それは決まった時間に起きる出来事だ。
風の音一つもしない静寂な城の中、広い天蓋のベッドだけが存在するその場所で、少女は一人横たわっていた。
外は眩い月明かり、城の外の海は眩いほどに輝いて、反射した夜空が海の上で躍るように波とともに微かに揺れている。

静かなその部屋の扉が開く時、現れるのは決まって一人、絹のような黄金色の髪をした一人の静謐な男、彼は決まって日付が変わってしまいそうな時間に現れると、ベッドの中に入り込み、彼女を組み敷いた。

湯汲みも終えて入念に準備されたような彼女はシルクのネグリジェのスカートの裾から手を入れられては、その細い足の間を撫でられる。首筋に顔を埋められ、熱い吐息が触れる。
彼は海の王・ポセイドン——誰もが彼を恐れ尊敬し、彼は群れず媚びずただ孤独というの名の完璧な王であり神として存在する。
一方彼に身体を暴かれる彼女はただの人であった。大人と呼ぶには少し満たされない肉体の彼女はその髪を乱して、太ももの裏をもたれては次に迫りくる熱に思わず身構えてしまう。

「固くなるな、いい加減に慣れろ」

そう言われても彼女はその質量を受け入れることが不慣れだった。
じっくりと手でほぐされた小さな場所に彼の大きな熱を受け止める時、内側から内蔵をえぐられる感覚は少しだけ夕飯を吐いてしまいそうになる。声にもならない女として快楽に喘ぐようなものではなく、ただ熱を受け入れるだけの苦しそうな声が漏れる。何も楽しくなどないはずの行為、好色にも見えない彼がぶつける熱の意味もわからず。
ただ彼女は静かに彼を受け止めてシーツを指先が白くなるまで握りしめるのを、長い前髪の隙間から鋭い瞳でみつめるポセイドンはその左手を掴み指を絡めて、右手を自分の広い背中に回してやった。

小さな体では彼を掴むこともできず、ただ喰らわれるかのような感覚だった、名前を呼び合うわけでもなく、愛していると言葉にするわけでもない。たた冷たい肌を重ね合い人肌に調整するかの行為。
数十分ほど繋がりあった後に彼の息が荒くなり、腰の動きが更に強くなると彼女は終わりへと続くのだと感じた、激しい行為に感じることは苦しみと痛みと、そして目の前にいる相手に対する疑問。

どうして人間であるはずの自分がこのような方に抱かれているのだろうか。
どうしてこんな人間を彼は情熱的に悲しそうに冷たく抱くのだろうか。
どうして外の海はこんなにも綺麗なのに淋しいのだろうか。

「...マリスッ」
「あ...っん」

重たい熱が腹の奥に注がれる、内側から塗り込まれるような、書き換えるようなそんな熱。彼女は疲れ切って瞼をゆっくりと下げる時、彼は静かに髪を撫でる。いつだってそうだ、何も言わず夜にだけ現れ、そして身体を蝕むように求めて、そして愛するように触れる。
理由などわからない、それでも彼女は泡になって溶けるように眠る、暗い深淵の中に堕ちていくように。黄金色のその深い海に包まれるように。
 

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