ある朝目覚めたホランギことキム・ホンジンは酷い気分だった
それは自分のズボンの中の粘着質な汚れや肉体の疲労感もだが脳にこびり付いて離れない映像からだった。
そんな気分になる前夜、コルタックの数名で近くのパブに飲みに行こうといい行った、その中には彼のことをよく慕っている同じアジア系の女性であるナマエもいた。
ビールにウイスキーにと飲みつつもそれなりに酒には慣れていたホランギは女を引っ掛けることも小さな賭け事をすることも無く大人しく帰っていた、他の仲間が女を引っ掛けていてもホランギができない理由は彼が誘った友人であるナマエがいたからだ、彼女はいつもほろ酔い状態になりがちである為、念の為に紳士的な行動として彼は送ってやった。
特に女が欲しいと思うこともなかったし、どうせ明日も朝から任務だからと適当に話をして帰っては兵舎の彼女の部屋まで送ってやればドアに持たれた彼女は「ねぇホランギ」と呼んだ
「どうした?気持ち悪いか?」
「ううん、いつもありがとう、ホランギがいてくれて私いつも楽しい」
「…そうか、また飲みに連れてってやるよ」
彼女はホランギよりも従軍経験が長かった、しかしながら幼く女である彼女は人当たりもよく周りの軍の人間たちは意外にも彼女を悪い道には進めたくないと考え意見が共通したようでまともな生活を送っていた。
そんな中でやってきたコルタックは軍とは違う上に英語も得意では無い彼女にとって不安要素しかない、そこに居た同じアジア人であるホランギの存在を知った彼女は懐くものだからそれは悪い気はしなかっただろう。
下心はあったものの一瞬にして消えうせた彼にとってナマエは"妹"のようだった、いつでもどこでも彼を見かければ手を挙げて駆け寄ってくる姿なんて見てしまえば全員が胸を温めるくらいで、自他ともに二人は兄妹のようだったはずだ
「だっていうのに…」
ベッドから起き上がり呟いたホランギの頭の中には夢で見た映像が何度も流れていた、それは彼の今いるベッドの中で乱れた彼女の映像だった
見たことの無い服の下を暴いて、まるで恋人のように優しく身体中にキスをした
『恥ずかしいよホンジン』
知らないはずの彼女の身体をみては、そんなことは無いとクサイセリフを吐いて繋がり合うと背中に爪が立てられ聞いた事のない高い声が上がる、その声が恥ずかしくて抑えようとする彼女を押さえ付けて奥に穿って
「やめろやめろ、考えるなバカ」
鮮明な映像に思わずホランギは自分の頬を打っては兎に角着替えて服を洗濯するかと丁度溜まった洗濯カゴの中身を見つつ彼はスウェットと汚れた下着を下ろした、べっとりとした白濁の液体はまだ新鮮で一体彼は自分がどれだけ飢えてるんだと思いつつふと視線を向けた自分のまたぐらのモノをみては先程の映像に思いを馳せたせいか熱を持ち出しており「このクソ野郎!」と悪態をついては慌てて着替えたのだ
「おはようホランギ、朝から洗濯?珍しいこともあるんだね」
「よ、よぉナマエ、お前こそ洗濯なんて珍しいな」
「流石に一週間放置だからね」
仕事は昼からというのもありゆっくりと人のいないであろうと思って兵舎の洗濯室に来たホランギは洗濯物を入れて回し始めて直ぐに隣にやってきた件の彼女、ナマエに思わず動揺してしまう
彼女は気にした様子もなくカゴの中の洗濯物を洗濯機に入れて電源を入れようとしたがホランギは「おい忘れてるぞ」と思わずカゴの中の衣類を手に取ってはそれが彼女の下着だと気付いて思わずサングラスの下で視線をおもむろに外した
「本当だ、ありがとう…ってどうしたの?なんかそっちにある?」
「なんもねぇよ、それより待ってる間に飯食べるか」
「いいね、今日のモーニングはオムレツだってアクセルが言ってた」
「たまには朝から麺とか食いたいよな」
辛いやつがいいね。と笑う彼女にホランギは適当に返しつつも内心は心臓がドギマギしていた
「(小花柄の白ピンクってガキ臭いな)」
彼女の先程の下着について考えていたからだ
思わぬ考えに彼は堪らずに壁を殴り付ければ痛みが左腕から脳に響き声にならない声を漏らした、たかだか夢のことに何を動揺しているのかと自分に言い聞かせてもホランギの頭の中は妖艶な女の顔をした彼女が存在しており、それが顔を覗かせては彼はどうしようも無い感情に支配されてしまう。
