出る直前に彼女は自分の部屋ならいつでも来ていいと告げた為ミラージュマンは短い返事を告げて同意した。
それから数ヶ月互いの部屋を行き来することは無かったがミラージュマンは彼女への謝罪も込めてドアを叩いた、夜更けの静かな廊下でなんの返事もないために戻ろうと思えば手を引かれて部屋に招かれれば普段と変わらぬ彼女の部屋だとなっていたが違和感を感じる
そのままベッドに座らせた時、ミラージュマンは向かいに巨大な鏡があることに気付けば彼女は膝に跨りミラージュマンの髪を撫でた
「鏡の中の私を見てていいから、それでもあなたにだけは私をみててほしい」
泣きそうな彼女の声に本来ならば謝るべきなのかもしれなかった、それでなお彼は鏡の中の彼女に恋をして鏡に映った彼女を抱いた、一体何を愛していたのかなどもう彼には分からないけれどそれでも誰でもいい訳では無いということだけは分かっていたから、その寂しい背中を抱き締めて鏡の中の自分を見つめた、鏡の中の自分は生身の彼女を求めているようでそして生身の自分を憎んだように見つめているように見えては彼の心の鏡はいつ割れるのだろうかと不安になるのだった。
彼ら始祖からしてみれば殆どの生物は醜く未完成である、実際のところ始祖でさえもきっと未完成で、それ故にあの男はこの世に失望していることも理解していた
超人にも劣る人間という種族にそれを求める事はおかしな事ではあると理解している中でも彼らは"彼女"は完璧に等しいものだと自分たち同様に受け入れた、それはまたミラージュマンも同様だろう。
「また新しい鏡を購入したの?」
「あぁ拾式から教えられて気に入ったんだ」
また迷惑を掛けたか?とやってきた彼女に問いかけては「他の方に手伝ってもらったから大丈夫」と返事が来ることに多少の申し訳なさを感じつつも感謝した、超人墓場から出られないミラージュマンは毎度地上に買い出しに行く彼女に買い物を頼むが彼が頼んだ品は彼女が持ち帰るには遥かに厳しいものだと理解していた為他の者にも迷惑をかけたと告げる
「いいじゃない、貴方の唯一の趣味なんだから」
趣味…といわれてしまえば、そうなのかどうなのかと考えつつ返事をせずに彼はこの聖なる完璧の山-モン・サン・パルフェ-の入口の部屋となる場所に設置した鏡を見つめる
どれもこれもがただの鏡ではなく、美術館などに寄贈出来るほどのアンティーク品や高価なものばかりだ、ミラージュマンはいつからかその鏡を気に入っていた
人が作りあげたとされるモノを映すその道具に魅了されたのはいつからなのか彼は分からなかったが鏡に映る彼女を見つめては口にせずとも美しいと感じるのだ。
「こんな時間に出ていくのか」
「おはようございますミラージュマンさん、ええ皆さんの朝食の用意をしなくちゃなりませんから」
それはまだ遥か昔、完璧始祖も彼女も超人墓場に移る前であり、突如現れた彼女を慈悲深きあの男が受け入れ女中として迎えた頃、その頃からミラージュマンは門番としての生活をしておりまだ夜中とも言えそうな暗い朝に出てきた彼女に声をかけたのだ
「顔を洗いに行くんです」
行きますか?という彼女に水ならここにもあると告げたかったものの彼女はそれ以外のこともするために行くことを察して、女性一人では危険だからと彼は同行した
まだ出会ったばかりで互いに手探りに話をしている中で彼女は悪い人間ではないと感じ、比較的ミラージュマンは彼女を簡単に受け入れることが出来た、気難しい始祖達との生活にも負けじと過ごす彼女を見ていれば強い女であり男女の好意を抜きにミラージュマンは少なからず彼女に敬意を称していたのだ。
「この時間の川はとても冷たいから顔を洗うのにはとってもいいんです」
「私はずっと門番をしていたつもりだがいつの間に」
「抜け出すのは得意ですから」
よく父に怒られましたと笑う彼女に案外お転婆なのだと告げると気恥しそうな表情が浮かび、見た事のないその顔にミラージュマンは新鮮さを感じた
月明かりがまだ明るい中、獣の気配はすれどミラージュマンを感じてか本能的にその生き物たちは近付くことはなく、安心した道をいけると思ういう彼女にそれなら尚のこと声をかければよかったのにと彼は伝えた
「迷惑をあまりかけたくないんです、居候の身ですから」
「それは全員がそうだろう、彼に拾われ救われた身だ、だからこそ遠慮しなくていい」
