安定というのはいい意味だと思いたいが、この男を前にすればあまりいい意味には感じない、金回りの話はこの際置いておいてあなた指名手配されてなかった?と聞きたいほどに身勝手に動くこの男は目の前にリムジンに乗って颯爽と現れた彼は真っ赤な薔薇の花束を片手に

「HappyValentine」

「お帰りくださいませ」

「こらこら恥ずかしがるなよ」

この男は意外と暇なのか?と疑いたくなるほど丁度デパートに職場用のチョコレートを買いに行こうとしたなまえがアパートの階段をおりてすぐのことだった
結局リムジンの中に押し込まれてあれよそれという間に着替えさせられて身支度を整えさせられる、赤いパンプスを履かせながら彼は上機嫌に鼻歌を歌うものだから呆れてものも言えなくなってしまう

「どこ行くの」

「バレンタインは恋人の日だろう、折角なんだからデートしよう」

「私に拒否権がないのに」

「まさか彼氏からのお誘いが嫌ってのか」

「先に言ってたらもっと準備したって話」

素っ気ない彼女の態度にも慣れきったフロイドは嬉しそうに微笑んで隣に座っては用意されていたチョコレートを摘んだ、外の景色はピンクや赤にハートで埋め尽くされており数日前の節分なんて元からなかったような扱い方だと実感する
フロイドに連れられるまま夜まで過ごしてしまい、結局着せられたワンピースで良かったと思うほどのレストランに連れてこられてなまえはため息を零しつつステーキにナイフを通す

「なぁなまえからのバレンタインは無いのか」

「私の機会を奪ったのフロイドでしょ」

「俺以外に渡すなんてとてつもない陰謀だからな」

「だからフロイドのはないの」

会社の人に渡すものも買えないのに彼氏に渡すものなどある訳もなくなまえは自分の給与じゃ滅多に来れない肉を食べきって次の料理を待ち続ける、コース料理もラストにさしかかりデザートがやってくる安定したと言えばいいのかデザートプレートには丁寧にラブメッセージが書かれており目の前の男は嬉しそうに微笑む

「…私お返し出来ないよ」

「いいんだよ、お前の顔が見れるだけで幸せだからでもまぁ…どうしてもって言うなら今晩ここの上で待ってる」

テーブルの上に置かれたルームカードに睨みつけても彼は楽しそうに笑ってジェラートを口の中に放り込んで行ってしまう、なまえは慌てて食べきってフロイドの背中を追いかけるように高いヒールで走った、バレンタインはまだ終わる気配がない。

フロイド


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