シルバーマン

歯列をなぞり、舌を絡め、唾液を啜る。
喉を液体が伝っていく感覚に、目を細める。
温かなそれがもっと欲しくて、彼女の口内を掻き回す。
ふと、胸に添えられた彼女の手に押し返すような力が加えられた。
それを合図に、ゆっくりと体を起こして唇を離す。
銀色の糸がぷつりと途切れ、お互いの顔がはっきり見える所で静止する。
額を伝う汗、涙で潤んだ瞳、飲み込めきれなかった唾液が伝う顎に視線が釘付けになる。
汗、涙、唾液……それを見ているだけで下腹部に熱がこもる。
いつからか、彼女の涙や汗を流す姿に興奮するようになった。
まろい頬を滑り落ちる涙に、項を流れ落ちる汗。
見る度に生唾を飲み込み、目を逸らした。
自分の抱える歪な欲に彼女を晒すのは嫌だった。
だから誤魔化してどうにか取り繕っていた。
しかし、物陰に隠れて泣いている彼女に会った時それは決定的なものになった。
座り込んで静かに流れる涙を拭い、慰めの言葉をかけた。
そこで終わっていれば良かったのに、私は衝動を抑える事ができなかった。
指先に残る彼女の涙を口に含んでしまった。
仄かにしょっぱさのある涙が舌に触れ、じわりと心の奥底が満たされるような感覚があった。
その瞬間、衝動は彼女の体液を摂取したいという欲望に変わった。
そして、彼女の体液だけじゃなく彼女自身を手に入れたくなった。
隠れて悲しみに暮れる彼女を囲って、守ってやりたくなった。
そして、私が抱える欲も含めた全てを受け入れてほしくなった。
だから少し強引な手も使ったが、恋人という立場を勝ち取ったのだ。
純粋ではない、けれども何よりも深い愛であるのは確かだ。
それから幾度となく体を重ね、彼女の体液を貪った。その度に満たされながらも、もっと欲しいと貪欲になった。
最初は何とか自制していたが、最近は歯止めが効かなくなってきた。ただの口付けでも彼女の意識が飛かけるまでしてしまう。
そんな私の思いを知らないまま、目の前の彼女は健気に私を受け入れてくれている。
その事実にほの暗い歓喜を覚える。
だからまた、際限なく求めて貪って全てを味わい尽くしたくなる。
このまま、このどうしようもなく歪んでしまった愛を受け止めてほしい。
「愛している」
(君自身や君の体液を私だけのものにしたくて堪らないほどに……)
目尻から流れ出る涙を吸い取る。ふにゃりと笑った彼女に愛おしさが溢れる。
首に回された手に誘われるまま、口付けを再開する。
下半身で燻る熱も彼女に迎え入れられるまで、あと少し。

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