Memo
2018/05/30 14:36
伏見臣と都合のいい女
(少し臣くんが酷い人)
そいつはいつも笑顔で優しくて誰にでも平等的でそんな人を好きになるのは当たり前のことで、構内でも有名な彼の名前はよく聞いた
「大丈夫か?
「えーっとなに」
「大丈夫かって、聞こえてるか?」
「無理、頭痛いし気持ち悪い」
写真部の彼と美術部のヌーディストである私が出会ったのはそんな2つの部の飲み会で伏見臣なんて聞いたら女の子は二つ返事で飛びついた
私は伏見臣なんて黄色い声をあげる前に部長に強制連行でその日は散々飲まされた、頭が痛く嘔吐しそうな私に水を差し出して連れて帰ると言い出したはその男だ
「送り狼だ」
「嫌だったか?」
「…別に、伏見って彼女いないの?」
「えっ?まぁ今は」
今はってなんだよ、好きな気持ちが少しだけあった
顔もかっこよくて身長もあるしガタイもいい、顔についた傷は昔やんちゃしてたらしくてそれの名残なのも女ウケがいい、いざってときは男らしくその背中で守られて
結局伏見臣という男を好きな1人の私はその日限りではない身体の関係を作ってしまった
たまに部の飲み会に参加して、終わってセックスして帰る、ご飯を食べてセックスが基本
そこには愛も何も無い、手馴れたような伏見との行為は愛を感じなかったことだけが心地よかった、キスもされないし優しくもされない、互いの欲望のまま
「タバコ切れたから買ってくるわ」
「おう、行ってらっしゃい」
「飯食いたいからなんか作っといてよ」
「わかったから上着羽織っていけよ」
お母さんみたいとか言われるけど私の前ではあいつは男でどうしようもないやつで、私と誰かを重ねては時々悲しい顔をする
私はいい女のフリをして大学でも女の顔をせずに知り合い程度、じゃなきゃ自分が崩れる気がした
「ちょっいらないってこれ!」
「いいじゃん、ほらどうせ使うし」
深夜のコンビニ特有の大声のカップルをみて、私はこうはなれない
静かに寄り添うことも大きく笑い合うことも、無性に虚しさを感じながらタバコを2箱買って帰り道を歩きながらタバコを吸う
結局やつはどうしたいんだと思いながらも夜空を見たら星は見えない
「うん、わかったなら明日荷物取りに行くから夜遅くにごめんな…うん、じゃあお爺さんとお婆さんによろしく、あぁ愛してる小雪」
ドアを開けて聞こえた声、ワンルームの部屋は狭いから仕方ない
あぁわかった名前が同じだったんだと、そして彼は実ったんだ恋が愛が
「ただいま」
「おかえり」
「おめでと」
「あぁありがとう」
次の日から伏見臣は私のところに来なくなった、時々私とは違う黒い髪の白い肌のかわいい女の子とよく歩いていた
これでいい、私は彼氏を作った名前は臣って人、結局私たちは同じ穴のムジナとやらだった。
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