ふとチャイは目覚めた時、あぁここが自分のセーフハウス-家-であるというのを目覚めてから一分ほどしなければ理解しないのはもう何年目か。
コルタックで与えられている兵舎の方がよっぽど生活感があると感じるほどセーフハウスには何も無く、唯一家らしい要素があるのはかつて恋人であるジモが与えてくれた棚だった、深い翠色の棚は何度見ても恋をするようにうっとりと眺めてしまうほど美しく、それを与えてくれた相手を思うと尚のこと喜びに胸が満ち溢れて朝から頬が緩む。

しかしながらその棚は質素な部屋に一人悲しく佇んでおり仲間の一人もいないのかと言いたげである。

スマホには数件の通知が来ており、そのうちの一つは彼女が浮かれてやまなくなる相手、恋人のウォン・ズーチャンであったが彼女は恋人となった今も彼を"ジモ"と呼び、彼もまた彼女をチャイと呼ぶのは慣れ親しんでしまったものだからだろう。

『おはよう、再来週任務の区切りが着きそうだからもし予定が合うなら一日でもいいから会いたい』

互いに多忙かつ普通の人間とは異なる生活をしていた、彼女は慌てて電話をしては再来週の仕事を変わるように伝えた、連絡先の相手は寝起きであったようで彼女の言葉を聞くなり、あの守銭奴のチャイが?と思ったもののその声の明るさから彼女が恋人との初めてのデートだと理解しては二つ返事で了承をした。

「それで何をするのがいいと思う」
『なにってなんだよ、俺はお前にディズニーランドにでも行けっていえばいいのか?』
「なにそれ恋人ってそういうのいくの?」
『だから俺に聞くなよ』

電話の相手である彼女の親友であるホランギはどうして毎度自分に問い合わせてくるんだかと呆れつつ兵舎の自分の部屋の中でタバコに火を付けた、女をデートに誘うことがあってもどこに連れていくかなど考えることなど滅多にない彼にとってチャイの悩みは理解が出来ず適当にデートスポットや食事やショッピングなどを提案してみては彼女はなんとも納得のいかない様子であり、答えのない話をいつまでもする程暇じゃないぞとホランギが思う頃、彼女は部屋を見渡した。

ほとんど借りた時のままの部屋は何処か薄暗くて不気味で季節を問わずどこか寒い寂しい気持ちにさせるものであった、その中にひとつの光があるとするならば彼に渡された棚であり「私の部屋質素なんだよね」と呟けば通話の相手は目的が決まったようでよかった。と一言だけ告げて通話を切るものだから薄情な男め。と彼女は悪態をつくもののなんだかんだと話を最後まで聞いてくれる彼の優しさには感謝した、親友として彼以上の存在はいないだろう。

「それで家具とかを見に行きたいってことか」
「そうなの、こういうの一人じゃ絶対見ないし、休みの日だっていうのに付き合わせてごめんね」
「チャイと一緒に過ごせるならどんな理由でも嬉しいからいいさ」

ジモは車を走らせてはショッピングモール街に向けて走っていた、先日のデートの誘いに二つ返事を貰った彼は浮き足立っていたことを仲間に悟られデートの約束がバレたことはよかったが、何処に行くか何も考えていない彼に対して有り得ないと口々に避難の声が飛び交い、数年間住んでいても未だに詳しくないのだから仕方が無いと開き直る彼が本屋で勇気を出して買った複数冊のデート雑誌は結果的に役目を果たすことはなく彼女との買い物デートへと変わった。

しかしながら二人は改めて恋人という関係になるとどうしたものか以前よりぎこちなかった、顔を合わせた途端に相手を見ては顔を背けてしまう程相手が眩くみえてしまい以前の振る舞い方について必死に考えていたが答えはすぐには見つからなかった。

慣れた手つきで車を運転するジモにチャイはその筋の浮いた腕やシャツから見える筋肉に眩しい太陽の光を避けるために着けたサングラス姿など全てがキラキラと輝いて、チープな言葉であるが格好良いと彼に対して感じる頃、それはまたジモも同じでかつての火傷の痕が残る彼女が今日の日の為にと着てきたシンプルなシャツ型のワンピースから覗く手足や薄いメイクなどから普段とは違うデートなのだと意識せざるを得なかった。