少なくとも私たちは対等だと考えている。という想いをさらけ出けば彼女は安心したように微笑んだ、その時からきっとミラージュマンは彼女になにか惹かれるところを見出していたのだ
辿り着いた川は月明かりに反射してキラキラと輝いており彼はその自然を愛していた、小さな鳥の囀りも獣の強い殺気も全てが生だと感じ美しさを見出した
そんな中で彼女は川の傍に膝を着いて持っていたカゴを置いては川の中を見つめた、それは一瞬の出来事であったがミラージュマンはかつてない美しさをそこに感じたのだ、水面に反射した彼女、まるで生きているのか死んでいるのか分からないが動く生身の彼女の向かいの彼女、そこに彼は不思議な魅力を感じ惹かれた
水面は彼女が手を触れたことにより揺れてその形を乱したことからその幻想消えてしまう、それが少しだけ恋しいと感じてしまったのだ
「大丈夫?」
「あぁ平気だ、この時間の川は綺麗なんだと感じて」
「ええ空気も気持ちよくていいですよね」
あぁそうだな…とミラージュマンは返事をした、それ以来二人はいつもその時間に二人きりの川に行った、そして彼は水面に映る彼女に心を奪われた
「この間見つけて買っちゃったよ綺麗でしょう」
超人墓場に移り変わり全員が変わっていないようで変わった今の中でも彼女は何一つ変わらなかった、いや実の所は変わらないように必死に取り繕っているだけなのかもしれなかった
ろくに自分の買い物をしない彼女が珍しく上機嫌で自分のために買ったというその手鏡はシンプルであるがその煌びやかな見た目に彼女が惹かれることは理解出来ても、ミラージュマンはその鏡に映る彼女に惹かれた
「綺麗だ」
「ミラージュマン?」
「ナマエ、きみは綺麗だな」
きっとこの世の誰よりも心も体も美しいとミラージュマンは感じれば二人きりのその場所で静かに彼女の唇が触れた、照れくさそうに笑う彼女を愛おしいと思うのにそれでも彼女の手の中の鏡に映る彼女の方がもっとずっと美しいと感じられてしまったのだ。
そうして月日を重ねたミラージュマンはいつしか自分の部屋を鏡張りにでもするのかと言わんばかりに鏡を揃えては彼女を招いた、部屋に来る度に鏡に映される彼女は何も言わずに彼の愛を受け入れた
「いつの間にあそこに鏡を置いたの?」
「少し前に目覚めた時にあるといいと思った」
ベッドの中で互いに身を寄せ合う中で彼女は天井を見つめてそういった、いつの間にか設置されていた天井に貼り付けられた鏡は二人の全てを映すようであった
ナマエはベッドの左右前後そして上にも鏡があることに違和感を感じつつも自分を撫でる彼が愛してくれるのならばと思えた、ベッドから抜け出して衣類を着る彼女はミラージュマンに「あなたは鏡の中の私が好き?」と問いかければ彼は言葉を詰まらせた、嘘をつかないところは魅力的ではあるが多少なりとも傷ついてしまうと苦笑いをしては「もうこの部屋には来ない」と告げた
「結局みんな私のことを傀儡にしたがる」
その言葉はミラージュマンも理解出来ていた、彼女に求めるのは自分の理想であると始祖全員に言えることだったから
部屋を出る直前に彼女は自分の部屋ならいつでも来ていいと告げた為ミラージュマンは短い返事を告げて同意した。
それから数ヶ月互いの部屋を行き来することは無かったがミラージュマンは彼女への謝罪も込めてドアを叩いた、夜更けの静かな廊下でなんの返事もないために戻ろうと思えば手を引かれて部屋に招かれれば普段と変わらぬ彼女の部屋だとなっていたが違和感を感じる
そのままベッドに座らせた時、ミラージュマンは向かいに巨大な鏡があることに気付けば彼女は膝に跨りミラージュマンの髪を撫でた
「鏡の中の私を見てていいから、それでもあなたにだけは私をみててほしい」
泣きそうな彼女の声に本来ならば謝るべきなのかもしれなかった、それでなお彼は鏡の中の彼女に恋をして鏡に映った彼女を抱いた、一体何を愛していたのかなどもう彼には分からないけれどそれでも誰でもいい訳では無いということだけは分かっていたから、その寂しい背中を抱き締めて鏡の中の自分を見つめた、鏡の中の自分は生身の彼女を求めているようでそして生身の自分を憎んだように見つめているように見えては彼の心の鏡はいつ割れるのだろうかと不安になるのだった。