博士と一人のレディ
レジーナがいなくなってから数ヶ月が経過した。
彼女のことについてニコラ・テスラに聞く者は誰もいなかった。
テスラは以前にも増して研究棟の共同研究室から帰ることが減り、自分の研究に没頭していた。
あまりの働きぶりに、いくら死後となる今でも倒れることはあるし、そのうち魂が消耗されきって魂の完全消失が起きてしまうのではないかと心配されるほどだったが、彼に強く声を掛けられ者はいない。
テスラが詰め込んで働くようになった日。
っまりレディ・レジーナが怪我をした翌日から彼女は現れなかった。
彼女の様子を気にかけてテスラに聞いたが、テスラはただ一言「リセットした」と言葉にした。
それが何を意味するのか彼らはテスラの気持ちを以前から理解していた為、誰も深くは言及しなかった。
もちろん、あの聞き慣れた声もなければ、優しい紅茶の香りもしない。ふわりと揺れるスカートも、流れる髪の動きも、何もかも全てあったはずの物がなくなった。
そのことに対して誰も違和感を持たないはずもないが、第一共同研究室の一番奥で一人で作業をしているテスラが「レディそこのスパナを」「レディここのチェックを」と呟いてはいない存在に向けて悲しそうな顔をするのだから、ますます周囲は胸が痛んだ。
彼のケツを叩いて前向きに生きろという者がいればよかったのかもしれないが、誰もがみなテスラがどれほどの傷を抱えているのか理解しており。さらにレディという存在に対しての思いが数ヶ月経過しても消えるわけがないことを知っていた。
研究室から廊下に出たエジソンはドリンクサーバーからコーヒーを淹れているテスラをみて近付いた。
生前から整った顔をした男であり。エジソンは真反対の性格や思考をしているところももちろんだが、この美貌を持ってしても不器用なテスラのことが憎たらしく思う時があった。
少しだけ窶れたのかとエジソンは改めて見て思いつつ、それ以上に目の下に深い隈を作っている色男にため息を零して噛みタバコを捨てるとコーヒーを淹れる為にテスラの傍によった。
「おいテスラ、少しは寝たらどうなんだ、目の下の隈も凄いし顔色も相当だぞ」
「平気だ、今は少し立て込んでるだけだから、それが落ち着けば休むさ」
「そういって休んでないやつが何言ってるんだ。今度のパーティはお前がウチの代表なんだ。社交の場は好かないといえど、一応はちゃんとしてもらわなきゃ困るんだよ」
「分かってる。天界の権力のある神や人相手にすることくらい理解しているさ」
じゃあちゃんと休めとエジソンが告げるとテスラは分かってる。としか答えなかったが、その大きな手はとても弱々しく、その身体はエジソンよりも大きいはずが小さく見えた。
エジソンはどうしようもないこの男に思わずどうしたものかと頭を掻いてみても答えは出てこない。エジソンも同じ気持ちはよく理解できたから。
「なぁエジソン、君は蓄音機を作ったとき、何を思っていた」
「それはお前に向けた答えを言うほうがいいのか?」
「茶化さないでくれ。君があれを作り上げた理由はもちろんひとつでは無いことくらい分かってる。だが君も私も人々や未来のために歩んできたんだ。君はあれを作った数年後何を思った?」
一八七七年、トーマス・エジソンは蓄音機を発明した。
それはどこまでも鮮明に声を記録するもので、今後の人類に向けて作り上げたそれは教育の場ではもちろん。大切な人の声や思い出を残すためという目的があった。
エジソンはテスラの言葉を聞いては思わずコーヒーを飲んで深く考えたあと。自分の生前の人生を思い返しては、一人の女性を思い浮かべた。
それは最初の妻であるメアリーについてだった。
結婚後、十数年後に亡くなった。
原因は疲労や心労であり。エジソンはあの時の悲しみを深く覚えていた。周囲や後世での語りでは二人目の妻についてのことは仲睦まじく書かれていたが、メアリーとの関係は冷たく悲しいものに見せられるようだったが、エジソンはそんなことはなかった。
初めて出会った時のことは今でもよく覚えている上に、彼女を亡くした日から随分と悲しみに暮れていた事を忘れることは無い。
蓄音機に残っている彼女の声を何度も夜中に流しては静かに涙を流し。愛していた情熱を思い出したのだ。