「それで模様替えったって何を買うんだ」
「今のベッドは買い替えたいし、椅子入るのとテレビは一応いるし」
「えらく本格的に変えるんだな、風水でも気にしてる?それともただの気の変わりようか?」

カーペットやカーテンも買わなきゃならないという彼女にそういえばあの家は本当に何も無かったのだったとジモは思い出して苦笑いをするものの彼女は一年の8割程は兵舎で過ごしているため必要ないのではないのかとジモが思うのは自分も借りている家は休暇の時に一人になりたい時に帰る程度であるため、大抵埃を被って帰る度に大掃除から入らなければならなくなるからだった。

隣を歩いていた彼女はジモの言葉に少しだけ照れくさそうな表情を見せては、今後はジモを家に呼びたいからだと言った。
部屋に呼ぶとしても娯楽もなければ生活感もなく、ベットのひとつも存在するだけ置物と化してしまっていれば意味は無い、ジモの為にそうしたいという彼女に彼は背中がこそばゆくなる感覚を味わいながら彼女の手を取った。

「それなら二人で過ごしやすいように考えなきゃだな」
「うん、必要そうなものとか教えて欲しいな」
「ところで予算は」
「一応キャッシュでこれだけ」

そういった彼女はカバンの中身を見せた途端にジモは慌てて彼女のカバンを閉じては深く中身が見えないように片した、そして何も分からなさそうな彼女に家でも買うつもりなのかと問いかければ、彼女は分からないため取り敢えずネットで調べた金額を用意したというもののそれは家を買う金額だとジモは顔を青白くさせては今日はなんとしても気を抜かないようにしなければならないと深く考えて彼女のカバンを持つ手を握ってやり歩幅を合わせた。

全く彼女の世間知らずさに怯えながら。

あっという間の時間を過ごしてはジモはこれで十分じゃないのかと一日を思い返しつつ寝具を眺めていた、そこまで広くない部屋に奥にはダブルでもそれなりに大きいサイズであると思いつつも彼女は展示のベッドに仰向けに転がっては気持ちがいいと笑った。

「ほらジモくんも」
「展示品だってのに⋯うん、いいなこれ」
「でしょ?大きさもいいしマットレスはふかふかだし」

転がって天井を見つめてはまるでジモは同棲を目前にして家具を選ぶ恋人のようないじらしさを感じられた、実際見に来ている客は家族や恋人ばかりでそこにはそれぞれのストーリーが感じられ、ジモは彼女に顔を向ければ心地よさそうに笑う彼女と目が合い互いに繋いだ手をより一層強めた頃、微笑ましく眺めていた店員が二人に声を掛けたものだから慌てて立ち上がり彼女は二人で寝るのに丁度いいサイズ感のベッドを一式探していると告げれば買う気で来ていることも察しているようでアジア人のカップルであれどスムーズな案内を受けた。

ジモにはないセンスを持つチャイの購入品を思い出せばそれはまさに色とりどりで何処か現実世界から離れたような色合いだった、ジモは自分の部屋を思い浮かべてはかつて部屋に来た知人にモデルルームみたいだ。と言われたことを思い出すと同時に彼女の部屋は映画のセットのように少し非現実的な色合いとセンスであり、彼女のセンスがいいことを知ればまだ知らぬ彼女がいくつもあるのだと実感してはもの寂しげに感じた。

しかしながらジモはチャイが決済を済ましている間に一人店内を見回っては目に付いた一つのマットに目を奪われてはくすりと笑って近くにいた店員に声をかけた、きっと彼女に似合うと思う彼のセンスもいいことを彼はまだ知らない。

「どうしたのその荷物」
「ン?あぁこれはチャイに、俺から新居祝い」
「引越しな訳じゃないのに悪いなぁ」

会計を終えて戻ってきたチャイは待っていてくれたジモをみるなり彼が大きなレジ袋を片手に待っていた姿を見ては驚いたものの、彼はそれを彼女のために買ったのだといえば遠慮なく手に取り広げたいと思うものの店内では悪いかと一度外に出て広がれば小さなフロアマットに彼女は目を丸くしては直ぐにジモが想像した通りの反応を浮かべた。