「ねぇ大丈夫?突然壁殴ってどうしたの」
「あぁいや、虫がいたから潰そうと思ったけど逃げられた」
「おっちょこちょいだなぁ、凄い勢いだけど怪我してない?」
ふと意識を戻せば彼女がホランギの左手を取り赤くなったその手をじっくりと眺めた、伏せられ長いまつ毛に女性特有の柔らかな頬に大きな瞳、触れたら心地よさそうな唇に凹凸が程よくある肉体
「ホランギ?」
「平気だ、悪ぃけど先行っててくれ部屋に忘れもんしたから取ってくる」
これ以上はダメだとホランギは彼女から慌てて距離を取れば不思議な顔をするものの彼女は納得したようで軽い挨拶をしていってしまう、触れられた手の温もりは未だに残っており彼はそれを眺めては本当におかしなことが起きたものだと感じた
彼女に対しては恋愛ではなく性愛としての下世話なものを向けてるだけだろうとさえ考える度に自分がまともな人間でなくても、どうしようもないクズだとは考える
実際彼が過去に遊んできた女たちはナマエとは正反対で派手な遊びをするタイプで男にも慣れていたがナマエは男どころか人間というのも理解しているか怪しい世間知らずの軍人だ
そんな女に対して今から?と考えるホランギは一日の業務を終えては早々にベッドに横たわり目を閉じた、もちろん寝る前に仲間に渡されていたグラビア雑誌をこれでもかと言うほど眺めた後に
しかし夢に出てくるのはグラビア雑誌に載っていたセクシーなブロンド女ではなかった、手足が自分よりも長そうな白人女でもなく、やはりホランギの知る彼女がホランギを押し倒してシャツを脱ぐ
「ナマエダメだ、やめろっ」
「私じゃ下手くそだから嫌?」
昨日よりずっと鮮明な夢を見せるなとホランギは思った、自分の上に乗って支給品のスポーツブラをつけた彼女は窮屈そうにしており、脱がせば溢れたそれが彼の肌を撫でてゆっくりと身体が下に降りてホランギのズボンの上に顔を寄せる姿は子犬のようだった
「私頑張るから…おねがい…」
「あぁクソ」
断れるわけが無いだろうが!とホランギが叫ぶと同時にベッドから転げ落ちた、起きるにはまだ三時間も早かったもののホランギは下半身を見つめては深いため息をついた、また洗濯が必要になったからが。
あぁ畜生と連続して起きた出来事に彼は起き上がり溜まっていないのに洗濯をしに行くのも面倒だと適当に脱いで手洗いしてカゴに入れておこうかと思った矢先、部屋がノックされ彼は相手も気にせずにドアを開ければそこにはナマエがいた
「おはようホランギ、今起きたの?遅刻するよ」
「おっおう、悪い用意するから先行っててくれ」
「別に部屋で待ってるからいいよ」
漫画読みたかったし。と笑う彼女にそればかりは困ると慌てふためけば彼女は目を丸くして少し考え込んでから「女の子連れ込んだの?」といった、兵舎内においてコルタック内の人間なら男女問わず個人の部屋に招くことは禁止されてはいない、その為彼女も仲間達が度々男女で部屋に行くことを見ていた為ホランギもなのかと若干思いつつも悟ったような表情をした
「あっ、あぁそうだ、だから先行っててくれ」
「……わかった」
「それじゃまた後でな」
言い訳がましいか?と思いつつも少しだけ寂しそうな顔をする彼女からしてみれば二人で朝食を取ってミーティングに行くことは日課のようなものであり、それを崩されたのが寂しかったのだろうと感じつつも閉まったドアにホランギはため息をついた、下着の中の不快な感覚に溜息をつきつつシャワーを浴びて下着を替えたホランギは自分の馬鹿な身体に嫌気を指した。
「お疲れ様」
「おつかれ、今日もサポート助かったぜ」
「ううん、ホランギの情報のおかげだよ」
あれからも彼女を意識することは多々あった、例えば任務を終えて声をかけてきた彼女のシャンプーの香りのひとつもそうだ。
任務後のシャワールームに備え付けのシャンプーは男女共に同じだと言うのに彼女からは心地よい香りがしていたし、ふわりと揺れる髪には目を奪われてしまいマスクとサングラスをしていることはホランギにとって救いとなっている。
「どうしたんだよその服、胸元が開きすぎじゃないか?