「抱き締めたいと、キスがしたいと思ったものさ、声や写真なんかじゃ足りない。だけどそこにちゃんとあるだけで幸せだった。そして同じようにその気持ちを人々に届けたいともな」
「そうか……そうだな。君は本当にいつだって人々に望まれるものを届ける男だ。素晴らしいよ」
「素直に褒められるのは悪い気はしない……レジーナに会いたいなら会えばいいだろ」
テスラがレディを恋しがっていることは嫌という程理解していた為、それなら尚のことと思うのに、テスラは出来なかった。実際にエジソンは簡単に言っているように見えて、それは残酷な言葉でもあると理解していた。
テスラはあの日から自分の研究室のドアを開けてはいない。
そしてそのドアの奥に眠っている一体のアンドロイドをみることもない。
テスラはあの日から一人たりとも助手を雇うことはなかった。
レディが完成する前には何人かいたものの、それらもレディが出来てからは静かに彼のもとを去り。レディが消えたあとは誰もそばに置くことはなかった。
太陽のような男だが笑顔が減ってしまう。その反面皮肉のようにテスラは作業に没頭するゆえに以前に増して作業効率が上がり、彼の思考は常に自分の発明と研究にのめり込む次第だった。
いつかそのうち倒れる──実際にテスラは何度か共同研究室で倒れているのを発見されており。栄養が足りていないと怒られてはパートナーとゲンドゥルが度々世話を焼いてくれるようになったほど。
テスラは自分では平気だと言い続けるが、どれだけ身体が健康に見えても魂の消耗を抑えることは出来ないのだ。
「もう彼女はいない。私がレジーナを殺したようなものさ」
ずっとそうするべきだと言っていたはずのテスラだったが、彼は罪人が処刑の日を待つような表情のまま、また作業のために研究室に戻ったのだった。
天界の空は神々の管理ではなく。
あくまでも全て自然に任せられていた。
あまりにも酷い場合などには神の関与がもちろん行われるが地上界とは違う為、全ては天の思うがままで晴天が多いヴァルハラにおいて、珍しく雷雨の激しい日であった。
ゼウスがヘラと喧嘩でもしたのだろうかと揶揄うように話をしつつも、今日も研究棟の第一共同研究室には天才たちが集まっていた。
テスラは相変わらずの様子であるため、周囲の者たちは気にせずにしていたものの、激しい雨が窓を叩く音が強く互いの声も時折聞こえにくくなるほどだった。
「こんなに酷い天気なんていつぶりですかねぇ」
「ここまで酷いのは数十年ぶりじゃないか?本当にゼウスが何かをしたのかもしれないな」
ノーベルとニュートンが外を見ていると雷が激しく光った。
まるでゼウスの雷霆だと軽い話をしつつも、部屋の中は今日もテスラのコイルがバチバチと火花を散らして飛び交っているため、外も中も変わらないかと彼らは言いながら新しい発明品の話をした。
激しい落雷が何度か音を立てるうちに、今日ばかりは停電が起きるのではないかと各自心配しつつも予備バッテリーのチェックや、研究棟に寝泊まりしていない連中は早めに帰るか、今日ばかりは研究棟に泊まるかと話をして各自対応していた頃。
一層大きな落雷の音が聞こえて一同は思わず窓の外を見ると、近くの木に雷が落ちたようで消し炭になっているのをみて、彼らはこのパワーをなにかに使えるのではないのかと楽しそうに話を初めてテスラも呼び出されては話に華を咲かせていた。
それから直ぐにまた大きな落雷がいくつか続いたと思えば煙が上がったのが見えて、また木でも燃えたのか?と思うが彼らはその位置をみてはテスラの自宅近くではないのか?といった。
ガリレオが望遠鏡を持ってきて確認するやいなや「テスラ、お主の家だ!」と声をあげるため、テスラは瞬時に顔色を変えては外に飛び出した。
雷雨はテスラの家に落ちたのを最後に完全に止んだようで、テスラは手ぶらのまま慌てて家に帰るとドアを開けて、研究室のドアを開けた。
家からは帯電したような香りがしており。研究室の中は一見変わりないようにみえるが、ちょうど天窓の下に位置していた診察台は雷の光を受けたようになっており。テスラは駆け寄るとそこに眠る彼女をみつめた。