黄色い生地に白いデイジーの花が大きく描かれたマットは彼女が買い物していた傾向から見ても合わなくはないと感じたもので、それを手にして笑顔になる彼女が見れたら、それだけで彼にとって買った以上の価値があるというものだがその価値は十分に発揮されており、彼女は大切にその荷物を手にしてはジモに向けて感謝の言葉を告げた。
それだけで彼は全てが満たされ、気付けば外は暗くなっており夕食でも食べて帰るかと伝えれば彼女は何処か何かを言いたい表情をしており、ジモは何を言いたいか理解していた。

「朝まで居たら迷惑になるか?」

そんなはずがないと分かっていてもずるい質問をしてしまうのは逃げ道を作るためであり、彼の言葉に彼女の手がジモの手を取れば二人は何も言えずに車へと向かった、彼女の家に行くのは何度目かと考えつつも細い道を通りアパートをあがり小さな背中を見つめて慣れた手つきで開けたドアにジモは案内されるがまま入ればやはり家の中は質素なものだった。

「荷物は全部まとめて明日の昼以降に届けてもらうことにしたから今日はまだ寂しいけど」
「それはいいけどベッド入るのか?」
「窓から解体したやつ入れてもらって立ててもらうからいいよ」
「言えば俺が手伝ったのに」
「そしたら一週間くらいはここにいてもらわなきゃ」

冗談をいう彼女にそれも悪くないとジモは買ってきた飲み物などを冷蔵庫の中に片付けてやれば彼女は買ってきたばかりの唯一持ち帰ってきた先程の花柄のマットをベッドの足元に敷いてはそれをベッドの上から嬉しそうに眺めていた。

まるで宝物を見るように嬉しそうに眺める彼女にジモはミネラルウォーターを片手に共になんてことのないその花柄のマットを見つめた、質素な部屋を彩る二つのアイテムの目の前の愛した人を見つめてはチャイはベッドの上で膝をついて立ち上がりジモの襟首を掴み手繰り寄せては静かに唇を重ねた。

その行動に彼もまた静かに腰を屈めベッドに乗り込み彼女の口付けを受け取った、何度も小さなリップ音を立てて口付ける二人の子供のつたないじゃれあいのようなキスでさえもいつぶりだったかと思う程に久方振りで話す時間は僅かにあれど触れ合うことや確かめ合うことは出来ず、互いに次に会う時にはドッグタグだけかもしれない事を考えなくはなかった。

だからこそ互いに触れたいと願うのは本能であり必然的なものである。
次第にジモは彼女の上に跨り互いに溶けそうなほど熱い眼差しを向け合えばまるで火花が散るようにもう一度激しく唇に噛み付いて互いにまるで動物がマウントを取り合うように相手の頭を掴みより深く一つになるかのようにキスをした。
乱れた呼吸が部屋の中に僅かに広がり、薄く開いたジモの唇に舌を差し込んだ彼女は彼の薄い唇がいつだって好きでたまらなかった、逃げようとするその舌を追いかけて甘く噛んで挑発すればやり返すように甘く噛まれ、より一層彼が掴む髪が乱された。

「電気は?」
「好きにして」

いつだって思いやりがあるのだとあの日の夜のように感じるとジモは電気を消さずに自身のシャツを脱いで彼女のワンピースのボタンに手をかけた、しかしながら彼の指先程のサイズしかない釦を外すことに苦戦する彼の眉が次第や眉間のシワが険しくなる事に彼女はじっくり見つめては頬が緩まってしまう。
二つ、三つと外す彼は次第に現れる彼女の素肌に心臓が騒がしいほど音を立ててあの日の彼女を思い出しては焦りそうになるが自分のために用意してくれた彼女を乱すことはしたくなかった。

そうしたことが全て顔に出る彼を見つめるとチャイの心臓の音がいつ彼に聞かれてるか怖くてたまらなくなる、嬉しくて恥ずかしくて心地よい彼の態度はいつもチャイをどこか別の世界に連れ出してくれるほどに甘い愛を与えてくれる。
彼の気持ちを素直に受け取り、明確な関係にて感じる彼女はその身かいつか羞恥に飲まれて消えてしまうのではないかと感じるほどであり、四つ目の釦に指を掛ける彼にチャイは自分から手をかけてボタンをひとつずつ外していった。

