防衛省所属の女性はあまり多くはない、というよりこの職業についてる女性が本来少ないのだがそれでも楽しく仲良くしているものでバレンタインは全員がそれぞれお菓子を作ってやってきた
これに興じて自身も渡せるだろうと思い作ってきた訳だがどうにも目当ての人物は朝から見かけられなかった、聞いたところ大事な会議に参加しているとの事で帰ってくるのは遅いんじゃないかと言われた

「そんなぁ…クリスマスも誘えなかったしお正月は実家に行くって言ってたからもうこんな日しかないのに」

そもそも彼は甘いもの好きだったかも知らない中で用意した手作りの生チョコ達の出番は無いのかと残念ながら思いつつ仕事をこなしていく、他の職員からチョコレートを貰ったり渡したりする中でも本命のそれは未だ動くことは無い

「お疲れ様でした」

溜息をつきながら結局渡せず終いの紙袋の中の小さな箱を片手に職場から出て行く、タイミングが悪くまるで神様のいたずらだとさえ思えてしまい自分で食べるしか無くなったチョコレートを考え歩いていた際だった

「あれなまえさんお疲れ様」

「おっ、大船さんどうされたんですか」

「ん?あぁ少し警視庁に行ってて今終わったから荷物もあるしとって帰ろうかなって」

「戻られるんですね、良かったらあのこれバレンタインなので貰ってください」

なんとも押し付けがましいと自分の中で苦笑した、あまりにも恥ずかしく彼を見上げることは出来なかったが黙ったまま返事のない彼にやはり押し付けがましい女は無理だと察して手を引こうとした時だった

「あ、いや…その、職場のみんなに渡してるやつだろ、有難うその凄く嬉しかったからつい」

「大船さんのは専用です、ほかの人と違う特別なものを用意してます」

真っ赤な顔で少し顔を逸らした彼に胸が高鳴る、自意識過剰でもいいきっとこれはいい答えに期待できそうだと少しでも思えばあとはアタックするだけと思えた、手の中から紙袋を取られて中の箱を見られた

「これ手紙って」

「あー!それは家で読んでください」

「返事は必要なんだよな」

「…そこは大船さんに任せます」

「…そっか、いい返事になると思うから来月待っていてくれるか?」

真っ直ぐとした彼の言葉に小さく頷いた、先程までの勢いなんて急になくなってしまいなまえをみて大船は小さく微笑んだあと「じゃあ荷物取りに行くから、今日もお疲れ様でした」と挨拶をしていってしまう返事も出来ずに少しだけ立ち止まったあとなまえは振り返れば紙袋の中身を見て嬉しそうに笑う彼の背中が見えた

「大船さんお疲れ様でした!」

ようやく落ち着いて彼に挨拶をすれば遠くで手が振られる、来月のことなんて頭に入っても来ずにただ受け取った彼の笑顔だけを鮮明に思い出すのだった。


大船


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