空条承太郎
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彼女のスタンド能力は変わっていた
スタンドの形は一見何にも変わらない小さな宝石、指先の上に小さく乗るそれは何万円以上になることか
彼女はそれを生み出す能力だった、攻撃もスピードもない、形や大きさや色を変えるそれは間違いなく本物でそれは通常のスタンドの見えない人間にさえ見える
・・だが彼女に欲望はなかった、正確に言えば富を求めるほどの欲望はなかった
「これをあげるから、承太郎のすべてをちょうだい」
彼女は厄介な存在で
小さな頃からの能力者だった、感情ごとに宝石は色を変えて形を変えて彼女の涙のように現れたらしい
それに目をつけた両親はそれで大儲け、そして最後には夫婦共々その美しき宝石に身を滅ぼし、朽ち果てた。
目の前でそんな汚い世界を見た幼い彼女は金になる、宝石という存在は人間さえ動かせる存在に思えてしまった
けれど、そんな考えも持ち合わせなかった、ただ苦しみ悲しむ人やボランティアなどにそれらのものを渡した
「すまない…私には娘も妻もいるよ」
すまない…そういって肩ほどの黒い髪を娘と同じようにするように撫でた
彼女の手のひらに置かれた普通では見ないほどの大きな宝石たち
黄色や緑や赤色に青色、紫のものに透き通るほどの透明…様々な石が彼女の両手から溢れんばかりにあった
彼女は自分を守ってくれた存在だった、だからこそ今自分も昔した旅の仲間も全員生きている
だからこそ、この一族は死者を最低限に抑えてきたはずだった
「あなたの望むものなら何だって渡せる」
初めて知った愛さえ、すべて美しと醜さを兼ね備えた石で解決させようとしてしまう愚かさ
確かに彼女はディオを知っていた、だからこそ、同じような考えがあったのかもしれない、そのただの紙切れや石が自分も、他人さえも救えるということを
いつか彼女は涙からあふれる宝石にきっと殺される
痛々しいほどのリアルな音は床に散らばった、たった10年離れていただけで彼女は変わった
なぜこんなに変わったか彼自身はわからずとも
彼女にはわかる、そういう能力が染み付いていたから。
まるでそのスタンドは心臓のようなものだった
愛してると答えてもきっと答えは違う、正解はこの宝石を受け取ることだった
「私は君の幸せだけを見れればよかった」
昔のように優しく笑いながら仲間達と眩しい太陽の下で目を細め、他愛もない話に大きな声で笑い、時に本当につまらないことで口喧嘩をしたり
そして、自分と別の普通の人間を愛して、この一族も、こんな変わった世界も捨ててその人だけを愛して平凡で平和な何も無い日常に微笑んで欲しい
1人の女性として難しいことだとしても
「あなた以外いらない…だから、おねがい」
ポロポロと瞳からこぼれるそれさえ光り輝くダイヤモンドで承太郎は彼女に合わせて少しだけしゃがんだ
同じ目線になれば彼女の黒い瞳から零れる宝石をひとつ取った
「俺も君を愛していた」
それは別の意味合いになるかもしれない、だが確かに彼女を愛していた
まるで兄妹のように、家族のように、恋人のように、何にもなれない2人だった
関係を崩したくないというわけではなかった、愛する妻と娘を持った以上、その人たち以外を愛することは出来ないといえば正しいのだろう
愛というのは難しいもので何が本当の愛かはわからない
目から溢れるその宝石のせいで傷ついたのは何度だろう、苦しんだのは?
考えれば考えるほど彼女のそばにいるのは自分ではない気がした。
「私も…好きだった」
ようやくあげた彼女の悲鳴混じりの言葉は震えていた
彼女は穏やかに微笑んでいた、それ以上何も言えなくなり、そっと彼女の頬に口付けた
床に溢れかえるほどの宝石たちは光に照らされ輝き2人の足元を輝かせた。
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