「そんなに焦らされたら朝になっちゃう」
「意外と向かいから外すのは難しかったんだ」

焦らされたのは自分だと言いたげな彼にチャイは負けたと言わんばかりワンピースの釦を外し終えてはジモの手を肩に導く、彼女の素肌に触れるだけで理性が薄れて求めてしまうジモは小さな深呼吸をして肩から彼女の衣類を落とせば薄いスリップが現れ彼女の躯を未だに隠してしまう。
まるで厳重なラッピングであると待たされるジモは耐えきれずに彼女の首筋に噛み付いて甘く唇を這わせて彼女のスリップと下着の肩紐に歯を立てて下ろして欲しいと強請るようであった。

「ホックは私が外した方がいい?」
「ダサい姿を見たくなければ」
「私はそういう姿の方がみたいかも」
「意地悪はやめてくれ」

耳が熱くなるジモはこれ以上ダサい姿はと素直に降参すれば彼女は背を持ち上げて腕を潜ませるとスリップが外した下着と共に浮き上がる。
ジモの手がスリップの裾から手を入れて彼女の足から腰を撫で、腰から胸へと伸びて擽るように指先でひとなでした後に衣類を外してしまう。

「かわいい下着だったのに」
「かわいかったけどそれ以上リードで繋ぐのはやめてくれよ」
「だって"待て"が上手いから」
「そっちこそ"待て"は上手いだろ」

それこそ命じられれば何時間だって待つことを知っていたジモがからかえば生意気だと言わんばかり彼女が睨みつけることに悪かったといいつつも彼の手は彼女の膨らみに手をかけた、柔らかくて心地よい男にはない柔らかみは大きくも小さくもなく程よいもので形を変えて摘めば主張する突起に舌を這わせて見せつけて舐めた彼はそのまま甘噛みをした。

「んっ⋯」

僅かに彼女の躯が揺れてジモは次第に夢中になって彼女の谷間に顔を埋めて乳房を指先でこねくり回して視線を巡らせればそのまま左側の乳房に吸い付かれてしまう、小さく漏れだした甘い声を互いに気にせず夢中に吸いしゃぶる彼の肩や頭をつい撫でるチャイに惹かれてジモは顔を上げて彼女の鎖骨や肩にキスをする、火傷の痕が未だに残った肌を愛するジモの姿はあの時のままで胸がはち切れそうなほどに恋しく泣いてしまいたくなった。

「チャイ」

優しい声で名前を呼ばれるとチャイは眉を下げて彼を見つめる、泣いてしまいそうな彼女を見つめては「綺麗だ」と彼は呟いて火傷の上に唇を何度も置いて彼女が放つ甘い香りの虜のように肩も肘も手首も脇も鼻や唇などを押し付けた。

「くすぐったい」

彼の舌が左半身を撫でることに耐え切れずに呟いた彼女の言葉にそれでもやめられないジモは左の肩口に吸い付いた、火傷の赤黒い痕とは別の赤がそこを彩るときチャイは思わず静かにそれを見つめてしまう。
何を言えばいいのか、嫌な気持ちはなかったが嬉しいような気恥し様な様々な感情が芽生えてしまうと彼女は耐え切れずにジモを押し返して仰向けの彼の首筋に舌を這わせた。

「チャイ、くすぐったい」
「ダメ、私もつける」

シャツの袖口を捲りあげて同じ肩口に噛み付くように唇を置いて吸い付いたチャイは薄い赤を彼に残しては満足気にしたあと、黒い彼のシャツを捲っていき映る白い肌に夢中でキスをして、彼の胸元にキスをしようとすれば頭を押えられ静止されてしまい思わず視線だけを向ければジモはそれはダメだというがチャイは男の躯を知っていた。
特に彼のように鍛え上げた無駄な脂肪の少ない躯こそ愛でるべきであると知る彼女は彼の手を払いのけて女のように乳房を撫でて次第に固くなる先端に吸い付いた。

「あっっ」

彼の足が大きく動き逃げようとするのを許さずに上に乗り上げて彼の程よく色付く胸元に顔を埋めて執拗に撫でて吸えば足にあたる彼の熱は更に熱く硬くなることを感じて頬を緩める。

「チャイもういいから」
「気持ちいいからって逃げちゃダメ」
「でも、ジンジンするから⋯頼む⋯」

変になる。と執拗に責められるジモの泣きそうな声に思わず顔を上げて見つめれば彼はそのいつも生真面目な顔を赤く染めて弱々しく抵抗していた、その姿にますます彼女の心は揺さぶられ我慢など出来るかと言いたいものの恋人であるのだと言い聞かせる。