どうやら何かしらでレディに雷が落ちてしまったのだと気付いたのは天窓が割れてしまい。奇跡的に彼女にはガラスが付着していなかったが独特の焼かれたような炭っぽい香りや、無かったはずの煤汚れのようなものがあったからである。
テスラは慌ててレディの身体を確認しようと手に触れてチェックしていった。冷静に考えて機械として内部の電気系統の破損があるのだろうと思うはずが、テスラはレディを普通の人間のように肌に異常がないかを含めて確認し、そして無意識に胸に耳を寄せた時。
そこには絶対にありえない音があった。
人間と同じ小さな心臓のような鼓動。
何事かとテスラは驚くのも束の間。
「────ハァッ!!」
当然心肺蘇生をした人のように息を吐き出したレディにテスラが思わず身を離して驚いたが、診察台の上で上体を起こしたレディは何度も荒い呼吸を繰り返しており。テスラはもしや先程の雷が彼女を再起動させたのかと気付くや否や彼女の傍によった。
「レディ……?」
「テスラ様……私は……」
「もしや覚えてるのか?リセットをしたはずなのに。いやそんな事はいい、内部の電気系統のエラーはなにか出てないか?先程雷が君に落ちた衝撃で起動されたようなんだが」
テスラは起動してまだ数分も経過していない中で矢継ぎ早に彼女に問いかけるがレディは戸惑いを隠せぬような顔をして自分の手足を見つめた。
診察台の彼女はゆっくりと降りようと横に向いて地面に足を下ろしたが、左足の怪我の後遺症のためか、右側へと大きく身体を崩してしまい。テスラは慌てて彼女を支えた時。
それは以前にも増して、さらに不思議なように"人"だと感じられた。瞳の色はさらに輝きを宿し。柔らかな肉体が女性的で、テスラはそれを意識してしまうと直ぐに自分に嫌悪してしまい。早急に冷静に対応させてもらうために検査しようといって次々と機材を持ってきてはテスラは彼女の身体にいつも通りに付けていく。
「あの……テスラ様……」
「もう少し待ってくれ、直ぐに確認するから」
「ええっと……その……」
「君もエラーが出てバグによるパニックのようなものが起きているのだろう。問題ない、すぐ対処するよ」
あの…その…とレディがいう間にもテスラは慌てて作業を進めようとして、彼女の手首にバイタルチェックのパッチをつけてモニターを確認しつつ、手を休めることなく作業を進める時。
ぐぅ〜…と聞きなれない音が研究室に響いた。
それはよく腹が空いてしまった時に鳴ってしまうような胃の音だったが、テスラは自分か?と思うものの空腹感はないぞ。と感じつつレディのエラー音かと彼女を見ると真っ赤な顔で俯いていた。
「レディ?」
「テスラ様これは……そのですね……」
なにか言い訳のような言葉を並べる前にもう一度、今度はハッキリレディのお腹から音を立てたことにテスラは彼女の薄い腹と顔を見比べた。
「エラー音か?」
「ちっ違うんです!なんていうかお腹に違和感……いえ、正確にはお腹が空いてて……」
「お腹が空く?電力不足か?やはりエラーか!」
「違うくてその……」
兎に角検査してみてください。とレディが観念したように告げるとテスラは慌てて取り掛かること数十分後。
「みんな大変だ!!レディが!!私のレジーナが!!」
テスラの自宅に雷が落ちたとして慌てて飛び出した姿を見送っていた第一共同研究室のメンバーはあれから音沙汰のないテスラに不安を抱いていたものの、戻ってきた同時に彼女のことについて大慌てで現れた彼にやはりなにかあったのだろうと懸念していたことを想像しつつ蹴破るように入ってきたテスラの腕には丁寧にお姫様抱っこされたレディ・レジーナが真っ赤な顔でテスラの腕の中にいた。
「起動したのか?」
エジソンの第一声に全員が雷の影響かと思ったもののテスラは慌てて部屋の真ん中にレディを連れて来ると片腕でレディを抱いては持ってきたらしいタブレットを机の上に放り投げた。
どうやら見てくれというわけだが、そこにはいくつもの見慣れた数値や記号やらが並んでいたが、彼らはそれらをみたあとテスラを見た。
「なによこれ、普通の人の健康診断の結果みたいだけど」
「そうだ、人間と全く同じ数値や成分だが、先程出たばかりのレディの検査結果だ!」
───は?