「カリストに借りたの、たまには普通の服を着なさいって」
「ふぅん」
金曜日の近所のパブにいけば仲間と飲んでいる彼女は普段の服装と違うことに仲間たちは馬子にも衣装やら、娘に新しい服を与えた時のようにかわいいと賛美していたがホランギは苦笑いをした。
周りがどれだけ彼女を仲間だと思っていても、もう今の彼にとってナマエは異性で肉欲を掻き立てられる存在であるのだから。
しかしその変化に対してナマエはホランギに対して不満を抱えるのは当然の事だった、自分は何かをしたのかどうなのかとビールを片手に数十メートル先にいる彼をみつめては近頃の様子のおかしさからしてもしや…とひとつの考えをしていた。
その日の帰り道、ホランギはいつも通りほろ酔い状態のナマエを連れ帰ってやっていた、彼女は夜風を感じつつもいつものようには話が出来ていなかった、互いに静かに夜道を歩く中考えることは違っている。
どう声をかけるべきかとホランギはどこか静かな彼女に対して考えている頃、彼女が「ホランギ」と声を掛けた
「なんだ?」
水でも飲むか?と近くに見えたコンビニをみてみたが彼女は足を止めてしまい、珍しくそんなに気分が悪いのかと傍に寄って背中でもさすろうかと手を伸ばした時、それは彼女の言葉で止められてしまう。
「彼女出来た?」
「は?」
意味がわからない。とホランギは目を丸くして彼女を見つめたが本人は至って真面目にホランギの様子がおかしいという旨を伝える
以前であれば二人で過ごすことは多く、互いの部屋にも行き来していたが最近はめっきりそれを無くしているという言葉に思い当たることはホランギが強く彼女を異性としてみてしまっている故であるが答えは伝えれなかった。
「別に彼女がいていいんだけど、ほらそうすると私邪魔になるでしょ?下手な誤解して喧嘩されたりとかは申し訳ないし」
男女の友情成立派と不成立派がいる中でナマエは男女の友情は成立派だとしてもホランギのパートナーは分からないし。と身振り手振りで必死に伝えてくれることに彼は状況が飲み込めずにいたが少ししてから意味を理解する。
「そんな相手いねぇよ」
「でも最近素っ気ないから、私なにかしちゃった?」
眉を下げて暗い表情になる彼女にホランギは申し訳なさを感じた。
胸の内を伝えられなかったとしてもあからさまな言動は彼女を傷つけているのは現実問題であり、どう声をかけるかと悩んでは頭を搔いては「あ〜」と悩ましく声を出した。
「別にナマエが何かしたわけじゃないけど、色々考え事があったんだよ、心配させて悪かった」
「本当に私のせいじゃない?」
「当たり前だろ」
「…そっか、よかった」
よかった。と深く安心したように呟く彼女の表情をみてしまえばホランギは何故自分が彼女にそうした想いを抱くのかを理解してしまう。
あの夢を見なければ彼女をおもむろに意識しなかったかもしれないが、実際のところ彼女を兄妹のように思っていると言い聞かせているだけで惚れているのだと痛感していた
安心して微笑んだ彼女の柔らかな笑顔も自分の隣で歩く姿も、全てが特別だと感じるのは友人としてではなく異性として、好意を持った相手としてだと気付く彼は今更気付いた自分の気持ちに苦笑いをしてしまう。
彼の言葉を聞き足取りをしっかりとさせて歩き出した彼女にホランギは安心し兵舎に向けて帰って行った
静かな夜更けの兵舎の廊下を歩く二人は普段と変わらぬ態度で談笑を続けており、ホランギは自分の部屋の前で足を止めて、彼女に今日は夜更けまで部屋で遊ぶか?と声をかければ彼女は笑顔をやめて眉を八の字に下げて「やめておく」という、今日は下手な話もしたし夜も遅すぎるため当然かと思いつつ「じゃあまた明日な」と普段通りに告げようとしたが彼女は言葉を続けた。
「ホランギのこと好きだから」
真っ直ぐと告げられた言葉に上手く意味を飲み込めずに彼はサングラスの下で目を丸くして彼女を見つめたが、彼女は照れ臭そうに視線を逸らしてドアに置いていたホランギの手に自分の手を重ねた。
「だから友達として行くのは今日はダメかも」
そうじゃないなら部屋に入りたい。という彼女の眼差しは夢で見た時の女の眼差しであった、艶っぽく熱があり男を求めているその瞳にごくりと唾を飲み込んだホランギはゆっくりとドアを開ける、まさか夢の出来事が全て現実に起こることになるとは思いもよらなかった彼は翌朝また悪い夢を見たと思い起きては、自分の腕の中に眠る彼女を見て盛大に驚くことになるとはその時は思いもよらないことだっただろう。
2024.04.12
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