彼女にとって恋人とは家族のようか、またはそれとは別に大切にして愛情を与えるべき存在であるため彼女は自分の溢れ出る欲望を一度家の鍵をかけるように閉じてしまえば、簡単に落ち着きを取り戻し彼から身を離そうとするが手が伸びてチャイの後頭部を掴み抱き寄せた。

「これ以上は心臓が持ちそうにない、チャイに触れられるとどうしようもなくなる」

嬉しくて恥ずかしくて心地よくて。何もかもが真っ白に変わるのだというジモの素直さが眩かった、そしてその声を聞いた彼女はジモに顔を寄せて「私も同じなの」といった。
ジモの指先が躯を駆け巡る度に甘い火に焼かれたような気分になる、自分かどれだけ醜くて穢れている存在だといっても、彼は身体や言葉や表情など伝えられる全てで愛おしいと伝えてくるのだから気恥しさに逃げてしまいたくなる気持ちを理解して欲しいほどだろう。

それでもチャイは彼にもっとこの触れ合いを感じて欲しいと願い、彼の服を脱がせてズボンのバックルに手をかけて下ろさせては熱を持った硬いそれを右手の手のひらで包み込みジモに愛させて欲しいと強請るように顔を寄せた、断り切りたい彼は触れられる喜びと快楽を味わい彼女を受け入れればチャイは彼のズボンと下着を下ろし、現れたペニスに手を這わせた、先端から自然と溢れたカウパー液が指先を汚したことに子供のように楽しい気持ちになって、彼の顔を覗き込んでゆっくりとその身を下ろして、足の間に頭を落とした。

マグマのように熱い吐息に心地よい生ぬるさを感じる手口がジモを支配する、足の間の彼女の頭に手を添えれば柔らかい髪は指の中を通り過ぎることの寂しさを感じられた、まるで永遠に捕まらない蝶のようで、かつての彼女だ。
ぬるりと熱が触れてキャンディを舐める様に全体を象るかのように舌が這うだけで背中全体がゾクゾクとしてしまう、彼女の唇が甘く食んでかわいがれば躯が震えてシーツを彼が握ると同時にペニスを喉奥へと誘われた、狭くて熱くてヌルリとした粘着的な感覚に足がビクリと動く。

「はぁっ⋯」

重く熱の篭った吐息が溢れると彼女はゆっくりとストロークをして、根元を握る人差し指と中指と親指の三本をしなやかに上下させる。
まるで全身に微弱の電流が流れるような感覚に自然と逃げ出してしまおうとする彼の足に躯を乗せた彼女は苦悶の表情を浮かべる男を見て、その眼が自信を捉えれば彼の足の上で擬似セックスをするように挑発的に下着姿で彼の足の上で腰を揺らした。

「あっ、チャイ⋯はぁ、あっ」

性体験が豊富でないジモにとって挑発的で過激で相手を快楽の湖に落とすような彼女の行為に頭の中が支配される。
次第に彼が膝を立てて彼女の小さな頭に手を添えた、大きな掌が頭に触れた時、彼女は男が何をするのかを知っていた、しかしながらジモは彼女の頭を優しく撫でて溶けそうな声で彼女の名前を呼び、素直に気持ちがいいのだと告げた。髪を掴むわけでも頭を押え付けるわけでも腰を打ち付けてくる訳でもなく、優しく彼女の行為を受けいれたジモにチャイは目を細めて快楽を与えることに徹した。
しかしながら彼の手が彼女の肩を叩いて行為を静止させた為、彼女が願う結末には行かずに顔を上げて見下ろせば熟したように赤く染まるジモはベッドの上で捌かれる魚のようにぐったりとしている。

「これ以上されたら情けなくなる」
「気持ちいいなら別にいいのに」

気にしないとケロリとした表情でいう彼女にジモは口を尖らせては拗ねた表情で彼女を抱き寄せた、太い腕の中で彼の高い心拍数を聞けばそれだけ行為に夢中になっていたのだと感じて優越感に似た何かに満たされる。

「愛し合ってるなら二人で気持ちよくなりたいだろ」

互いに触れて与えて心を満たす為の行為だと告げる彼にチャイはこの行為が性を発散させる以外に意味を持つことを知らなかった。
愛しているから触れることは理解していても男に尽くして発散させるだけであると感じる彼女はあの日の夜にも感じた心地良さをずっとこの行為に感じられた、それは心が満ちる感覚だろう。