思わず全員が声を揃えてレディを見たがテスラも信じられないと言う様子だったが、二枚目にはCTやMRIの画像もついており。そこには彼らも知っているはずのレディの内部に存在するはずの基盤はなく。普通の人と同じ臓器が存在した。
それでも以前のことを知る彼らは一様に信じられず疑いの目を向けてしまうが、テスラは「本当だ……その、リセットボタンが無くなっていたんだ」と真っ赤な顔で呟くことに、レディも真っ赤な顔を手で覆い隠してしまうことに、二人は嘘はないのだと理解するがそれでも何故?と思っていた頃。
ちょうど第一共同研究室の入口から声が聞こえて振り向くとそこには一人の男神がいた。
それはゼウスの息子であり、ゼウスの使いとなる伝令使ヘルメスであり。彼はレディをみると、どこかいつもとは違う笑みを見て足を進めてやってきた。
「皆様こんばんは、興味深いことが起きてることを察してまいりました」
「ヘルメス……やはり君は何か知っていたのか?レディが人になったことについて、やはり君たち神々の誰かによる奇跡なのだろう?」
テスラはレディを抱いたままヘルメスに問いかけると、彼はにこやかに笑みを浮かべては「No.Non.Nait.でございます」とテスラの真似をして微笑んだまま、少し演者ぶって人差し指をテスラに立てて二人を見つめた。
「奇跡を起こしたのはあなたですよテスラ様。あなたは彼女を最初から"人"として作った。極上の"レディ"として」
どうしてピュグマリオーンのガラテアに心が宿ったのかわかるか?と聞かれたテスラは女神アフロディーテが哀れんで魂をやったからだと答えるが、それは正解であるが少し異なるのだという。
「ピュグマリオーンが彼女を愛していたからです。愛が無ければそこに命は宿らない。いつだっていうでしょう?愛が世界を救うのだと」
「そんな非論理的な答えなど」
「現実問題それが起きてるじゃありませんか、ねぇレジーナさん?あなたもテスラ様の愛から生まれたと認識しているのでしょう」
「おやめ下さいヘルメス様、そんなに恐れ多いこと……あぁもうテスラ様も下ろしてくださいませ。私なんだかとっても恥ずかしいんです」
あなたに抱かれていると胸が以前よりずっと痛いし、あなたは熱くてたまらないという姿はすっかり愛を知った乙女であり。テスラまで真っ赤になって椅子に下ろしてやるが周囲は思わずその微笑ましさに小さく笑った。
「さてレジーナ様、あなたは正式に"人"になられました。ここにサインをくださりますか?」
「これは……」
「ヴァルハラでの居住許可書です。機械であれば不要ですが人間になった今は貴方もひとつの魂。つまり魂の管理が必要な存在です。もちろん、機械だというのなら別ですがね」
差し出されたペンと紙を読んだレディは戸惑いを見せた。
自分が本物の人間になったと理解はしているが、それが正しいのかはわからなかった。人になりたいと願っていたがそれはテスラの望んだことでは無いのではないかと。
リセットが出来ない今はいっそ魂を戻してもらいヴァルハラでの生活を辞めるか、あくまでも人ではないアンドロイドとしての生きるべきかと悩んでは手を止めてしまうものの、彼女の背後から伸びた手が彼女の名前を描き慣れたようにサインした。
揺れる鳩の羽のついた羽根ペンにコイルのような指輪がついたその右手。
それは何度も見てきたテスラの手であり。レディは顔をあげるとテスラはヘルメスにそれを返した。
「これでいいだろうか?」
「はい、しかしよろしいのですか?レジーナ様はあなたが創った"最高傑作"だと」