「だから今度は俺が」
「別にいいの、んっ⋯に、」

優しく微笑んだ彼に肩を押されて柔らかくベッドの上に仰向けに寝かされる、視界いっぱいに彼が広がる時チャイは目が離せなかった、同じ光景を見てきた時いつも天井を見てきたハズがジモからは目が離せなかった、彼から触れられることも与えられる言葉も全てがまるで御伽噺のように柔らかくて心地よくて陽だまりのようであるのだ。

恋人らしい小さなキスを重ねて彼の手がチャイの薄い腹を撫でて残された唯一のしだの下に手を伸ばし薄い茂みに手を這わせると彼女は受け入れるべく薄く足を開くことさえ彼の要望に合っているのかと不安になる、少しでもいいように思われたいが嫌われたくはないと願う彼女にとって正解が分からず恐れを抱いてしまうがジモは彼女に何も言わず指で足の中心部を撫でた。

恥ずかしくて消えたいと思うほど濡れていると分かっていた、彼に会う度に触れられたい抱かれたいと願うものの、本当はその傷だらけの躯を彼が触れてくれるのか不安でたまらなかったからこそ触れられる度に悦びが全身を駆け巡る。

「んっ」

指は何度か表面を撫でたあと濡れたことを確認して指をゆっくりと丁寧に沈める、眼前に広がる女の顔をしたチャイをみてはあの日の夜とは違うことを思い出す、あの日の夜は互いに慰めであったが今は愛し合っている、それだけで胸が溢れてしまいそうなジモは早々に繋がり合いたいと願いながらもそれは自分の中に許せぬ事だった。
絶対に自分本位であってはならない、この行為が人間の本能であり、欲求から紡がれた行為だとしても、それでも愛する人に自分の想いを伝えるための行為でもあると彼は考えた。

「あっ、ッう」
「ちゃんと慣らすから我慢してくれよ」
「うんっ、ぁ、我慢、してない」

気持ちがいい。と呟く彼女にジモは気恥しさに顔を背けてしまう、熱くて狭い肉壁が彼の指を締め付けて離さずその中に自分を埋めればどれだけの快楽や幸せが待ち受けているのかと考えてはゴクリと唾を飲む。
期待しきった彼自身が涎を垂らして欲する姿はまさに獣のようであり、己の本性を隠すように彼は彼女にキスをして心地よい場所を探っては指を増やし深めて快楽へと誘う。

「あっ、あっ、だめ、キちゃうっ」

ジモの肩に手を置いて足を広げた彼女の言葉により一層激しく指で悦んだ場所を撫で付ければ彼女の顔が身を寄せたジモの肩に顔を埋めて甘い声で鳴いては子犬のような声を上げて身を震わせた。
どろりと最奥から溢れた愛蜜と荒れた彼女の呼吸と紅潮した表情、全てがジモを刺激する材料で彼はゴクリと唾液を飲み込んで強く彼女を抱き締めた、愛おしさと壊してしまいたいという二極化する気持ちが現れるその感覚に戸惑いを感じる頃、チャイはジモとのセックスはやはり人生で味わってきたどんな行為よりも神聖かつ心地よく感じられてその背中に腕を回して彼の耳に顔を寄せ、繋がり合いたいと強請った。

短い触れるキスをしたジモは起き上がり床に落とした衣類を探す頃、チャイも起き上がり残った下着を下ろすがジモが未だ捜し物をしている姿を見て思わず彼女もベッドのそばに投げたデートに使用した鞄を手に取り探る。

「「チャイ/ジモくん」」

まるでコメディのように二人は熱く互いの名前を呼んで見つめた時、ジモもチャイも互いの手の中には正方形の以前の行為で探し求めていたモノを持っていた。
まるで前回の反省を生かすようにしたその存在に二人は照れ臭く笑った、お互いにこの行為を望んでいたことに間違いはないと思いつつもその恥ずかしさを隠すように互いの顔にキスを落とした、ゆっくりと彼女がベッドに沈むとジモは彼女の手の中から取り上げたものをベッドサイドの壁に埋め込まれた棚に置いたものの、ふとそこには二人が交際を始めた日に記念に撮られた写真が置かれていた。