もう彼女はあなたの機械ではなくなる。とヘルメスが告げるとテスラは優しく座っている彼女の肩に手を置いて、その場にいる全員に言うようにハッキリと口に出した。
「もちろん、レジーナは私の最高のパートナーであり。私の最高の助手だからな。機械なんかじゃない。私の大切な"人"さ」
「……テスラ、様」
「それならよかった。また後日色々と必要なものをお届け致しますのでよろしくお願いします。それでは」
そういって去っていったヘルメスを見届けるや否やレディがもう一度彼の名前を呼ぶ前に、エジソンがテスラの肩を掴み、周囲は一層テスラとレディを冷やかして持て成してやった。
二人こそがこのヴァルハラで一番のパートナーと言っていいと笑って、そのままみんなで出前を頼んで第一共同研究室にて過ごした。
「まさか食べ方や歯磨きも分からなかったとは」
「お恥ずかしい限りで」
「いや嬉しいよ。君にもまだ分からないことがあるということに」
自宅に帰ってきたテスラはレディの髪の毛をソファの上で乾かしてやりながら嬉しそうに話をしていた。
夕飯としてピザを食べていたがレディは初めての食事にそれは愉快な反応を示して、みんなは大いに楽しませてもらい。帰宅後に風呂を終えて歯磨きとなったが、レディは以前の口腔ケア薬品とは違う歯ブラシで磨くという初めての行為に戸惑っていたのをテスラは微笑ましくしていた。
全ての感覚がまた新しく感じるレディは何故か瞼が落ちるのを感じた。
以前までは決して感じることの無いものだったが船を漕いでしまう彼女をみてテスラはドライヤーを止めると自分の胸に抱き寄せてやり、その手を優しく握った。
「眠たいんだねレジーナ、君が眠気と戦う姿も愛らしいよ」
「恥ずかしいですわテスラ様、私以前はもっとハッキリしてたのに」
「半分機械だったからだ。どちらの君も魅力的だ」
「あなたも随分と言葉の熱が強くなってますし。私なんだか恥ずかしくてたまらないんです、ドキドキもするし、離れたいような離れたくないような。エラーがずっと出てるのでしょうか」
産まれたてのようなものである彼女にとってまた新しい感情が次々と湧いてくることに戸惑っていることをテスラは愛おしそうに眺めて、その髪に顔をうずめた。
「人とはずっとそういうエラーを繰り返して生きてるものだ。そしてそれを咀嚼して考えて、結果を出して間違えては進んでいく。これからそうして君も私もこの地で生きていこう。互いの魂が消えるその時まで」
「ええ、そうですねテスラ様……いいえ、ニコラ様」
「いい呼び方だレジーナ、私の愛しいガラテア……いいや、私の素晴らしい機械人形─ヒト─」
さぁ今日はもう寝よう。といってテスラは彼女を抱き上げるとレジーナは歩けるのにと思いつつも、テスラは暫くはその重みを感じたいのかもしれないと思い何も言わなかった。
ヴァルハラの夜空は眩い空が輝いている。
テスラは心を満たしながら同じベッドに入ったレジーナの額に優しくキスをした。
「おやすみレジーナ、また明日君が何者であったとしても私は君を心から愛するよ」
「おやすみなさいませニコラ様、また明日私が無の機械に変わっていても。私はあなたを愛する気持ちは変わりませんわ」
おやすみ、おやすみ、良い夢を。
そういって二人は互いを包むように抱きしめて、ベッドの中で足を絡めて眠りについた。
たとえこの先、二人が互いに何者になったとしても、その想いだけはもう消えないと理解していたから。絡めた互いの指先はまるで一つであるかのように朝まで固く結ばれていたのだった。
─END─
2026.4/29〜7/12
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