「これ」
「うん、印刷してもらったの」
「俺も欲しい」
「いいよ、明日印刷しに行こう」

明日のデートが決まったと彼女が笑えばジモは愛し合いたいと強く願い封を切って用意のできた自分のモノにハメては彼女の足を掴んだ、互いの視線が混じり合えば彼は何も言わずに彼女のナカに沈めた。
狭くて熱くて溶けそうな熱が彼を包み込む、まるでパズルのピースのように二人が繋がりあっては静かに互いを見つめ合った、泣いてしまいそうなほど胸の疼きを感じるのはお互い様のようでチャイはジモに腕を伸ばして彼を抱き寄せた。

「大好き」

泣きそうな声でそういった彼女に顔を上げれば彼女は微笑んだ、美しくマリアのような慈愛に満ちた表情で語る彼女にジモは「愛してる」と告げては二人は初めて一つとなった。

深くつながり合い静かな部屋に肌がぶつかり吐息が盛れる声が小さく響く、ジモはチャイを右側に横向かせては左半身に何度も唇を落としては奥を穿つ、くすぐったく心地よくシーツをよく掴む彼女は甘い声で何度も彼を呼び泣いて悦んだ。

「ズーチャンッ、あぁっ、す、きッぃ」
「フーファイ.、おれもっ」

絶頂を求めるための行為ではなく互いを確かめる行為であると認識していた二人はただ身体を繋げ、互いの名を呼び愛を告げた、そこにいるのが正しく結ばれあったのだと二人だけの部屋で知らせるようにひとつとなる。
その行為の愛おしさと恋しさに胸が張り裂けてしまいそうだと感じる頃、彼女の目頭からは自然と涙がこぼれ落ちた、ジモの汗が垂れて彼女の頬に落ちた時、その雫が一つに交われば二人は笑った。

「チャイッそろそろ、イキそうだ」
「あっ、あっ⋯うん、っいい、よ」

彼女を護るように覆い被さったジモは更に強く腰を打ち付けた、圧迫感による苦しみや痛みなどありもせず、与えられる全てが海の上のように心地よく彼の背に手を置いて強く握れば彼の肉が指の腹にくい込んだ。
貪るような彼女から与えられた感覚にジモは小さく声を漏らして欲を吐き出すように腰をもう三度穿てば、薄いその壁越しに彼は欲望を吐き捨てた。
ビクビクと小さく痙攣する彼のものを感じるチャイはジモを抱き寄せて優しく頭を撫でた、本当はこんな薄い壁など欲しくなかったと思っていても何故か心は痛い程に心地よく彼女は瞼を閉じる時、涙が一筋流れた、愛されることとはこういうことなのだと思いながら、彼の背に手を回してゆっくりと目を閉じて。


◇◆◇

「壁の色、黄色と翠にしたいからペンキ買いに行こうかな」
「賃貸じゃないのか?」
「大家さん亡くなってから私がここの建物買い取ったから大丈夫だよ」
「それなら業者でも呼んだほうがいいんじゃないか」
「二人でしたいの」

ベッドの上で裸のまま転がる彼女を横目にジモは起き上がり水を飲んでいれば彼女は部屋を見渡した、部屋の中は質素でなんの色もなかったが足元と視線の先にはジモが彩った形跡が残されており彼女はそれを嬉しそうに眺めていた。

「二人でペンキを塗ろう、新しい私の門出だと思って」

いいでしょうと笑う彼女が甘えるように腰に抱きつけばジモは部屋を見渡しては、確かに屋根裏部屋にでも引っ越したばかりかと聞きたくなる質素で薄暗い重たい部屋を彼女と自分の手で変えていくのはいいと思えては振り返り彼女を取って食うように覆い被さり抱き締めてやった。
会うことなどは少なくとも、これは二人の新たな一歩だと彼は喜んで了承した、そしてそれなら今スグホームセンターに向かってペンキを買おうと告げれば彼女は起き上がり嬉しそうに服に手を伸ばすのを止めてはジモは彼女の小さな唇にキスをした。

「ついでに俺たちの新しい門出を祝いに行こう」
「⋯それなら、北京ダックでも食べる?」
「いいな、白酒の美味しい店がいい」
「それなら私知ってる」

そういって二人は床に落ちた靴下を履いては笑った、ずっと二人このまま進んでいけると感じて、在り来りで平凡な幸せを味わいながら花柄のやわらかなマットを足裏でしっかりと踏んだのだった。


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